[文書名] 中華人民共和国趙紫陽総理の日本国公式訪問に際しての共同新聞発表
1.趙紫陽中華人民共和国国務院総理は,1982年5月31日から6月5日までの予定で日本国を公式訪問中である。趙総理には,黄華国務委員兼外交部長及び張勁夫国務委員兼国家経済委員会主任他が随行している。趙総理一行は,日本国滞在中東京の他,関西地方を訪問する。
2.趙総理は,6月1日に皇居において天皇陛下に謁見した。
3.趙総理は,5月31日と6月1日の両日,鈴木善幸総理大臣と会談し,日中両国が共通の関心を有する広範な問題につき極めて友好的な雰囲気の下に率直かつ建設的な意見交換を行った。
会談には,中国側から黄華外交部長,張勁夫国家経済委員会主任他,日本側から櫻内義雄外務大臣,宮澤喜一官房長官他が同席した。
両国首脳は,日中国交正常化10周年に当たり趙総理の日本国訪問が実現したこと及び鈴木総理大臣の中国訪問が今秋に予定されていることは,これまでの10年間の日中関係進展の輝かしい成果を評価し新たな10年に向けての日中友好協力関係を一層強化・発展させる上で意義深いものであることに意見の一致をみた。
4.両国首脳は,今日の国際情勢及びその中における両国の役割につき,真剣な意見交換を行い,アジア情勢全般,カンボディア問題,アフガニスタン問題,対米・対ソ関係,ヴェルサイユ・サミット,南北問題等につき双方の見解を説明した。
両国首脳は,日中両国がそれぞれの立場から出発し,他の平和愛好諸国とともにアジア及び世界の平和と安定の維持のため引き続き努力することを確認した。5.両国首脳は,日中関係が1972年の国交正常化以来日中共同声明と日中平和友好条約に盛られた原則と精神に基づいて,政治,経済,文化等あらゆる分野で着実に発展し,日中関係の悠久の歴史の中でいまだかつてないほど広くかつ清い交流が行われるに至って いることに満足の意を表明した。
国交正常化10周年というこの特筆すべき時に当たり,両国首脳は,日中友好関係をこれまでに育て上げてきた先人の献身的努力に思いを致し,その基礎の上に将来永きにわたり善き隣邦として日中友好を一層開花させることが日中両国民に課せられた厳粛な責務であることを確認した。
6.趙総理は,鈴木総理大臣に対し,中国の「四つの現代化」実現のための方針と政策について説明し,今後とも経済建設に当たっては対外開放政策を維持し,日本及びその他の国々との経済面での協力関係を強化していく旨表明した。
これに対し鈴木総理大臣は,日本としても中国の現在行っている近代化政策を歓迎し,中国の経済建設に対し,引き続き協力を行っていく旨述べた。
さらに両国首脳は,日中両国が平和友好の精神の下,互恵平等及び長期安定の基礎に基づく経済面での確固たる協力関係を築き上げることの必要性と可能性につき,真剣な討議を行った。
7.両国首脳は,日中両国間のこれまでの経済協力が双方関係者の努力と協力により各分野において順調な進展を示しつつあることに満足の意を表明するとともに,今後とも協力の円滑な実施のため,両国政府間で協議を行うことにつき意見の一致をみた。
8.両国首脳は,両国の経済交流が互恵・平等の原則に則り貿易,資源開発,投資等広範な分野において順調に発展し,今や年間貿易額も国交正常化当時の10倍近くに拡大していること,また,石油及び石炭の開発における協力関係が着実な進展をみせていることに満足の意を表明するとともに,資源開発の分野における日中間の協力を長期的視野に立って推進していくことが,極めて有意義であるとの点で,意見の一致をみた。
9.両国首脳は,投資保護協定及び租税条約を早期に締結するために,両国政府間の交渉を今後とも促進していくことにつき意見の一致をみた。
10.両国首脳は,日中間の文化交流,人的交流が着実に進展していることに満足の意を表明するとともに,特に国交正常化10周年に当たる本年,両国において各種の文化的記念行事が行われることは,両国国民の相互理解を深める上で非常に有意義であることを確認した。
双方は,日中間の文化交流を促進し,かつ,在日中国人留学生等に対し便宜を供与するため,本年の国交正常化10周年を機に「日中会館」(仮称)の建設の準備を開始する動きが日本国内にあることにつき,引き続き関心を表明した。また,双方は,本問題につき引き続き意見の交換を行うことを確認した。
11.中国側は,趙総理一行の滞在中に示された日本側の心からの歓迎と温かいもてなしに対し深い感謝の意を表明した。趙総理は,中国政府が鈴木総理大臣の今秋の訪中を熱烈に歓迎し,期待している旨表明した。