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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 楽玉成外交部長補佐の釣魚島問題座談会における演説

[場所] 釣魚台国賓館
[年月日] 2012年9月14日
[出典] 中華人民共和国駐日本國大使館
[備考] 
[全文]

 専門家・学者、社会各界の友人の皆さん、こんにちは。

 主催団体である中国国際問題研究所、北京市青年連合会と新華網から、今回の座談会にお招きいただいたことに感謝する。今回の座談会の背景はご承知のとおりだ。4日前、日本政府は中国側の度重なる厳重な申し入れを顧みず、釣魚島とそれに付属する南小島と北小島の「購入」を発表し、これらの島嶼を「国有化」した。日本政府のこの行為は中国の領土主権に対する重大な侵害であり、中国政府と人民は断固たる反対と強い憤りを示している。本日、この機会を利用して、皆さんと個人のこの事件に対する見方を話してみたい。

 ひところから、日本は釣魚島問題で頻々ともめごとを起こし、波風を立て続けている。今年だけで、日本政府による釣魚島の一部付属島嶼への命名、一部議員の釣魚島海域での「釣り」、右翼の上陸による「慰霊」などの茶番劇が続けざまに起こり、最後に日本当局が表舞台に出て、いわゆる「購入」計画を実施した。日本側のこの一連の動きは、日本側の「購入」行動が決して偶然の出来事ではないこと、それは日本国内の政治的気候〈空気〉の変化によって決定づけられたものであることを十分に物語っている。日本国内の「邪気」は日本と中日関係を極めて危険な方向へ引き込みつつある。

 過去20年間、日本経済はずっと低迷し、さらに世界的金融危機と昨年の「3・11」大地震の巨大な衝撃を受けて、経済の見通しは暗い。国内の政党の闘争が激しく、政権が頻繁に交代し、不安定と不確実性に満ちている。石原慎太郎東京都知事に代表される右翼勢力は、日本国内のこれらの問題を利用してたきつけ、波をたてるとともに、次第に一つの気候〈空気〉を作り上げている。日本で常に政治屋が出てきて侵略の歴史を公然と否定し、南京大虐殺、慰安婦など戦争の暴挙を否定していることは、これらの勢力のエネルギーがますます大きくなり、すでに政界の風向きと政局の行方に影響を与えるまでになったことを物語っている。周辺と世界の少なからぬ人々はすでに、日本は「極右主義」に向かいつつあると警告を発している。日本当局は右翼勢力という禍の元を厳しく取り締まらないだけでなく、看過、容認し、はてはそれを「盾」にして、周辺の隣国に挑発をかけ、視線と矛盾を外に転嫁しようとしている。そして日本と隣国の関係が一様に緊張する事態を招いた。これと同時に、日本政府は平和憲法や非核三原則の改変を積極的にはかり、戦後の国際秩序における束縛から脱しようと企てている。これらの動向は非常に危険であり、警戒すべきものだ。

 日本国内のこの「邪気」は中日関係にもはっきり現れ、いつも一部の人が中国の発展と強大化という現実を受け入れたがらず、中国人がよい暮らしをするのが気にくわず、なんとかして中国に問題を持ち込み、中日関係で面倒を起こそうと考えている。釣魚島問題はこれらの連中が中日関係を破壊する重要な「取っ手」〈とっかかり〉となった。

 これからもわかるように、この釣魚島の風波は完全に日本側が一手に起こしたもので、目的はかつて中国の領土を不法に窃取した不名誉な歴史を書き換え、釣魚島が中国に属するという歴史的事実を否定することにほかならない。だがこうした企ては徒労で、無益である。「未だ曾て保有せざれば則ち給付すること能わず」、これはよく知られた法律の格言である。ある者が隣の家から1台の自転車をかっぱらえば、その息子が乗ろうと、彼本人が乗ろうと、自転車が彼のものでない事実は変えられないようなものだ。日本側が釣魚島などの島嶼をどんなにたらい回しし、コネ繰り回そうとも、日本が中国の領土を占領した歴史的事実はいささかも変えられず、中国の釣魚島とその付属島嶼に対する領土主権はいささかも変えられない。

