[文書名] 中華人民共和国華国鋒総理の日本国訪問に関する共同新聞発表
1.華国鋒中華人民共和国国務院総理は,国賓として1980年5月27日から6月1日までの予定で日本国を公式訪問中である。華総理には,谷牧副総理,黄華外交部長他が随行している。華総理一行は,日本国滞在中名古屋及び関西方面を訪問する。
2.華総理は,5月27日に皇居において天皇陛下に謁見した。
3.華総理は,5月27日と28日の両日,大平正芳総理大臣と会談し,日中両国が共通の関心を有する広範な問題につき極めて友好的な雰囲気の下に率直かつ建設的な意見交換を行った。
会談には,中国側から谷牧副総理,黄華外交部長他,日本側から大来佐武郎外務大臣,伊東正義官房長官他が同席した。
両国首脳は,昨年12月に行われた大平総理大臣の中国訪問及び今回の華総理の日本国訪問が21世紀に向けての日中友好協力関係の新たな基礎を築く上で深い意義を有するものであることを満足の意をもって認め,かつ,高くこれを評価した。
4.両国首脳は,国際情勢,なかんずく昨年12月以来のアジア太平洋地域及び中東地域の情勢につき率直かつ真剣な意見交換を行った。両国首脳は,これらの地域において新たな紛争と緊張が生じ世界の平和と安定が脅かされていることに深い憂慮を表明し,これらの地域において生じている問題が,国連憲章及びそれぞれの関連の国連決議に従って速やかに解決されるべきであることに意見の一致をみた。
両国首脳は,日中両国がそれぞれの立場からこれらの地域及び世界の平和と安定の維持・確保のため引き続き努力することを確認した。
5.両国首脳は,日中関係全般に関し意見交換を行い,1972年秋の国交正常化以来,両国間の平和友好関係が,日中平和友好条約の締結,両国首脳の相互訪問等を通じて順調に発展し,強化されてきたことに対し,改めて満足の意を表した。両国首脳は,日中両国が,体制の相違はあっても,今後益々交流を増進させ,相互理解と相互信頼を深めることにより,両国間の永続的な平和友好関係をゆるぎないものとして発展,深化させていくべきであることを確認した。
6.華総理は,大平総理大臣に対し,中国が現在進めている社会主義現代化建設の方針及び進展状況を説明し,中国は,経済建設を促進するため自力更生の基礎に立って,平等互恵及び有無相通ずるという原則に基づき日本その他の諸国との経済協力を強めたい旨の希望を改めて表明した。
大平総理大臣は,上記の中国側の方針を歓迎する旨述べるとともに,日本としても従来の方針を踏まえつつ引き続き中国に対し積極的に経済協力を行っていく旨確認した。
7.両国首脳は,国際通貨基金及び国際復興開発銀行における中国政府の代表権が回復されたことに満足の意をもって留意し,これは,中国のみならず国際経済秩序の発展に好ましい影響を及ぼすものであることにつき意見の一致をみた。
8.両国首脳は,両国間の貿易等の経済交流を平等及び互恵の原則の基礎の上に引き続き拡大していくことの重要性を確認するとともに,特に現下の厳しい資源・エネルギー情勢にかんがみ,石油及び石炭の共同開発を含めこの分野における両国間の協力関係が両国間の当事者の合意に従って長期的かつ安定的に行われることが望ましいことにつき意見の一致をみた。また,両国首脳は,渤海における石油の探鉱・開発に関し日中当事者間で契約締結の運びとなったこと,中国のその他の地域についてもかかる協力が具体化しつつあることを高く評価した。
9.両国首脳は,日中両国間の経済協力の現状について意見交換し,また,1979年度分の円借款の供与に関する書簡の交換が去る4月に行われたことに満足の意を表した。両国首脳は,また,1980年度分の円借款について両国政府の実務者間の会議を今秋開催し,具体的協議を行うことを確認した。
10.大平総理大臣は,北京市近代病院建設計画に関し,日本国政府が無償援助によりこの計画に協力していく旨を明らかにし,このため,1980年度において本件病院建設詳細計画を開始する意図がある旨,また,本件病院の要員養成についても技術協力を行う用意がある旨述べた。
華総理は,日本側のこの積極的協力の姿勢に深く感謝する旨述べた。
11.両国首脳は,華総理の日本国滞在中に,日中科学技術協力協定が署名されたことに満足の意を表し,同協定の下で科学技術の分野における協力を一層促進する意図を表明した。両国首脳は,渡り鳥保護条約を締結するための交渉をできるだけ早い時期に開始することに合意した。
12.両国首脳は,2000年の長い歴史と伝統を有する両国間の文化交流が,昨年12月の日中文化交流協定の締結を新たな契機として一層幅広く円滑に進められていることに満足の意を表し,特に,両国間の留学生の交流が順調に進展し,中国における日本語学習を促進する計画が本年夏実施の運びとなったことを高く評価した。なお,日中文化交流協定に基づく政府間協議が本年7月開催されることになった。
13.両国首脳は,両国間の人的交流が広範かつ円滑に進められていることを高く評価し,今後ともそれぞれの側において訪問者の受け入れ態勢を充実していくことが望ましい旨意見の一致をみた。この点に関して大平総理大臣は,日本国内において日中間の交流促進のための総合的施設を東京に建設する動きがあることに言及した。両国首脳は,また,今後,両国の青年が相互に往来するための道を拓くことが特に重要であることを確認した。
14.両国首脳は,日中2国間問題を中心に幅広く話し合うため,日本国の閣僚と中国の国務院構成員のレベルの会議を今後必要に応じて両国の首都において交互に開催することが望ましいことについて意見の一致をみた。この会議の第1回会合は,今秋北京において開かれることになった。
15.中国側は,華総理一行の滞在中に示された日本側の心からの歓迎と暖かいもてなしに対し深い感謝の意を表明した。