[文書名] 日中両政府の交流と協力の強化に関する共同プレス発表
胡錦濤中華人民共和国主席は、日本国政府の招待に応じ、2008年5月6日から10日まで国賓として日本国を公式訪問し、福田康夫日本国内閣総理大臣と実りある会談を行った。双方は、「戦略的互恵関係」の包括的推進に関する日中共同声明を発表し、同共同声明を着実に実施するため、以下の共通認識に達した。
1.日本側は、胡錦濤主席を本年7月に北海道洞爺湖において開催されるG8首脳会議アウトリーチ・セッションに招待し、中国側はこれを真剣かつ積極的に検討する旨表明した。
2.中国側は、福田総理を本年10月に北京において開催されるアジア欧州会合(ASEM)第7回首脳会合に招待し、日本側はこれを真剣かつ積極的に検討する旨表明した。
3.日本側は、本年秋に日本国において日中韓首脳会議を開催することを提案し、中国側はこれを真剣かつ積極的に検討する旨表明した。
4.双方は、日中戦略対話が日中関係の改善及び発展に果たしている重要な役割を積極的に評価し、同対話を引き続き重視していく。
5.双方は、本年4月に東京において開催された日中外務報道官協議において、両国国民間の相互理解を更に深めるため、報道及び広報の面で協力し、両国報道担当部局間の直接の連絡体制を強化すること、両国メディアに対し客観的かつ正確な情報を提供するよう共に努力することで一致したことを歓迎し、次回協議を双方の都合の良い時期に北京において開催する。
6.両国防衛当局間の相互信頼を増進するため、本年中に日本国の防衛大臣が訪中する。
7.双方は、本年3月に開催された日中防衛当局間協議を歓迎した。両国防衛当局間の相互理解を深めるため、引き続きハイレベルでの防衛当局間協議を継続する。
8.本年2月の統合幕僚長の訪中に続き、本年6月に中国人民解放軍空軍司令員が、本年後半に海軍司令員及び副総参謀長がそれぞれ訪日する。
9.昨年11月の中国人民解放軍海軍艦艇の訪日に続き、本年6月に日本国海上自衛隊艦艇が訪中する。
10.双方は、海上における不測の事態の発生を防止するため、4月下旬に北京において日中防衛当局間の海上連絡メカニズム設立のための第1回共同作業グループ協議が開催されたことを歓迎するとともに、早期に当該メカニズムが設立されるよう引き続き努力する。
11.双方は、軍種間、防衛関係の教育機関・研究機関間の交流の拡大を検討していく。
12.双方は、国際連合平和維持活動(PKO)、災害救援等の分野での協力の可能性を検討していく。
13.双方は、両国防衛当局間の相互理解及び相手国への理解を深めるため、中国の人民解放軍青年将校と日本の自衛隊若手幹部との相互訪問を強化することで一致し、年度内にそれぞれ15名程度の尉官級幹部を相手国へ1週間程度相互招聘することで一致した。
14.双方は、新日中友好21世紀委員会が、両首脳の関心の下、日中関係の改善及び発展のために有益な提言を行ってきたことを積極的に評価し、同委員会が本年末に最終報告書を提出することを期待する。
15.双方は、日中歴史共同研究の果たす役割を高く評価し、今後も継続していく。
16.双方は、昨年の両国間の人的往来が延べ500万人規模に達していることを歓迎し、今後も引き続き、人的交流を拡大し、相互理解を深めるため緊密に協力する。
17.双方は、「日中青少年友好交流年」の順調な立ち上げに満足の意を表明する。双方は、今後4年間、毎年4000名規模の青少年交流を実施することを確認し、最大限有効な青少年交流が行われるよう努力する。
18.双方は、日中青少年友好交流を長期にわたり継続的に行っていくことで一致し、両国の各界に青少年交流促進の協力を強化するよう呼びかける。
19.双方は、両国中堅幹部の交流を一層強化することが積極的な意義を有し、今後この分野における交流及び協力に取り組むことを引き続き支持することで一致した。
20.双方は、北京オリンピックを成功させ、北京オリンピックを契機に、両国国民の交流が一層促進され、相互理解と友情が増進されることを希望する。
21.双方は、文化センターの相互設置に関する協定が署名されたことを歓迎し、同センターが、両国国民の相互理解の促進に積極的役割を果たすことへの期待を表明した。
22.双方は、人文分野における交流及び協力に積極的に取り組み、関係部門及び社会団体が文化遺産の保護等の分野で共同研究を行うことを奨励する。
23.昨年12月の福田総理訪中時に、日本側は北京大学の対日交流強化のためのプランを提案した。双方は、関連の準備が進められていることを歓迎し、知的交流の更なる強化のため協力を継続する。
24.双方は、昨年12月に北京で行われた第1回日中ハイレベル経済対話において、両国の関係閣僚が一堂に会して、それぞれのマクロ経済政策、気候変動を含む省エネ・環境、貿易・投資、検査・検疫及び地域・国際的な経済問題について、部門を越えた直接対話を行ったことにより、相互理解が促進され、今後の問題解決や協力推進への指針が示されたことを高く評価した。次回対話は、本年秋を目途に東京で開催する方向で検討する。
