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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 中曾根内閣総理大臣の中国訪問関連文書,日中青年交流センター定礎式における中曾根内閣総理大臣スピーチ

[場所] 北京
[年月日] 1986年11月8日
[出典] 外交青書31号,373−374頁.
[備考] 
[全文]

胡耀邦総書記閣下,

御在席の友人の皆様,青年諸君,

本日,日中青年交流センターの定礎式にお招きいただき,ここに胡耀邦総書記閣下をはじめ中国指導者の皆様,並びに中国の青年男女の皆様を前に御挨拶をする機会を得ましたことは,私にとって大きな喜びであります。

思えば2年前の春,私が貴国を訪問し,胡総書記閣下と日中友好協力関係についてお話し合いした際,私たちは期せずして,日中両国及び日中関係の将来は、利用国の青年の肩にかかっているとの認識で一致いたしました。その席で,私が,両国の青年が共に学び,共に語らい,共に遊ぶことができるように交流の場をつくってはいかがかと申し上げましたところ,胡総書記閣下は,直ちに強く賛意を表されました。これが,日中青年交流センターの出発点であります。この構想は,同じく私の訪中時に発足を見ました日中友好21世紀委員会の討議を経て,1984年秋に具体的の提言を得,本日ここに定礎の式を迎えるにいたりました。誠に感激に堪えません。

御在席の皆様,

青年! 青年は人類進歩の原動力です。

青年は旧弊を打ち破り,社会を改革してきました。歴史をひもとけば,青年が一国の運命を変えたことすら稀ではありません。

我が国の明治維新は,多数の若者が,我が身を顧みず守旧派と戦い,我が国を封鎖国家から近代国家へと脱皮させた壮絶なドラマでした。貴国においても,列強の範から祖国を解放し,偉大な統合を成就した中国革命のため,一身を擲った青年たちは数知れません。

朋友們 我也是青年!

私もまた,「青年の心」をもって,日中友好関係の促進と国際社会の平和と繁栄の維持という意義ある事業の成功のため,全力を傾ける決意であります。

御在席の皆様,

日中の青年交流は,一昨年の中国側御招待による3,000名の我が国青年の訪中,昨年の500名の中国青年の訪日招待により,量的にも質的にも大きな飛躍を遂げてまいりました。私は,この勢いを止めることなく,一層促進すべきであるとの観点から,従来の交流に加え,当面今後5年間をめどに,新たに毎年100名の中国青年を我が国にお招きする「日中青年の友情計画」を発足させたいと思っております。相手の国を自らの目で見,自らの足で歩いた若者達は,必ずや21世紀の日中友好推進の中核として活躍してくれるにちがいありません。

青年! それこそが我々の未来への希望であります。

御静聴有難うございました。