 いわゆる「島購入」をめぐって、日本側はさまざまの謬論〈でたらめな論調〉を持ち出し、人の目をくらまし、耳目を惑わそうとしている。本日は多くの日本問題と国際問題の専門家が在席されており、われわれは釣魚島の真実の身分と来歴を一段とはっきりさせ、世界に釣魚島問題の真相を知らせなければならない。日本の謬論はまとめれば、主に四つになる。

 一、釣魚島「無主地」論。これはまったくでたらめな話である。大量の文献史料が示しているように、釣魚島などの島嶼は中国人が最も早く発見、命名、利用したものだ。15世紀以前から、わが国東南沿岸の商人、漁師たちは、釣魚島などを航海の目印にし、これらの島嶼とその付近海域で生産活動に従事していた。早くも明代初期に、釣魚島などの島嶼は中国の沿岸防備当局の管轄範囲に入っていた。この点については、日本の近代以前の関係史料もはっきりと認めている。釣魚島は古くから、中国に属しているというのは空言ではなく、証拠がないのではなく、動かぬ証拠は山ほどある。

 二、中日間に「領土係争は存在せず」論。日本は甲午戦争を利用して釣魚島を不法に窃取した。第二次大戦終結後、釣魚島とその付属島嶼は「カイロ宣言」と「ポツダム宣言」に基づいて中国の版図に戻った。1951年、日本は米国などと「サンフランシスコ条約」を一方的に結び、琉球列島(現在の沖縄)を米国の管理に委ねた。1953年、米国が支配する琉球列島米国民政府は管轄範囲を勝手に拡大し、中国領土の釣魚島とその付属島嶼をその中に押し込んだ。1971年、日米両国は「沖縄返還協定」において、釣魚島などの島嶼を勝手に「返還領域」に入れた。中国政府は中国の領土をひそかに授受する日米両国のこうした行為に当初から断固反対し、認めていない。歴史を覆すことは許されない。日本が中日間に釣魚島をめぐる紛争があることを否定するのは、世界の反ファシズム戦争の勝利の成果を公然と否定するもので、戦後の国際秩序に直接挑戦するものである。

 三、中日に領土係争棚上げ問題で「共通認識〈合意〉は存在せず」論。1972年の中日国交正常化及び1978年の平和友好条約締結の交渉過程において、両国の先輩指導者は大局に目を向け、「釣魚島問題をそのままにし、今後の解決に待つ」ことで重要な共通認識を得ている。中日国交正常化のとびらはこれによって開かれ、中日関係は40年にわたる大きな発展を遂げ、東アジア地域は40年にわたる安定と安寧を手に入れた。いま日本当局が両国のかつての共通認識をあくまでも否定するのは、国家としての最低限の誠意と信義に欠けており、中日両国の政治的相互信頼の基盤を著しく揺るがした。

 四、政府が「島購入」に乗り出すのは「やむを得ない」論。日本側は、政府が「購入」したのは石原による「購入」が中日関係にもたらす被害を回避するためで、釣魚島のいわゆる「平穏、安定」を維持するためだと言っている。これはまったくの言い逃れと口実にすぎない。我々がみている事実と結果こうだ。石原がまず舞台を整え、「購入」の茶番劇を演じ、続いて日本政府が「まるで琵琶を抱え顔を半分隠すようにして」登場し、石原と唱和して「二人羽織」を演じた。目的は、ほかでもなく釣魚島問題での日本側のいわゆる「法理上の地位」を強めることにある。日本政府の弁解を信じるとすれば、日本の主人はいったい誰なのか、我々は誰を相手にすればよいのかと問わざるを得ない。日本側にこんなに引っかき回されて、どうして釣魚島の「平穏、安定」があるのか。

 今年4月に日本が「島購入」の騒ぎを起こして以来、党中央、国務院の指導者は事の成り行きを非常に重視し、何度も重要な指示を出すとともに、日本側への突っ込んだ働きかけを行った。胡錦涛主席、温家宝総理ら中国の指導者はさまざまな場で、日本側にわが方の厳正な立場を表明し、日本側が事態の重大性を十分認識して、釣魚島問題を慎重かつ適切に処理するよう求めた。わが国外交部と駐日大使館は日本側に繰り返し、集中的に申し入れを行い、日本側が一切の一方的行動を直ちに停止し、対話と協議によって意見の食い違いを管理・制御する正しい軌道に戻るよう求めた。

