[文書名] 程永華大使,外交円卓懇談会で講演
外交円卓懇談会の友人の皆さんと交流する機会を得て非常に喜んでいます。外交円卓懇談会を主催する日本国際フォーラム、グローバル・フォーラム、東アジア共同体評議会はいずれも日本の著名なシンクタンクで、重大な国際・地域情勢についていつも討議し、独自の見解を打ち出しています。きょうは中国の発展の道、アジア地域協力、中日の地域協力における役割の三つの問題について見解を述べたいと思います。きょうの交流を通じ、友人の皆さんの中国と中日関係に対する認識と理解が増進することを希望しています。
皆さんはご承知かも知れませんが、先ごろ、中国国務院新聞(報道)弁公室は白書「中国の平和的発展」を発表しました。白書は中国の平和的発展の始まり、全般的目標、対外方針・政策および世界にとっての意義などの内容を全面的に述べています。
中国がなぜこうした白書を発表するのか、その意義がどこにあるのか尋ねる人もいるでしょう。
現在、世界は大発展、大変革、大調整の中にあります。新世紀に入り、国際情勢は大きく変化しています。9・11事件、世界的金融危機、欧州の公的債務危機、揺れ動く西アジア北アフリカ情勢、新興市場国群の台頭など重大な出来事が相次いで起きています。世界の多極化、経済のグローバル化および情報社会の急速な発展が国際政治・経済と安全保障情勢に深い影響をもたらしています。この過程で中国の持続的発展は世界に深い印象を残している。2001年、中国の国内総生産(GDP)は1.18兆ドルにすぎなかったが、2010年には5.88兆ドルに達し、世界に占める割合は9.3%に達した。輸出入総額は2.97兆ドルに達し、世界最大の輸出国、世界第2位の輸入国となった。
中国がこのように大きな発展の成果を収めたのは、常に国情にかなった改革.開放の道を歩んだことによるもので、それは同時に世界と絶えず融合し、互いに依存する平和的発展の道でもあります。この道の最も鮮明な特徴は科学的発展、自主的発展、開放的発展、平和的発展、協力的発展、共通の発展です。いわゆる「科学的発展」は人間中心(人を以って本と為す)を堅持し、全面的に協調し、持続可能な、統一的に計画し、全体に配慮する発展であります。いわゆる「自主的発展」は国の発展の基本点と重心を国内に据え、問題、矛盾を外国に転嫁しないというものです。いわゆる「開放的発展」は国内、国際2つの市場、2つの資源を結びつけ、開放的姿勢で世界と融合するものです。いわゆる「平和的発展」は国の発展のため平和・安定の国際環境を築くことを対外活動の中心任務とし、世界の発展にしかるべき貢献をするものです。いわゆる「協力的発展」は協力によって平和をはかり、協力によって発展をはかり、協力によって紛争をなくすものです。いわゆる「共通の発展」は自らの発展を追求すると同時に、他国の発展との好ましい相互作用(インタラクション)の実現に努力するものです。
新たな情勢の下、中国と外部世界の利益がより緊密に交わっている。中国と世界はますます一緒に呼吸し、運命を共にする共同体になっていると言えます。中国の発展に対し、国際社会には評価、称賛もあれば、疑問、憂慮もみられます。疑問は主に「中国はどの方向に発展するのか、国が強くなると必ず覇権を求める道を歩むことにならないか。中国の発展は結局、世界にプラスの影響をもたらすのか、マイナスの影響をもたらすのか」などのいくつかの問題に集中しています。
