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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 天皇皇后両陛下の中国ご訪問に際しての宮澤内閣総理大臣の談話

[場所] 
[年月日] 1992年8月25日
[出典] 宮沢内閣総理大臣演説集,59頁.
[備考] 
[全文]

 このたび,天皇皇后両陛下におかれましては,中国を公式にご訪問になることとなりました。

 両陛下には,既に,昨平成三年秋,タイ,マレイシア及びインドネシア三国をご訪問になり,これら各国との間で大きな親善の実をあげられました。今回の中国ご訪問も,日中両国の国民間の友好親善にとり極めて意義深いものとなることを確信いたします。国民各位と共にご祝福申し上げたいと思います。

 このたびの両陛下のご訪問は,中国政府からの度重なる丁重な招請を受けたものであります。国交正常化二十周年という日中両国間の友好関係を象徴する重要な節目に両陛下のご訪間が実現の運びにいたりますことは,友好親善というご訪問の目的に誠にふさわしいものと存じます。中国政府も,日本国の象徴としての天皇陛下のお立場についての十分な理解の上に立って,国を挙げて両陛下をご歓迎申し上げたいとの意向であり,ご訪問の成功のため万全の準備を整えることを確約しております。政府としても,ご訪問の実があがるようあらゆる努力を払う決意であります。

 申すまでもなく日中両国は長きにわたる交流の歴史を積み重ねてきた極めて親密な隣国同士でありますが,両陛下の中国ご訪問は今回が歴史上初めてのことであります。この歴史的なご訪問は,中国の国民に対して新憲法下での我が国の皇室のお姿を直接に印象付けるまたとない機会となるでありましょう。これによって,両国民の心の交流がさらに深められ,これまで培われてきた両国民間の友好関係がさらに将来に向かって一層強化発展する契機となることを心から期待いたします。

 両陛下には,ご日程をつつがなくお過ごしの上ご帰国になりますよう,心からお祈り申し上げます。