データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日中共同記者会見

[場所] 東京
[年月日] 2008年5月7日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文]

【福田総理冒頭発言】

 このたび、中国から胡錦濤国家主席を国賓として我が国にお迎えいたしました。日本政府を代表し、心から歓迎いたします。先ほど胡主席との間で、非常に充実した有意義な会談を行うことができました。

 まず、北京オリンピックは、アジアにおいて3度目となる平和の祭典であり、我が国としては北京オリンピックが大いに成功することを心から祈っており、また協力していきたい旨、胡主席に申し上げました。

 また、会談に引き続き行った署名式では、胡主席とともに今後の日中関係の方向性を示す指針ともなる共同声明に署名いたしました。日中両国が国際社会における責任を認識し、絶えず相互理解と相互信頼を深め、互恵協力を拡大しながらアジアと世界のよき未来をともにつくり上げていかなければなりません。こうした日中両国の進むべき道、日中関係の大局に対する信念を共有し、そして問題の解決に最大限努めていくことこそ、私たち指導者に課せられた責務であると思います。会談でも、この基本的考えで一致いたしました。

 日中関係を未来に向かって更に進めていく上で、国民同士の相互理解を深めていくことが極めて重要であります。

 会談では、青少年交流の重要性について認識を共有したほか、安全保障を含め、政策の透明性を高めることなどで一致し、そのために対話と交流を強化するなど、さまざまな方策について検討を深めることで一致しました。

 日中間の互恵協力を更に推進していくという面では、気候変動問題に関して、2013年以降の実効的な枠組み構築に向けた協力や、セクター別アプローチを前向きに評価する内容を盛り込んだ共同声明を発表いたしました。また、ハイレベル経済対話を、本年秋に我が国で行うことで一致したほか、日本産の米を恒常的に輸出できるようになりました。

 胡主席より、日中友好のシンボルとして新たにパンダの貸与をしていただくとの申し出をいただきました。私からは、ありがたいお話であり、日本国民も喜ぶものと思うと、感謝と歓迎の意を表明しました。

 このほか、主席との間では、東アジア地域協力、北朝鮮問題、国連安保理改革等、多岐にわたる議論を行うことができました。

 東シナ海資源開発問題については、これまで日中間で有益な議論を積み重ねられ、大きな進展があり、長年の懸案に解決の目処が立ったことを確認いたしました。今後、更に細目を詰めて、できるだけ早期に合意することで一致しました。

 中国産冷凍ギョウザ問題については、一日も早い真相解明が、日中双方にとって必要であります。中国側としても一層捜査を強化するとのことであり、日中双方で捜査と協力を更に強化していくことで一致しました。

 なお、チベット問題については、胡主席より4日にダライ・ラマ氏側との接触、話し合いを行った旨の説明がございました。これに対し、私からは主席の決断と今回の話し合いは、本格的対話に向けた第一歩として評価する旨申し上げるとともに、対話の継続を通じ、状況が改善し、国際社会の懸念を解消するように要請しました。

 本年は、日中平和友好条約締結30周年に当たりますが、この大きな節目の年が、将来にわたり末永く明記される日中関係発展の年にしていきたいと思います。

 胡主席は、今回の訪日で、東京のほか、横浜、大阪、奈良を訪問され、各地で日本の文化、歴史、産業などにも触れるとともに、日本の国民各層と交流される機会を持たれますが、是非とも実りある滞在となりますよう、心からお祈りを申し上げます。

 以上です。

【胡錦濤国家主席冒頭発言】

 記者の皆様、こんにちは。本日、記者の皆さんとお会いできますことを、大変うれしく思います。

 まず初めに、天皇陛下、福田総理、並びに日本政府が私たちの今回の訪問に対し、心温まる御歓待と周到なお手配をしていただき、衷心より感謝を申し上げます。先ほど私は、福田総理と率直かつ友好的な雰囲気の中で、中日関係とともに関心を持っている問題について、率直かつ突っ込んだ意見交換を行い、広範な共通認識に達しました。

 私は福田総理と、中日両国は近隣として、またアジアと世界において重要な影響力を持つ国として、平和的、友好的かつ協力的な道を歩くことしかできません。

 また、両国の長期にわたる善隣した友好関係を発展させることは、両国と両国国民の根本的利益に合致し、アジアと世界の平和、安定、繁栄にとって重要な意義を有することで一致しました。

