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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第2回日中閣僚会議共同新聞発表

[場所] 東京
[年月日] 1981年12月16日
[出典] 外交青書26号,504−506頁.
[備考] 
[全文]

1.日本国閣僚と中国の国務院構成員レベル会議 (「日中閣僚会議」という)第2回会議は,1981年12月15日及び16日東京において開催された。

会議には,日本側からは,櫻内義雄外務大臣,渡辺美智雄大蔵大臣,田沢吉郎農林水産大臣,安倍晋太郎通商産業大臣,小坂徳三郎運輸大臣,河本敏夫経済企画庁長官及び鹿取泰衛駐中国大使他が出席した。

中国側からは,谷牧副総理兼国家外国投資管理委員会主任,黄華副総理兼外交部長,袁宝華国家経済委員会主任,韓光国家基本建設委員会主任,鄭拓彬対外貿易部長,林乎加農業部長,壬丙乾財政部長,段雲国家計画委員会副主任,甘子玉国家輸出入管理委員会副主任及び符浩駐日大使他が出席した。

2.中国側代表団は,12月15日,鈴木善幸総理大臣に表敬した。

3.会議は,次の事項を議題として討議を行った。

(一)国際情勢及び日中関係についての全般的評価

(二)双方の経済・財政政策

(三)両国間の協力と交流問題

4.双方は,アジア情勢及び南北問題を中心として,国際情勢に関する率直かつ真剣な意見交換を行い,多くの問題について認識の一致をみた。双方は,また,この一年の間に重要な国際問題に対処するに当たり両国が国際場裡で行ってきた協議と協力を評価するとともに,今後も引き続き日中両国がそれぞれの立場からアジア及び世界の平和と安定の維持・発展のために努力することを確認した。

5.双方は,1972年の国交正常化以来,両国間の平和友好関係が日中平和友好条約の締結を経て着実に進展していることに満足の意を表明した。双方は,今後とも相互理解・相互信頼に基づき両国の永続的な平和友好協力関係をゆるぎないものとして発展させていくべきであることを確認し,明年両国の国交正常化十週年を迎えるに当たり6月に趙紫陽総理が訪日し,秋に鈴木善幸総理大臣が訪中することは,日中友好関係を増進する上で極めて大きな意義を有するものであことを確認した。

6.双方は,両国の経済情勢に関し意見交換を行った。

日本側は,最近の経済情勢と政策運営,財政政策等につき説明した。

中国側は,当面の経済情勢と今後の経済建設に関する十項目の方針及び経済発展の展望につき説明し,中国の実情から出発して国民経済を調整し,かつ発展させる決意である旨述べた。

7.双方は,両国間の貿易がこれまで順調に発展してきたことに満足の意を表明するとともに,今後とも平等及び互恵の原則の基礎の上に引き続きこれを拡大していくことの重要性を確認した。

双方は,現在両国間で進められている石油・石炭等のエネルギー分野における長期安定的な貿易及びこの分野での開発協力を引き続き推進させることにつき意見の一致をみた。

8.双方は,両国間のこれまでの経済協力が,両国関係の増進に寄与したことを高く評価した。

双方は,この第二回日中閣僚会議において,プラント問題に関する資金協力問題が双方に納得のいく形で最終的に解決をみ,その関連で商品借款の供与に関する書簡の交換が行われたことに満足の意を表明した。

双方は,更に「日中友好病院」に関し設計計画及び医師等医療要員の要請が順調に進展し,12月2日に起工式が行われたことに満足の意を表明した。双方は、農業振興,鉄道・港湾等の社会基盤施設,保健医療,企業管理,工業近代化,水力発電,非鉄金属資源開発等にわたる各種技術協力が引き続き順調に実施されていることを評価し,この関連で中国側は中国東北地区三江平原農業開発計画についての本格調査が開始されたことを評価した。双方は,鉄道・港湾等の運輸関係協力を円滑に実施するために必要に応じ話し合うことにつき意見の一致をみた。9.双方は,日中間の経済関係及び人的交流の発展のため,第1回日中閣僚会議において交渉開始につき意見の一致をみた租税条約及び投資保護協定についての協議が順調に進展していることに満足の意を表明するとともに,これら条約又は協定ができるだけ早期に締結されることが望ましいことにつき意見の一致をみた。10.双方は,日中間の海運関係が着実に発展しつつあることに満足の意を表明するとともに,日中間貨物定期行路の開設を促進するため今後引き続き努力することにつき意見の一致をみた。

11.双方は,日中間の文化交流が近年幅広い分野において着実かつ活発に進められていることを高く評価するとともに,日中両国国民の間の友好と相互理解の一層の増進を図るべく,この分野における交流及び協力を充実させていくことにつき意見の一致をみた。

双方は,日中間の文化交流を促進し,かつ,在日中国人留学生等に対し便宜を供与するため,明年の国交正常化十周年を機に「日中会館」(仮称)の建設の準備を開始する動きが日本国内にあることにつき,関心を表明した。また,双方は,本問題につき引き続き意見の交換を行うことを確認した。

12.日本側は,中国側の協力により,本年47名の日本人孤児の一時帰国が実現し,うち半数以上の身元が判明したことに対して,謝意を表明するとともに,引き続き,孤児問題についての中国側の協力を要請した。これに対し,中国側は,今後とも協力する旨表明した。

14.双方は,次回の日中閣僚会議を北京で開催し,その時機については今後外交経路を通じて決定することにつき意見の一致をみた。

中国側は,第2回日中閣僚会議開催に際し示された日本側の配慮に謝意を表明した。