データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第1回日中閣僚会議共同新聞発表

[場所] 北京
[年月日] 1980年12月5日
[出典] 外交青書25号,459−461頁.
[備考] 
[全文]

1.日本国閣僚と中国の国務院構成員レベル会議(「日中閣僚会議」という)第1回会議は,1980年12月3日から5日まで,北京において開催された。

  会議には,日本側から,伊藤正義外務大臣,渡辺美智雄大蔵大臣,亀岡高夫農林水産大臣,田中六助通商産業大臣,塩川正十郎運輸大臣,河本敏夫経済企画庁長官及び吉田健三駐中国大使他が出席した。

  中国側からは,副総理兼国家基本建設委員会主任谷牧,副総理兼国家計画委員会主任姚依林,副総理兼外交部長黄華,対外貿易部長李強,石炭工業部長兼国家エネルギー委員会副主任高揚文,鉄道部長郭維城,財政部長王丙乾,国家計画委員会副主任顧明,国家経済委員会副主任馬儀,国家農業委員会副主任杜潤生,国家基本建設委員会副主任兼外国投資管理委員会副主任謝北一,交通部副部長陶●{王に奇}及び駐日本大使符浩他が出席した。副総理兼国家エネルギー委員会主任余秋里は,日本側関係閣僚と会見した。

2.日本側閣僚は,12月4日,●{トウ}小平中国共産党副主席及び趙紫陽国務院総理に表敬した。日本側は,鈴木総理大臣よりの趙紫陽総理に対する訪日招請の意を伝達した。また,趙紫陽総理は,鈴木総理大臣に対する中国政府の訪中招請を表明した。

3.会議は,次の事項を議題として討議を行った。

 (1) 国際情勢及び日中関係についての全般的評価

 (2) 双方の経済・財政政策

 (3) 両国間の協力と交流問題

4.双方は,国際情勢なかんずくカンボディア問題を始めとするアジア地域の情勢につき率直かつ真剣な意見交換を行い,日中両国がそれぞれの立場からアジア及び世界の平和と安定の維持・確保のため引き続き努力することを確認した。

5.双方は,1972年の国交正常化以来,両国間の平和友好関係が日中平和友好条約の締結を経て,益々着実に進展しつつあり,このような日中友好の高まりの中で第1回日中閣僚会議が開催されるに至ったことに満足の意を表明した。双方は,日中両国の社会制度の相違はあっても,益々交流を増進させ,相互理解と相互信頼を絶えず深めることにより,両国間の永続的な平和友好協力関係をゆるぎないものとして発展,深化させていくべきであることを確認した。

6.双方は,両国の経済情勢に関し意見交換を行った。

  日本側は,戦後の日本経済発展の過程,最近の経済情勢と政策運営,財政政策,中期経済計画等につき説明した。

  中国側は,当面の経済情勢と国民経済調整期間の方針,政策及び今後の発展の重点等につき説明した。

7.双方は,両国間の貿易がこれまで順調に発展して来たことに満足の意を表明するとともに,今後とも平等及び互恵の原則の基礎の上に引き続きこれを拡大していくことの重要性を確認した。

  双方は,石油・石炭の開発等のエネルギーの分野での両国間の協力が進展していることを歓迎した。日本側は,エネルギーの長期安定的な対日供給を中国側に要請し,中国側は,石油と石炭の開発に目下鋭意努力している実際の状況を説明するとともに,できる限りの努力を払う旨表明した。

8.双方は,両国間のこれまでの経済協力が全般的な両国関係の増進に寄与したことを高く評価した。双方は,1980年度分の560億円までの円借款の供与に関する書簡の交換がこの第1回日中閣僚会議で行われたこと,及び「中日友好病院」建設計画が順調に進展していることに満足の意を表明した。

  双方は,更に,これまでの鉄道・港湾等社会基盤施設の分野のほか,保健医療・企業管理・水力発電等にわたる各種技術協力の成果を確認し,かかる協力関係が今後とも引き続き発展することを希望した。これに関連し,日本側は,農業が中国の経済建設において重要な役割を与えられていることを確認し,新たに農業の分野において中国東北地区三江平原開発計画に対する技術協力を行う用意がある旨表明した。

  中国側は,この分野における日本側の積極的な態度を高く評価した。

9.双方は,日中間の経済関係及び人的交流を円滑に発展させる上で租税条約及び投資の相互保証及び促進に関する協定を締結することが有意義であると認め,そのための交渉を早期に開始すべきことに意見の一致をみた。

10.双方は,日中間の海運関係が着実に発展しつつあることに満足の意を表明するとともに,日中間貨物定期航路の開設を促進するため今後引き続き努力することに合意した。

11.双方は,日中間の文化交流が近年幅広い分野において着実かつ活発に進められていることを高く評価するとともに,日中両国国民各層間の友好と相互理解の一層の増進をはかるべく,この分野における交流及び協力を充実させていくことに意見の一致をみた。

12.日本側は,中国に今なお滞在する多くの日本人孤児の肉親さがし,一時帰国の実現のためにこれまで中国側の示した協力に謝意を表明するとともに,今後の一層の配慮を要請した。これに対し,中国側は理解を示し,今後とも協力する旨表明した。

13.双方は,次回の日中閣僚会議を日本で開催し,その時期については今後外交経路を通じて決定することに合意した。

  日本側は,第1回日中閣僚会議開催に際し示された中国側の配慮に謝意を表明した。