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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 天皇皇后両陛下歓迎宴における楊尚昆国家主席のあいさつ

[場所] 
[年月日] 1992年10月23日
[出典] 日中関係基本資料集、792−793頁.
[備考] 
[全文]

 尊敬する日本国天皇皇后両陛下

 友人の皆様

 同志の皆様

 中日両国は一衣帯水の隣国であり、両国国民は二千年以上の友好往来の歴史を有しております。中日国交正常化二十周年に際し、日本国天皇皇后両陛下が我が国に対し初の公式訪問を行うことは、中日関係史における大きな出来事であります。私は中国政府と中国国民を代表し、また私個人の名において、両陛下の御来訪を熱烈に歓迎します。

 中華民族と日本民族はいずれも偉大な民族であります。勤勉かつ英知に富んだ両国国民は長い友好往来の中で互いに学びあい、助け合い、深い友情を結び付け、人類のオリエント文明に貴重な貢献をしてきました。

 遺憾なことに、近代の歴史において、中日関係に不幸な一時期があったため、中国国民は大きな災難を蒙りました。前のことを忘れず、後の戒めとし、歴史の教訓を銘記することは両国国民の根本的利益に合致することであります。中日双方の共通の努力によって、我々両国が二十年前に国交正常化を実現し、その後、また中日平和友好条約を締結し、善隣友好協力の広々とした見通しを切り開きました。

 中日国交正常化二十年来、我々両国の各分野にわたる交流と協力はいずれも長足の発展を遂げ、両国国民間の友情はたえず深められ、中日友好の基盤は一層強固なものとなりました。天皇皇后両陛下のこの度の御訪問は、両国国民の相互理解と伝統的な友情を一層増進し、両国の善隣友好協力関係を新たな深まりと広がりに向けて推し進めることになるでありましょう。当面の国際情勢の下で、独立自主の平和外交政策を実行する中国と引き続き平和的発展の道を歩む日本が長期安定の善隣協力関係を維持することは中日両国国民に有利であり、アジア太平洋地域ひいては世界の平和、安定と発展にも寄与するものであります。

 中国国民は日本国民との伝統的な友情を非常に大切にしております。我々両国が中日共同声明と中日平和友好条約の定めた諸原則を遵守し、たえず努力しさえすれば、両国国民が世々代々にまで友好的につきあっていく願望は必ずや実現できるに違いありません。

 つい最近、大きな歴史的意義をもつ中国共産党第十四会大会が成功裡に閉幕しました。大会の精神に励まされて、中国国民は改革開放の歩みを速め、経済発展に全力を尽くしており、中国の大地は生気と活気に満ち溢れております。両陛下は御訪問先において、改革開放と近代化建設によって中国にもたらされた変化を御覧になれますし、日本国民に対する中国国民の友情をも感じ取られることでありましょう。私は、両陛下のこの度の歴史的御訪問は必ずや円満裏に御成功を収められるものと深く信じております。

 それでは、乾杯を提案いたします。

 中日両国国民の世々代々にわたる友好のために、

 天皇皇后両陛下の御健康のために、

 日本国の御繁栄と御発展、国民の御多幸のために、

 日本国の友人の皆様及び同志の皆様の御健康のために、

 乾杯。