 9月10日、日本政府がわが方の度重なる厳重な申し入れを顧みないで「島購入」を発表すると、中国側は強力な対応をとった。外交部がいち早く厳かな声明を発表し、楊潔篪部長が直ちに中国駐在日本大使を呼んで強く抗議した。同時に、わが駐日大使も東京で、日本側に厳重な申し入れを行った。数日来、全人代外事委員会、政協全国委外事委、全国青連〈中華全国青年連合会〉、全国学連〈中華全国学生連合会〉なども次々に声明を発表、国防部報道官が談話を発表し、日本政府のこの悪質な行為を一斉に非難した。

 これと同時に、中国政府は釣魚島に対する中国の立場を示し、強める一連の措置を講じた。まず、「中華人民共和国領海及び接続水域法」に従って、釣魚島とその付属島嶼の領海基点・基線を画定、発表した。これは「国連海洋法条約」の関係規定にかなったことだ。本日未明、国連常駐中国代表李保東大使は潘基文国連事務総長に、中国の釣魚島とその付属島嶼の領海基点・基線の座標表と海図を寄託した。領海基点・基線の発表は国家の管轄海域確定の前提であり、これにより「条約」の規定に基づいて領海、排他的経済水域及び大陸棚を確定することができる。これはわが国の釣魚島に対する主権および近海海域の主権的権利の管轄権を守る一層明確な法的根拠を提供している。本日、中国海監の船舶艦隊が釣魚島海域に到着して、巡航による権利維持のための法執行を行ったが、これは領土主権を守るもう一つの強力な措置である。

 このほか、わが国は釣魚島とその付属島嶼に対し常態化した監視モニタリングを行うことを宣言、中央テレビ局は釣魚島と周辺海域の気象予報および海洋環境予報を発表し始めた。これらの措置はすべてわが国の主権的権利を宣言し、強化するものである。

 この数日間に打ち出された一連の重大な対抗措置はわが国の釣魚島に対する主権を広げ、中国の領土主権の侵害を企てる日本側の怪気炎に打撃を与えた。次の段階で、われわれは事態の進展に基づき、真っ向から強力な措置をとって、国家の領土主権を守っていく。

 友人、同僚の皆さん。

 私は本日の座談会が「団結奮闘し、主権を守る」をテーマにしたことを称賛する。釣魚島情勢の最新の変化に対して、われわれは信念を固めるべきだ。祖国が日一日と繁栄と強大化に向かい、中国の国際的地位が日進月歩で向上し、中華民族が他人に侮られた時代はとうに過ぎ去ったことをみるべきだ。われわれは団結を保つべきだ。近代史において、中国が日本にさんざん侵されたのは、当時の国家が四分五列し、ばらばらの砂のようだったからである。今日の中国は昔と比べものにならず、われわれが心を一つにし、衆志、城を成すようにしさえすれば、誰もわれわれの頭上で粗暴に振る舞うことはできず、外からのいかなる挑発も思い通りにならない。われわれは奮闘努力し、われわれ自身のことを一層しっかりやり、祖国を一層強大に建設すべきである。これは国家の主権を守り、外からの侵害を打ち砕くための堅固な基礎である。

 最後に、私はもう一度日本側に厳粛に告げる。中日関係の今日の局面をもたらした責任は完全に日本側にあり、中日関係が今後どうなるかも日本側によって決まる。中日国交正常化後40年間、中国は常に中日関係の大局を重んじ、双方の矛盾と意見の食い違いを適切に処理してきた。しかし中日関係の発展は中国の一方的努力だけでは不可能で、日本側は中国の領土主権を損なう一切の行動を直ちにやめ、早急に双方の共通認識〈合意〉と了解事項に立ち返り、早急に交渉による係争解決の軌道に戻らなければならない。中国側は決して日本側による釣魚島の不法占領といわゆる「実効支配」を認めることはなく、日本側が釣魚島に対していかなる一方的行動をとるのも決して容認することはない。国家の領土主権を守る中国政府と人民の意志と決意は確固たるもので、いかなる力によっても揺るがすことはできない。

 ご静聴ありがとうございました。