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政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 税関に係る事項における相互支援及び協力に関する日本国政府と中華人民共和国政府との間の協定(中国との税関相互支援協力協定,日中税関相互支援協定)

[場所] 
[年月日] 2006年4月2日
[出典] 外務省,財務省関税局
[備考] 
[全文] 

税関に係る事項における相互支援及び協力に関する日本国政府と中華人民共和国政府との間の協定

 (略称)中国との税関相互支援協力協定

平成 十八年四月二日 北京で署名

平成 十八年四月二日 効力発生

平成 十八年四月十四日 告示

           (外務省告示第二三一号)


税関に係る事項における相互支援及び協力に関する日本国政府と中華人民共和国政府との間の協定


 日本国政府及び中華人民共和国政府(以下「両締約国政府」という。)は、

 関税法令に対する違反は、それぞれの国の経済、財政、社会、文化及び商業上の利益を害するものであることを考慮し、

 関税、手数料その他の税の正確な査定及び徴収を確保することの重要性を考慮し、

 それぞれの国の関税法令の運用及び執行に関する事項における国際協力の必要性を認識し、

 特定の物品に関する禁止、制限及び規制のための特別な措置を内容とする国際条約であって、両締約国政府が加入しているものに留意し、

 税関当局間の協力は、関税法令違反に対する行動を一層効果的なものとし得ることを確信し、

 次のとおり協定した。


第一条 定義

 この協定の適用上、

 (a)「関税法令」とは、物品の輸入、輸出、移動又は蔵置に関する法令であってその実施及び執行についての責任が特に税関当局に課されるもの並びに税関当局がその法令上の権限に基づいて定める規則をいう。

 (b)「税関当局」とは、日本国にあっては財務省、中華人民共和国にあっては海関総署をいう。

 (c)「情報」とは、データ、文書、報告その他の連絡をいう。

 (d) 「関税法令違反」とは、関税法令の違反及びその未遂をいい、商業取引における不正、環境若しくは健康に害を与える物品若しくは物質、麻薬、武器、弾薬、歴史的、文化的若しくは考古学的価値のある骨董品又は絶滅のおそれのある動植物の密輸及び知的財産権の侵害を含む。

 (e)「者」とは、自然人、法人又は法人格を有しないその他の団体であって、物品の輸入、輸出又は通過を行うものをいう。

 (f)「要請当局」とは、支援を要請する税関当局をいう。

 (g)「被要請当局」とは、支援を要請された税関当局をいう。

 (h)「関税領域」とは、それぞれの締約国の関税法令が施行されている領域をいう。


第二条 この協定の適用範囲

1 両締約国政府は、関税法令の適正な適用を確保し、並びに関税法令違反を防止し、調査し、及び処置するため、この協定の規定に従って、税関当局を通じて相互に支援する。

2 両締約国政府は、それぞれの税関手続の簡素化及び調和のため、税関当局を通じて協力して努力する。

3 この協定は、両締約国政府により、それぞれの国において効力を有する法令に従って、かつ、両税関当局の共通の権限及びそれぞれの税関当局の利用可能な資源の範囲内で実施される。

4 この協定は、両締約国政府間の相互支援のみを意図するものである。この協定の規定は、いかなる私人に対しても、情報を入手し、抑止し、若しくは排除する権利又はこの協定に基づき要講された支援の実施を妨げる権利を付与するものではない。


第三条 情報の伝達

1 両税関当局は、要請に応じ又は自己の発意により、関税法令の適正な適用を確保し、並びに関税法令違反を防止し、調査し、及び処置するために必要と認める情報(次に掲げる情報を含む。)を相互に提供する。

 (a) 関税、手数料その他の税の正確な査定及び徴収に資すると考えられる情報

 (b) 輸入及び輸出に関し行われ、又は計画された関税法令違反に関する情報

 (c) 一方の締約国政府により摘発された事件に係る密輸物品の入手源、関税法令違反の新たな適用事例及び密輸方法に関する情報であって他方の締約国政府に関係するもの

2 いずれの一方の締約国政府の税関当局も、自己の発意により又は要請に応じ、他方の締約国政府の税関当局に対し、当該他方の締約国政府の税関当局の属する国の関税領域において関税法令違反となるおそれがある活動に関して有する情報を提供する。

3 いずれの一方の締約国政府の税関当局も、その有する情報が他方の締約国政府の税関当局の属する国の経済、公衆衛生、公共の安全その他の重要な利益に実質的な損害を与え得る深刻な関税法令違反に関連する可能性があると考える場合には、当該一方の締約国政府の税関当局は、自らの発意によって、当該他方の締約国政府の税関当局に当該情報を提供する。


