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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日中友好二十一世紀委員会第五回会合開会式における竹下内閣総理大臣の挨拶

[場所] 
[年月日] 1988年11月18日
[出典] 竹下内閣総理大臣演説集,234−236頁.
[備考] 
[全文]

 張香山座長,石川忠雄座長はじめ両国委員,専門委員の皆様

 楊振亜大使閣下

 並びにご在席の皆様

 本日ここに,日中友好二十一世紀委員会第五回会合の開会式が挙行されるに当たり,私は,日本政府と国民を代表して,心からのご挨拶を申し上げたいと存じます。この会合のため来日された中国側委員の方々に歓迎の意を表するとともに,受け入れの準備をされた日本側委員及び関係者に対し敬意を表します。

 私は,これまでにも皆様の中の何人かの方々にお目にかかりましたが,両国の委員と専門委員の方々全員とお会いするのは初めてのことであり,誠に嬉しく存じます。

 ご在席の皆様

 私は総理就任以来,出来るだけ早い機会に中国を訪問し,中国の指導者の方々と胸襟を開いて話し合いたいと考えていましたが,本年八月末にその念願を果たすことができました。私は,趙紫陽総書記,●{トウ/登におおざと}小平主席,楊尚昆国家主席,李鵬総理,呉学謙副総理と相次いで会談し,相互理解と相互信頼を深め,貴国官民の温かいご配慮を得て大きな成果を挙げることができました。この訪中を通じて私は,何としても現在の日中間の平和と友好を護りぬき,アジアと世界のために貢献しなければならない,との決意を新たにしたのであります。

 この一年の日中関係を振り返ってみますと,政府としても種々努力して参りましたが,民間においても様々な記念行事が広く両国の各地で開催されました。このような機会を通じて,私達は,日中二千年の友好の歴史に思いを馳せ,不幸な出来事を二度と繰り返さないためにも,現在の良好な日中関係を二十一世紀に向けて大きく前進させ,さらにそれを永続させるべくそれぞれの立場で最大限の努力をしなければならないとの確信を深めたと申せましょう。このように本年は日中平和友好条約締結十周年に相応しい実質的内容と豊富な成果を挙げ,日中関係史に輝かしい一ページを加えることが出来ました。そして,本年の日中関係の重要な諸行事の掉尾を飾るのが,本日ここで開会されたこの日中友好二十一世紀委員会であります。

 ご在席の皆様

 日中友好二十一世紀委員会は,日中関係を二十一世紀に向けて友好的かつ長期安定的に発展させたいとの両国国民共通の願望の実現を目指して,両国首脳の合意に基づいて設立されたものであります。その任務は,日中共同声明,日中平和友好条約,日中関係四原則に則り,体制の相違を乗り越えて両国関係を長期に亘り安定的に発展させるための方策を探り,これを両国政府に提言するところになると承知しています。

 この五年来,双方の委員,専門委員及び関係者は,課せられた任務の遂行に努力され,両国間の諸問題について突っ込んだ討議を行い,有益な提言をされる等,日中双方の期待に応えて着実に成果を収めてこられました。

 皆様はこれから場所を日光に移して,清澄な雰囲気の中で充分に議論を尽されるとお聞きしています。そこでのご討議が双方にとって満足のいく成果を収め,かつ,日中両国関係の新たなる飛躍にとって大きく寄与するものであることを心から期待する次第であります。

 皆様とは日光から戻られた後,再びお目にかかることになっていますが,その際今回の会合の成果をお聞きすることを今から心待ちにしていることを申し上げて,私の挨拶と致します。