これらの疑問と懸念に対し、中国政府はさまざまな形で説明し、回答しており、今回は特に白書の形で、整った、系統的な、権威ある説明を行っています。白書は全中国、全世界に対し次のように厳粛に宣言しています。平和的発展は中国の近代化と富民強国の戦略的選択であり、中国が世界の末永い平和、共同の繁栄により大きく貢献するために必ず通らなければならない道である。中国は確固として揺るぎなく、たゆまず、粘り強くくじけず、平和的発展の道を歩み続ける。近代史で一部大国が隆盛するうえで歩んだのは「強国になると必ず覇権を求める」道で、覇権を追い求め、武力衝突を引き起こし、人類は二度の世界大戦の大きな災禍に見舞われました。中国は近代にも西側列強の侵略によってひどい苦しみに遭いました。こうした歴史的教訓と痛ましい記憶によって、また中華文化の「和をもって貴しとなす」、調和をはかり、仲良くする伝統的思想によって、平和的発展の道は中国の必然的な歴史的選択となりました。
無論、われわれは今日の中国が大きな発展を遂げたのと同時に、多くの問題に直面していることをはっきり認識しています。問題を解決し、皆さんの疑問を解消するには、主にはやはり中国自身がたゆまず努力し、説得力のある事実と行動によって自らの前向きの役割を証明し、また同時に国際社会の前向きで善意の理解と支持、協力も必要であります。
友人の皆さん
2008年の米国が発端の金融危機が世界を覆い、世界に重大な結果をもたらした。現在、英米などの社会矛盾が激化し、米国の「ウォール街占拠」運動が広がり、ギリシャの債務危機がユーロ圏諸国の足を引っ張り、欧州の銀行業の足を引っ張っている。リビア、イエメン、エジプトなど中東地域の情勢が動揺している。こうした大きな国際環境の下、アジア地域は安定的発展の良好な状態を維持し、グローバル化発展の焦点となっています。
過去30年間、アジア、特に東アジアは経済が力強い成長を続け、世界の中で経済発展が最も速く、活力が最も強い地域となっています。アジアの発展の前途は各国から有望視され、世界が金融危機に打ち勝ち、回復する自信と力をもたらしています。2010年、アジア地域の経済成長率は7%に達し、アジア諸国の経済総量は世界の28.3%を占めました。現在、アジアと東アジア地域統合が勢い良く進み、地域の姿が深く変わりつつあります。
仕組みの面では、10+3の東アジア協力における主要チャンネルとしの地位が確立され、それを踏まえて首脳、閣僚、高官会議など、整った仕組みが作られました。10+3と並存して三つの10+3の協力の仕組みと「中日韓首脳会合の仕組み」があります。この四つの東アジア協力の仕組みは東アジア統合を進める「四つの車輪」のようです。同時にメコン川、図們江、環日本海などの地域協力が日増しに活発になっています。
経済の面では、東南アジア諸国連合(ASEAN)がそれぞれ中日韓と自由貿易協定(FTA)に調印し、三つの10+1がそろって進む良好な状況が生まれています。2010年、チェンマイ・イニシアチブの多国間取り決めが正式発効し、1200億ドルの外貨準備基金が設けられました。
このほか東アジア各国は農業、情報、エネルギーなどの面の協力が深く発展し、衛生、環境保護、教育・文化、社会保障などの面の対話・協力が全面的に進んでいます。経済協力が各国の利益の結びつきを強め、政治面の信頼を徐々に育み、また東アジアの協力を徐々に政治・安全保障分野に広げています。
同時にアジア地域協力のスタートが比較的遅く、域内各国の社会制度が異なり、文化的背景がそれぞれで、経済発展の差が比較的大きいことも見て取らなければなりません。こうした多様性に満ちた地域の協力推進について、私は次のように考えます。1、簡単なものから始め、難しいものに進み、引き続き経済を中心、ガイドとし、域内各国の投資、金融、貿易などの協力を強め、政治、安全保障など他の分野に徐々に拡大する。2、「開放的な地域主義」の原則を堅持し、さまざまな仕組みが並存して進み、ぶつかり合うことなく、良好な相互作用を形成する。3、中小国の利益を尊重し、配慮して、10+3のこの主要なチャンネルを堅持すると同時に、中日韓など地域の大国の協調の役割を発揮させる。4、地域の多様性の優位性を生かし、新たな地域秩序とグローバル・ガバメントの方法を絶えず模索する。