 私は福田総理と、中日関係が現在新たな歴史的スタートラインに立っており、更に発展する新たなチャンスに恵まれており、双方はともに努力して中日戦略的互恵関係の包括的発展の新たな局面を切り開いていくべきということで一致しました。そのため、双方は以下の分野において協力を展開していくこととします。

 第1、戦略的相互信頼を踏襲することであります。両国指導者の相互訪問のメカニズムを構築し、政府、議会、政党間の交流と戦略的対話を強化します。

 第2、互恵協力を深化することであります。重点的にエネルギー、環境、金融、情報等の分野における協力を強化し、中日経済ハイレベル対話のメカニズムを強化し更に完備していきます。

 第3、人的文化交流を拡大することであります。青少年交流の長期的に有効なメカニズムを構築し、絶えず両国国民、特に青少年の相互理解と友好感情を増進します。

 第4、アジアの発展を推進し、ともに北東アジアの平和と安定の維持に力を尽くし、東アジアの地域協力を促進していきます。

 第5、グローバルな挑戦に対応し、ともにエネルギー安全、環境保全、南北の格差、深刻な伝染病等の地球規模の課題を解決すべく、しかるべき貢献をしていきます。

 先ほど、福田総理もおっしゃいましたように、中国人民からの日本国民への友好感情の印として、中国側は東京上野動物園に一対のパンダを提供し、共同研究を行うことを決定しました。

 双方は、中日関係の第4の政治文書を発表することに同意しております。この文書は、中日関係の新たな発展を結集して、双方の新たな共通認識を凝集し、これまでの3つの政治文書の原則を継承する基礎の上に、両国関係の長期的発展のために、指導的原則を確定し、両国関係の将来にわたる発展を企画しております。

 私は、この文書とこれまでの3つの政治文書の指導の下で、我々は共に中日関係のよりよき未来を切り開けることと信じております。

 どうもありがとうございました。

【質疑応答】

【質問】

 福田総理に質問をしたいと思います。

 北京においては、いよいよオリンピックが開催されます。これは、アジアにおける20年ぶりのオリンピックでもあります。多くのアジアの国々から大きな支持を私はいただいております。

 福田総理にお聞きしたいのは、このオリンピックに対して、総理はどのような期待を持っておられるでしょうか。

 もう一つ、両国の国民感情は中日の戦略的互恵関係の構築に対して、極めて重要な役割を果たしていくという、先ほど総理の方からもお言葉をいただきました。

 それでは、どのようにして両国の国民感情を増進し、相互理解と友好感情を深めることが一番効果的でしょうか。そして、メディアはこの中でどんな役割を果たすべきでしょうか。

【福田総理】

 私も東京オリンピック、今から44年前に開催されました。そのときのことを思い起こしましても、当時、いろいろなことがありました。首都高速道路というのは、あのとき完成したのです。今ほどではありませんけれども、ごく一部が開通したということもありましたし、また、新幹線もそれに間に合わせるように完成したということもありました。今の日本の基礎があのときにできたのかなと思います。

 そして、また、日本の国民も戦後努力して、そして経済発展し、生活も向上し、これで戦後も終わったのだなといったような考えを、そのオリンピックを開催することによって、みんなが持ったのではないかと思います。経済的にも精神的にも非常に大きな影響のあるものだと思っております。

 そういうことを考えますと、中国が、これから開くオリンピックは同じように大事な価値のある、また意義のあるものだと思います。ですから、このオリンピックは是非とも成功させてほしい。成功しなければいけません。そのためには、これは世界中から人々が集まってくる、注目するということであるということを中国政府は勿論、そしてまた国民の方々も意識していただきたいということがございます。

 世界の人が喜んで参加し、そしてすばらしいオリンピックだったなということを思えるようなオリンピックをしていただきたい。

 そのことが、中国の人々にいかに大きな精神的な意義を与えるか、また、そのことを誇りに思い、また、自分の国を誇りに思う、そういうきっかけになるのではないかと、こう思っておりますので、是非そういうような世紀の祭典になることを願っております。