第四条 要請に基づく支援

1 被要請当局は、要請当局の要請に応じ、関税法令の適正な適用の確保を可能にし得る情報(関税法令違反に該当し、又は関税法令違反に該当し得る活動として発見され、又は計画されたものに関する情報を含む。)を提供する。特に、各税関当局は、要請に応じ、他方の税関当局の属する国の関税領域において関税法令違反となるおそれのある活動に関して有する情報(例えば、不正確な税関申告、原産地証明書及び仕入書又は不正確若しくは虚偽であると知られ、若しくは疑われているその他の情報)を相互に提供する。

2 被要請当局は、要請に応じ、要請当局に対して次の情報を提供する。

 (a)当該要請当局の属する国の関税領域に輸入された物品が、当該被要請当局の属する国の関税領域から適法に輸出されたか否かに関する情報

 (b)当該要請当局の属する国の関税領域から輸出された物品が、当該被要請当局の属する国の関税領域に適法に輸入されたか否かに関する情報

3 2の規定に従って提供される情報には、要請に応じて、物品の通関の際に用いられた税関手続が含まれる。

4 税関当局は、要請に応じ、物品の輸送及び船積みに関する情報であって、当該物品の価額、処分及び仕向地を示すものを提供する。

5 要請当局による別段の通告がある場合を除くほか、被要請当局は、1から4までの規定に従って行われる要請に対し、いかなる形態の電算化された情報も提供することができる。

6 1から5までの規定に従って提供された情報を解釈し、又は利用するためのすべての関連情報は、同時に提供される。


第五条 特別な監視

被要請当局は、両税関当局の共通の権限及びその利用可能な資源の範囲内で、要請に応じ、次のものについて情報提供及び特別な監視を行う。

 (a) 要請当局の属する国の関税領域において関税法令違反を犯したことについて当該要請当局により知られ、又は疑われている者(特に当該被要請当局の属する国の関税領域を出入りする者)

 (b) 要講当局の属する国の関税領域に向けて輸送される規制物品である疑いがあると当該要請当局により通知された輸送中又は蔵置中の物品

 (c) 要請当局の属する国の関税領域において関税法令違反の行為のために使用されたことにつき当該要請当局により疑われている輸送手段


第六条 要請の形式及び内容

1 この協定に基づく要請は、英語による書面にて行われる。要請には、その要請された支援の実施に有益と考えられる情報を添付する。緊急な事情によりやむを得ない場合には、口頭による要請であっても承認され得る。ただし、そのような要請は、速やかに書面にて確認される。

2 1の規定に従って行われる要請に当たっては、次の情報が示されるものとする。

 (a) 当該要請を行う当局

 (b) 当該要請に関連する手続の種類

 (c) 当該要請の目的及び理由

 (d) 当該要請に関係する者の氏名及び住所(ただし、判明している場合に限る。)

 (e) 検討されている事案の簡単な説明及び関連する法的要素

3 この協定に別段の定めがある場合を除くほか、この協定に従って提供される情報は、それぞれの税関当局が指定する職員の間で直接伝達される。


第七条 要請の実施

1 被要請当局は、自国において効力を有する法令に従って、かつ、両税関当局の共通の権限及びその利用可能な資源の範囲内で、この協定に基づき要請された支援を実施するため、すべての合理的な措置をとる。

2 被要請当局が要請当局の要請に同意する場合には、当該要請当局が特別に指定する職員は、当該被要請当局が課す条件の下で、当該被要請当局が自国の関税領域において行う質問に立ち会うことができる。

3 被要請当局は、要講当局の要請に応じ、かつ、商当と考える場合には、当該要請当局との調整のため、支援要請に応じてとる措置の時及び場所を当該要請当局に通報する。

4 被要請当局は、要請された支援を実施する適当な機関でない場合には、その要請を適当な機関へ転送する。ただし、当該適当な機関は、その要請に応える義務を負わない。


第八条 情報の使用

1 この協定に従って入手した情報は、第二条1に定める目的のみのために、かつ、税関当局のみにより使用される。ただし、情報を提供する税関当局が他の当局による使用を明示的に書面で承認した場合は、この限りでない。 

2 1の規定にかかわらず、締約国政府の税関当局は、この協定に従って入手した情報を自国の関連法執行機関が使用することについて、情報を提供した税関当局が、要請に応じ、同意する場合には、当該情報を当該関連法執行機関に提供することができる。当該関連法執行機関は、3及び4に定める条件の下で当該情報を使用することができる。

3 この協定に従って一方の締約国政府の税関当局から他方の締約国政府の税関当局に提供された情報は、当該他方の締約国政府により裁判所又は裁判官の行う刑事手続に使用されてはならない。