25.双方は、両国関係部門が、「持続可能な経済発展に資する互恵関係構築を推進していくための包括協力文書」、「省エネルギー・環境分野における協力の継続強化に関する覚書」及び「中小企業分野の協力推進に関する覚書」の3つの文書に署名したことを歓迎し、引き続き協力を推進していくことで一致した。
26.双方は、現在の石油価格に対する懸念を表明した。また、双方は、継続的に日中エネルギー閣僚政策対話を行い、エネルギー分野における互恵的協力について検討していくことで一致した。
27.双方は、石炭分野における技術協力として、中国の石炭火力発電所における設備診断・設備改造・人材育成を推進する。双方は、石炭火力発電所からの二酸化炭素の隔離・貯蔵(CCS)を通じて、石油回収率の向上(EOR)の実証研究を継続的に展開する。また、双方は、鉄鋼及びセメント分野の省エネルギー環境診断を引き続き推進することを歓迎する。
28.双方は、「日中省エネルギー・環境ビジネス推進モデルプロジェクト」が順調に進行していることを確認し、中国の地方政府と共に努力して同プロジェクトを一層推進させ、プロジェクトの発掘とその成果の普及を強化する。
29.双方は、省エネルギー政策に係る受入研修を通じて中国の省エネルギー法及び中国の省エネルギー政策が進展したことを高く評価する。双方は、今後、政策研修を実施すると同時に、日本側が中国側に対し省エネルギー計測の分野の省エネ関連に係る専門家を派遣し、中国側が省エネ制度の確立と企業のエネルギー管理を更に強化するよう支援することに同意する。
30.双方は、環境関連の大学院ネットワークの構築を推進し、環境人材の養成を進める。
31.双方は、福田総理が訪中した際に確認した「日中省エネ環境協力相談窓口」が本年4月から業務を開始したことを歓迎するとともに、本窓口により両国の省エネ環境保護ビジネスの発展を促進するよう努力する。
32.双方は、原子力発電のエネルギー安全保障と地球温暖化防止に対する重要性に照らし、この分野における協力を強化することに同意する。
33.双方は、双方を含む主要なエネルギー消費国が、省エネルギーに関する政策手法等につき、幅広く情報を共有し、意見交換を行う必要性を共有する。
34.双方は、天津市と北九州市・神戸市との循環経済、省エネ・環境保護分野における協力を歓迎するとともに、引き続き支持していく。
35.双方は、両国の環境保護部門が農村地域等における分散型排水処理モデル事業協力実施に関する覚書に署名したことを歓迎する。
36.双方は、両国の協力により黄砂の共同研究が進展していることを評価し、引き続きアジア諸国の二酸化硫黄等を含む大気環境分野における交流と協力を促進する。
37.双方は、公害対策等と気候変動の緩和を両立させるコベネフィットアプローチに関する具体的な協力を促進する。
38.双方は、両国主管部門が中国の農村地域における水安全供給及び日本における簡易水道普及に係る成功経験の紹介等に関する覚書を起草したことを歓迎し、覚書の実施のために協力を行っていく。
39.双方は、水資源の効率的管理、水質汚濁の予防、治水災害対策等の水資源分野における協力について、水が地球温暖化の影響を最も受けやすい資源であると認識し、気候変動への適応の観点からも、この分野の協力を一層強化していく。
40.双方は、両政府間の森林・林業協力及び日中民間緑化協力委員会の着実な活動を積極的に評価するとともに、世界的な森林減少及び劣化の抑制の問題に対して、植林・違法伐採取り締まりを強化し、アジア地域における森林回復及び持続可能な経営を促進する。
41.双方は、食料と競合しないとの原則を堅持しつつ、バイオマス燃料の発展について、情報交換及び技術交流を行う。
42.双方は、中国から日本に提供されたトキが順調に繁殖していることを喜ばしく思うとともに、今後もトキ保護及び野生復帰に関する協力を引き続き強化する。
43.日中両国国民の友好的感情を増進するため、中国側は、日本側に一対のパンダを提供し、共同で協力研究を行うことに同意し、日本側はこれに謝意を表明した。
44.双方は、鉱物資源分野に係る対話を継続し、建設的議論を行っていくことを希望するとともに、当該分野における交流と協力をより一層深めるため、年内の双方にとり都合の良い時期に、レアアース交流会議を開催することで共通認識に達した。
45.双方は、知的財産権分野における協力を引き続き強化し、両国の知的財産権交流の既存のワーキング・メカニズムを利用して、知的財産権の立法、執行及び行政審査実務に関する情報交換を行う。双方の企業間で知的財産権の保護及び利用の経験交流を強化する。知的財産人材育成を共同して行い、知的財産権制度の影響力を拡大する。
46.双方は、日中韓ビジネス環境改善アクション・アジェンダについて、日中間で意見の一致を見たことを歓迎する。また、「貿易・投資関連法律制度の研究交流に関する覚書」が署名されたことを歓迎し、貿易投資法律の交流・協力を強化する。
47.双方は、両国関係部門が「技術貿易の発展と円滑化に関する協力覚書」に署名したことを歓迎する。