 そして、併せて日中関係の相互理解をどうやって進めるかといった御質問がございましたけれども、それは国と国の間の理解なくして信頼も生まれない。こういう関係だと思います。そういう意味において、お互いに理解し信頼する。しかし、政府同士もしくは首脳同士が理解し信頼するだけでは十分ではないんです。やはり、そういう政府や首脳を支える国民がどういう理解をし、お互いを理解し、そして、国民同士が信頼し得る関係になるか。そのことが極めて大事だと思います。ですから、そういうことを進めるためのいろいろな取組みをしていかなければいけない。

 例えば日中でもって、今年から4年間、年間4,000名規模の青少年交流を行っていくことも計画いたしておりますけれども、これ以外にも人的交流をいろいろな分野でしていこう、また、各界各層というようなレベルの交流もしていこうということを考えておるところでございます。本年は日中青少年友好交流年でありますので、明日は胡主席の御出席を得て、交流年の開幕式が行われることになっております。こういうような交流を通じて、将来にわたり安定した日中関係を築いていきたいと思います。

 しかし、その中で、やはり政治家同士がお互いに理解し信頼する関係を構築することは極めて大事であり、そして、各政治家がその国をリードしていく、国民をリードしていくという役割を果たしていくことは極めて大事なことだと思っております。

 最後に、マスコミのことがございました。手短に申し上げますけれども、マスコミは、民主的な運営においては偏見のないものを正しいことを正しく伝えることが大事な役割だと思います。そういう意味におけるマスコミの役割は大変重要であり、報道の中身は、偏見とか誤った報道があるならば、これは両国の国民の理解、信頼というものにはつながっていかない可能性があるということであります。

【質問】

 胡錦濤国家主席にお伺いします。中国政府は、ダライ・ラマ氏側との対話を再開いたしましたけれども、この問題解決に向けて、この対話を今後どのように進めていかれますか。

 また、日中両国の戦略的互恵関係の推進について、両首脳が合意されたということですけれども、両国の間には、まだ、東シナ海ガス田問題、ギョウザの問題等、懸案が残っております。こうした点について、解決にどのような見通しをお持ちかお伺いします。

【胡錦濤国家主席】

 この記者の方がおっしゃったとおりで、先日、中国の中央政府の関係部門の責任者は、ダライ・ラマの個人代表と協議を行いました。そして、双方は次のステップとして引き続き接触を行うことについて一致しました。

 私たちはダライ側の個人代表と接触あるいは話し合いに臨むときは、真剣かつ厳粛な態度で臨んでおります。私たちは、ダライ側が実際の行動をもって誠意を示し、祖国分裂の活動を真に停止し、暴力を策動し、また扇動することを停止し、北京オリンピックの破壊を停止し、次のステップの話し合いのために条件をつくり上げることを望んでおります。私たちは、接触で積極的な成果を上げることを望んでおります。

 先ほど、私と福田総理との会談においては、双方は中日戦略的互恵関係の枠組みの構築に関して合意をしただけではなく、両国間にある具体的な問題の解決の推進に関しても一致しました。

 例えば、東シナ海ガス田の問題に関しまして、両国の外交当局は、両国の指導者の間で達成された共通認識に基づいて突っ込んだ協議を行い、重要な進展を遂げ、既に問題解決の全景が見えてきました。私は、これをうれしく思っております。双方は協議を加速し、できるだけ早く合意できるようにしていくということについて一致しました。

 ギョウザの問題に関しまして、中国政府は、食品の安全を高く重視し、国民の健康を高く重視しています。

 中国政府は、この事件に対し、真剣かつ突っ込んだ調査を行いました。その調査の状況に関しては、中国の関係部門は、既に日本側の管理部門と十分な意思疎通を行いました。

 次のステップとしては、両国の管理部門は、引き続き調査を継続し、特に協力を強化し、一日も早く事件の真相を解明するように努力してまいります。

 ありがとうございました。

【質問】

 胡錦濤主席に質問します。中日両国はいずれもアジアにおける重要な国であります。今、中日両国はアジアにおいて競争関係にあると言う人がいます。胡錦濤主席は中日両国のアジアにおける協力に関して、どのようなお考えをお持ちでしょうか。