友人の皆さん
中国と日本は地域の大国であり、両国のGDPは東アジアの80%を占め、人口は70%を占めており、中日関係の発展はますます二国間の枠を越え、地域の協力と繁栄、さらに世界の平和と安定に重要な影響を与えるものとなっています。
中日のアジアにおける協力について話し合う際、いつも中日双方に主導権争いがあるとする議論を聞きます。それは実際のところ誤解だと私は考えています。
ASEANは一貫して10+3の組織者、協調者で、これは東アジア協力の特色であり、また各国の現実的かつ懸命な選択でもあります。中国はASEANが地域協力の中で主導的役割を果たすことを引き続き支持します。
また一方、中日両国は地域協力を推進する過程で顕著な相互補完性があります。中国の優位性は主に東アジア諸国と比較的深い地理的、文化的関係があり、巨大な市場と労働力資源を保有し、科学技術・工業開発水準が東アジア地域の途上国の要請に比較的かなっていることです。日本は資金、技術、管理などの面で優位性があり、同時に東アジア各国と伝統的に産業分担と貿易・投資関係があります。双方は東アジア協力の中でそれぞれの優位性を生かし、互いに補い、促し合い、他の東アジア諸国と互恵・ウィンウィン(共に勝者になる)の発展の道を探ることができます。
東アジア協力の枠組みの中で中日両国が出来ることは非常に多いと思います。
例えば次のようなものがあります。
‐‐防災減災協力。アジアは自然災害多発地域で、インド洋大津波、中国四川ブン(さんずい+文)川大規模地震、東日本大地震など、こうした自然災害はアジアの発展に重大な影響をもたらしており、中日両国は自ら蓄積した災害対応の経験を生かし、アジア地域の防災減災システムづくりを大いに推進できる。
‐‐金融協力。金融協力はアジア経済の発展において足りない点であります。中日両国は共に地域の高貯蓄率国で、外貨準備が世界第1位、2位となっています。両国はチェンマイ・イニシアチブの多国間取り決めを推進する過程で良好な協力を進め、それぞれ32%の資金を提供しています。双方は引き続き力を入れ、アジア債券市場を積極的に拡大し、アジアのインフラ整備を支援できる。
‐‐FTA協力。昨年の中国ASEAN自由貿易圏設置後、双方の間の経済・貿易が大幅に増え、今年上半期に中日間の貿易額を超えた。中日韓のFTAは前向きに進展し、産官学連携の研究が年内に完了し、来年、政府間交渉が正式にスタートします。しかし、中日間のFTAにはまったく兆しが見られません。中日は互いに重要な貿易パートナーで、両国の早期FTA締結は双方の経済・貿易協力にプラスになるだけでなく、アジアの自由貿易ネットワークづくりに直接作用するでしょう。双方は緊張感をもって推進を急ぐべきです。
‐‐省エネ・環境保護協力。今年は中国の第12次5カ年計画(2011‐15年)のスタート年で、この計画期に中国は資源節約型の環境に優しい社会の構築に努力し、クリーンエネルギーと循環型、低炭素経済を大いに発展させます。日本はこの面で成熟した技術と豊富な経験があり、双方は優位性によって互いに補完でき、アジアの省エネ・排出削減と環境保護の面で積極的進展を共にはかることができる。
来年は中日の国交正常化40周年で、中日関係の発展にとって重要な意義のある特別な年であり、両国関係の長期的発展にとって得難いチャンスをもたらすでしょう。両国の政府機関と社会各界はこれを契機として、中日の戦略的互恵関係をより大きく発展させようと、一連の記念行事を積極的に計画、準備しています。在席の皆さんがこれを積極的に支援し、参加することを希望します。
皆さんありがとうございました。