データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 中華人民共和国外交部声明

[場所] 
[年月日] 2012年9月10日
[出典] 中華人民共和国駐日本國大使館
[備考] 
[全文]

 本政府は中国側の再三にわたる厳重な申し入れを顧みず、釣魚島とそれに付属する南小島と北小島を「購入」していわゆる「国有化」すると発表した。これは中国の領土主権に対する重大な侵害で、13億中国人民の感情をひどく傷つけるものであり、歴史の事実と国際的法理を著しく踏みにじるものでもある。中国政府と人民はこれに断固反対し、強く抗議する。

 釣魚島とそれに付属する島嶼は昔から中国の神聖な領土であり、歴史的根拠も、法的根拠もある。釣魚島などの島嶼は中国人が最も早く発見、命名、利用したものであり、中国漁民はこれまでずっと、これらの島やその近海で生産活動に従事してきた。釣魚島などの島嶼は早くも明代に中国の海上防衛の管轄範囲に組み入れられており、中国台湾の付属島嶼である。釣魚島はこれまで「無主地」などであったことはなく、中国は釣魚島などの島嶼の争う余地のない主人である。

 日本は甲午戦争末期の1895年、清朝政府の敗戦が決定的になった機に乗じて、釣魚島とその付属島嶼を不法に盗み取った。その後、日本は清朝政府に不平等な「馬関条約」を無理やり結ばせ、「台湾全島及其ノ附属諸島嶼」を割譲させた。第二次世界大戦終結後、中国は「カイロ宣言」と「ポツダム宣言」に基づいて、日本が占領していた台湾や澎湖列島などの領土を取り戻しており、釣魚島とその付属島嶼は国際法上、すでに中国に帰っている。歴史は覆されるものではない。釣魚島問題における日本の立場は、世界の反ファシズム戦争の勝利の成果を公然と否定するもので、戦後の国際秩序に対する重大な挑戦でもある。

 1951年、日本は米国などと一方的な「サンフランシスコ講話条約」を結び、琉球諸島(現在の沖縄)の管理を米国に委ねた。1953年、琉球列島米国民政府は管轄範囲を勝手に拡大し、中国領土の釣魚島とその付属島嶼をその中に押し込んだ。さらに1971年、日米両国は「沖縄返還協定」で、釣魚島などの島嶼を「返還区域」に組み入れた。中国政府は中国領土を勝手に授受する日米両国の行為に従来から断固反対しており、これを認めていない。釣魚島は日本固有の領土で、日中間に解決すべき領土紛争は存在しないとの日本政府の主張は完全に史実と法理を無視しており、まったく成り立たない。

 1972年の中日国交正常化および1978年の平和友好条約締結の交渉過程において、両国の先輩指導者は大局に目を向け、「釣魚島問題をそのままにし、今後の解決に待つ」ことで重要な了解と共通認識〈合意〉に達した。中日国交正常化のとびらはまさにこれによって開かれ、中日関係は40年にわたる大きな発展を遂げ、東アジア地域は40年にわたる安定と安寧を手に入れたのである。日本当局が両国の当時の共通認識をあくまで否定し、すべてを帳消しにするなら、釣魚島の情勢はどのようにして安定を保てるのか。中日関係は今後どのようにして順調に発展させられるのか。日本はどのようにして隣国や世界の信頼を得られるのか。

 近年、日本政府は釣魚島問題で絶えずトラブルを起こしている。特に今年に入ってから、右翼勢力が「島購入」の騒動を起こすのを看過、容認し、自らが「島購入」に乗り出すための地ならしをした。人々が、釣魚島問題における日本の所業は決して偶然ではなく、それによって示された政治的傾向は大いに警戒すべきだと考えるのは理由のないことではない。日本側が釣魚島問題で示した政治的動きは警戒しなければならない。日本はいったいどこに向かおうとしているのか、日本の今後の進路は人々を安心させられるのかと問わざるを得ない。

 中国政府は終始、中日関係の発展を重視している。中日両国と両国人民は友好的に付き合うほかなく、互いに対立はできない。中日の戦略的互恵関係を進めることは、両国と両国人民の根本的利益にかない、地域の平和と安定と発展の大局を守ることにも資する。しかし中日関係の健全で安定した発展のためには、日本側が中国側と同じ方向へ進み、共に努力することが必要である。日本政府の「島購入」行為は中日関係の大局を守ることに背くものだ。

 中国政府は厳かに声明する。日本政府のいわゆる「島購入」は完全に不法、無効なもので、日本が中国領土を侵略した歴史的事実をいささかも変えられず、釣魚島とその付属島嶼に対する中国の領土主権をいささかも変えられない。中華民族が侮られる時代はとうに過ぎ去った。中国政府は領土主権が侵害されるのを座視することはない。中国側は日本側が中国の領土主権を損なう一切の行為を直ちにやめ、百パーセント双方の共通認識と了解事項に立ち返り、交渉によって係争を解決する道に戻るよう強く促すものである。あくまで我意を押し通すならば、それによるすべての重大な結果は、日本側が引き受ける(責任をもつ)ほかない。