【胡錦濤国家主席】

 先日、私は北京で日本の記者の皆さんの共同会見に臨むときにも申し上げましたが、中日両国は一衣帯水の隣国であります。中日両国の国民の間には2,000年以上にわたる友好往来の歴史があります。中日友好は両国国民から幅広い支持と擁護を得ています。これは中日関係、中日友好を発展するしっかりした基盤であります。実際に証明されているように、長期的かつ安定した中日善隣友好関係を発展することは、両国と両国国民の根本的利益に合致し、またアジア太平洋地域と世界の平和安定と繁栄のためにもなります。

 中日両国はいずれもアジアの重要な国であります。アジアの平和と発展に対し、重大な責任を担う国であります。双方は各分野における協力、そして、中日戦略的互恵関係を発展すべきであり、また、そうすることは完全に双方にその能力はあると思います。

 双方は国際社会と地域において、相手の国が建設的な役割を発揮することを理解し、また支持し、戦略的な協力を強化し、ともにアジアの振興に取組み、ともにグローバルな挑戦に対処すべきであります。

 私たちは日本側とともに、北東アジアの平和と安定に取組み、六者会合のプロセスをともに推進し、北東アジアの平和安全のメカニズムの建設を推進してまいりたいと思います。

 そして、私たちは日本側と東アジア地域の協力をめぐって、さらなる意思疎通、協調を行い、それぞれの長所を生かして、ASEAN+3などの協力メカニズムを着実に推進し、絶えず東アジアの地域協力をより深い段階へ押し進めていきたいと思います。

 そして、私たちは日本側とともに、地域あるいは周辺地域の協力のさまざまなメカニズムを十分生かして、アジア諸国は文化、観光、青少年、人材育成などの各分野における交流を推進し、アジア諸国、国民の相互理解と信頼を絶えず増進していくために努力してまいりたいと思います。ありがとうございました。

【質問】

 福田総理にお伺いいたします。冒頭発言でもありましたけれども、本日の会談の中で、チベット問題についての胡錦濤主席からの説明を福田総理はどのように受け止められ、どのようにお話をされたのかというのが1点。また、北京オリンピックの開会式には、どのように対応されるおつもりなんでしょうか。

 更に、東シナ海のガス田やギョウザ問題等の懸案事項の解決について、できるだけ早く解決したいという意思が表明されましたけれども、今後の見通し、時期の目処等の見通しについて、福田総理はどのようにお考えでしょうか。

 また、気候変動問題で日本の提案しているセクター別アプローチについての胡主席との話し合いも含め、今後のポスト京都議定書の枠組みづくりに向けた見通しをお伺いしたいと思います。

【福田総理】

 ただいまの質問につきまして、先ほど私が申し上げたとおりなのでありますけれども、要するに、こういうような問題に対してどう対応していくかがまさに戦略的な互恵関係でありまして、そういうような考え方の下に解決する。そして、そういうことがまさにできるようにすることが、この戦略的互恵関係と考えております。ですから、そのために率直な対話とか、協議といったものは欠くことはできません。そういう意味でも、本日、胡主席と相当長い時間にわたり会談したことは大変大きな意味があると思います。

 個別に申し上げますと、チベット情勢は、主席の「対話をする。」という決断、また、今回、実際に話し合いを行ったことについては高く評価しております。そして、この対話が根気よくなされること。そのことによって状況の改善、国際社会の懸念解消に役立つことを強く期待し、また、その方向でこの対話が進んでいくようにと思っておるところであります。

 オリンピックの開会式に出席するかどうかというお尋ねでございますけれども、考えてみたら、まだ先なんです。ですから、これは事情が許せば前向きに検討してまいりましょうということであります。いずれにしても、世界中から祝福されるオリンピックになってほしいと願っております。

 次に、東シナ海問題。今回、有益な協議が積み重ねられまして、そして、大きな進展を確認いたしました。長年の懸念に解決の目処が立ったということは明確に申し上げることができます。あとは細目を詰めて、そして、できるだけ早期に合意する。この早期にといっても、一月か二月かと詰められますけれども、それは今の段階で申し上げない方がいいと思います。

 次にギョウザの問題ですが、これは中国側も捜査を一層強化するということでございますので、日中双方で、この捜査と協力を更に強化していこうという考え方であります。

 それから、気候変動問題。これは、セクター別アプローチについては胡主席から排出削減を実施する重要な手段であるという評価をいただきました。日中双方の役割については、更に検討を進めていこうということであります。すべての主要排出国は責任ある形で参加する、実効性のある枠組みを構築するということを、今、目指しておるところでございます。