4 この協定に基づき一方の締約国政府の税関当局が入手した情報を刑事手続において裁判所又は裁判官に提出することが必要とされる場合には、当該一方の締約国政府は、外交上の経路又は他方の締約国の国内法に定める経路を通じ、当該他方の締約国政府に対して当該情報を提供するよう要請する。


第九条 秘密性

1 各締約国政府は、この協定に従って他方の締約国政府から秘密のものとして提供されたあらゆる情報の秘密性を保持し、かつ、当該他方の締約国政府の国の法令に基づく保護と少なくとも同程度の保護を与える。ただし、当該他方の締約国政府が当該情報の開示に同意した場合は、この限りでない。

2 この条の規定は、情報を入手した税関当局の属する国の法令に基づき義務付けられている限度において、情報が使用され、又は開示されることを妨げない。当該税関当局は、可能な限り、情報を提供した税関当局に対し当該開示について事前に通報する。

3 各締約国政府は、秘密の保持又は情報の使用目的の制限に関して自己の要請する保証を他方の締約国政府から得ることができない場合には、当該他方の締約国政府に提供する情報を限定することができる。


第十条 支援の例外

1 被要請当局の締約国政府は、この協定に基づく支援がその主権、安全、公共政策その他の重要な利益を侵害すると考える場合には、支援を拒否し、若しくは保留し、又は一定の条件若しくは要件が満たされることを支援の条件とすることができる。

2 要請当局は、同様の要請が被要請当局により行われたならば応ずることができない場合には、要請の中でその事実について注意を喚起する。当該要請に基づく支援の実施は、当該被要請当局の裁量にゆだねられる。

3 被要請当局は、要請された支援の実施が現に行われている調査(関連法執行機関による捜査を含む。)、訴追又は司法上の手続を妨げることを理由として、その支援の実施を保留することができる。この場合には、当該被要請当局は、一定の条件を付することにより支援を行う可能性について判断するため、要請当局と協議する。

4 要請された支援が実施できない場合には、要請当局は、速やかにその旨を通知されるものとし、また、当該要請について拒否又は支援実施の延期の理由を記した書面を受領する。当該書面には、当該要請当局が当該要請を更に行うために有益となり得る関連情報を添付することができる。


第十一条 技術協力

 両税関当局は、相互に有益であると認める場合には、次のものを含む税関に係る事項について、両税関当局の共通の権限及びそれぞれの税関当局の利用可能な資源の範囲内で、技術協力を相互に提供する。

 (a)相互の関税法令、税関手続及び技術に関する理解を促進するための税関の専門家による意見交換

 (b)両税関当局の職員の専門技術を向上させるための訓練及び支援(職員の交流を含む。)

 (c)関税法令及び税関手続に関する専門的、科学的及び技術的データの交換

 (d)新たな税関手続並びに新たな取締りのための装置及び技術の研究、開発及び試験の分野における協力


第十二条 費用

 それぞれの締約国政府がこの協定を実施するに当たって必要となる費用は、それぞれの締約国政府が負担する。この協定を実施するために高額な費用又は特別の性質の費用が必要となる場合には、両締約国政府は、支援を実施する条件について事前に協議し、及び調整する。


第十三条 協定の実施

1 両締約国政府は、必要に応じ、この協定の実施に際して生ずるいかなる問題に関しても、外交上の経路を通じて協議することができる。

2 この協定を実施するための詳細な取決めは、必要に応じ、両締約国政府の税関当局の間で締結される。


第十四条 効力の発生及び終了

1 この協定は、署名により効力を生ずる。

2 いずれの一方の締約国政府も、外交上の経路を通じて、三箇月前に文書による通知を与えることにより、この協定を終了させることができる。終了の通知の際に継続中の支援は、終了の日までに完了される。

3 両締約国政府は、必要に応じ又はこの協定の効力発生から五年を経過したときに、この協定を再検討するために会合する。ただし、この協定の再検討が不要であると書面により相互に通知した場合は、この限りでない。

4 この協定中の条の見出しは、引用上の便宜のためにのみ付されたものであって、この協定の解釈に影響を及ぼすものではない。

 以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けてこの協定に署名した。


 二千六年四月二日に北京で、ひとしく正文である日本語、中国語及び英語により本書二通を作成した。解釈に相違がある場合には、英語の本文による。


 日本国政府のために

  渥美千尋

 中華人民共和国政府のために

  孫松璞


 (参考)

 この協定は、日本国及び中国の税関当局の間の相互支援を一層強化することを目的として、日本国及び中国の両政府が関税法令の適正な適用を確保するため、税関当局を通じて情報提供等の相互支援を行うことを定めたものである。