48.双方は、両国の関係部門が「中小企業海外事業展開円滑化協力のための覚書」に署名したことを歓迎するとともに、今後、中小企業のビジネス・投資の円滑化を更に推進していく。
49.双方は、両国国民の生命・健康を守るために、協力を一層強化していく。双方は、このたび発生した冷凍加工食品の中毒事案につき、一刻も早い真相究明のため、日中双方で捜査及び協力を一層強化していく。
50.双方は、これまでの動植物検疫分野における協力を積極的に評価し、双方の協力・交流を一層強化し、存在する技術的問題を適切に解決し、貿易の順調な発展を促進することを希望することで一致した。中国側は、日本産精米の正式な対中輸出を許可し、日本側は、これを歓迎した。日本側は、中国産生鮮かぼちゃの対日輸出を許可し、中国側は、これを歓迎した。
51.双方は、情報通信分野における政策協議を積極的に評価し、情報通信分野における協力を共に促進していくよう努力する。
52.双方は、東京証券取引所の北京事務所の開設等を含め、最近の日中の金融及び金融監督管理分野における協力の強化で得られた成果を積極的に評価し、今後も引き続き当該分野における協力を強化することを表明した。
53.双方は、日中の農林水産分野におけるこれまでの協力を高く評価し、既存のメカニズムを活用してこれを更に推進していく。
54.双方は、観光交流を更に拡大させ、鉄道、物流、海運、航空等の分野における協力を積極的に推進する。
55.双方は、昨年末の官民共同ミッションで得られた成果の基礎に立ち、引き続きがん予防協力に取り組み、日中医学交流を促進し、官民ミッションを派遣して交流を行う。また、双方は、医薬品分野における情報交換の強化等を図っていく。
56.双方は、地球観測・予測の取り組みを加速するとともに、得られたデータや成果の共有を行い全球地球観測システム(GEOSS)の構築に取り組む。また、双方は、気候変動分野における科学技術研究交流を推進していく。
57.双方は、日中領事協定締結交渉が実質合意に至ったことを歓迎するとともに、早期に署名し、発効のための手続を了するよう努める。
58.双方は、日中刑事共助条約の早期発効のため努力を加速する。
59.双方は、日中犯罪人引渡条約の締結交渉を開始するとともに、その時の状況を踏まえて日中受刑者移送条約の締結交渉についても速やかに開始する。両条約は同時期の署名を目指す。
60.双方は、「化学兵器禁止条約」の規定に基づき、協力を一層強化し、中国における日本の遺棄化学兵器の廃棄をできるだけ早く進める。
61.双方は、アジア経済の持続的かつ安定した成長を実現するために、チェンマイ・イニシアチブのマルチ化やアジア債券市場育成イニシアチブ等、地域財政金融協力に取り組むことが非常に重要であると認識し、この協力を共に推進し、更に大きな進展を得る。
62.日本側は、日朝平壌宣言に従い、核問題、人道問題等の懸案事項を解決し、不幸な過去を清算し、日朝国交正常化を図るとの方針を表明した。双方は、日朝関係が前進することの重要性を確認し、中国側は、必要な協力を行う旨述べた。
63.双方は、本年4月に北京で行われた国連改革に関する局長級協議において、安保理改革を含む国連の問題等につき意見交換を行い、今後とも協議を継続していくことで一致した。
64.双方は、「日本国政府と中華人民共和国との気候変動に関する共同声明」の発表を歓迎した。
65.双方は、昨年11月に北京で行われた第三国援助問題に関する局長級対話において、対外援助に関する経験の共有及び対外援助の分野における協力の可能性を検討した。双方は、引き続き、実務レベルで対話を継続していく。
66.双方は、昨年9月に東京で行われたアフリカ局長級協議において、各々の対アフリカ政策及びアフリカ情勢等について率直な意見交換を行い、可能な協力のため引き続き協議を強化していくことで一致した。また、中国は、日本で本年5月に開催される第4回アフリカ開発会議(TICADIV)がアフリカの発展の促進に向けてより大きな成果を収めることへの期待を表明した。
67.双方は、本年4月に北京で行われた日中メコン政策対話において、メコン地域の現状、各々の対メコン地域政策、メコン地域の開発、貿易投資の促進等の問題について幅広い議論を行ったことを歓迎した。
68.双方は、昨年5月に東京で行われた日中軍縮・不拡散協議において、最近の国際軍縮、不拡散の分野における主要な問題について幅広い意見交換を行った。双方は、引き続き協議を行っていく。
69.双方は、平等と相互尊重の基礎の上に、人権問題について対話を行い、国際人権分野における対話と協力を進めることで一致した。
70.双方は、現在、世界経済が多くの新たな課題と困難に直面しており、ドーハ・ラウンドを年内に成功裡に妥結させることが各国の共通利益に合致し、多角的貿易体制の強化及び世界経済の安定と成長の維持に資すると認識した。双方は、ドーハ・ラウンドが広範かつバランスのとれた合意に達するよう推進し、その目標を実現するために引き続き協力していく。
2008年5月7日 東京