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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日中第三国市場協力フォーラム 李克強・国務院総理スピーチ

[場所] 
[年月日] 2018年10月26日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

尊敬する安倍晋三首相,御来場の皆様方,この度,安倍晋三首相と共に,初となる日中第三国市場協力フォーラムに出席することができたことを,非常に喜ばしく思います。ここに,中国政府を代表し,フォーラムの開催に対し心からお祝い申し上げます。遠路はるばる御来場いただいた方々,実際は,多くの方が近隣からいらっしゃっていますが,ここにいるゲストの皆様に対し,熱烈な歓迎の意を表したいと思います。

今年は中国改革開放40周年であり,日中平和友好条約締結40周年でもあります。日中双方は,条約締結の精神にのっとり,双方の関係の発展を推進し,実務レベルの協力を進めることを望んでいます。中国側はまた,一層開放を拡大し,日本側と手を取り合って協力し,共同で努力し,再び正しい軌道に戻った日中関係を維持するという基礎の上,引き続き邁進し,日中間の実務的協力においても,新たな発展の勢いや成果を挙げていきたいと思います。

実務協力は日中関係の「バラスト」であり「推進器」であります。我々が参加した会場の周囲には多くの展示パネルが設置されており,安倍首相とも,先ほど入口においていくつかのパネルを見学させてもらいました。パネルの一つ一つが生き生きとした事例を示しており,日中双方が協力の基礎,協力のポテンシャル,協力の将来性があることを意味しています。これは日中のビジネス界が共同で努力した結果です。

今日二国間は3000億米ドルの貿易規模を有しています。これはサービス貿易を含まない数値であります。また,日本対中投資は累計1000億米ドル超に上ります。その理由は,本日このフォーラムに御参加いただいている,1000名以上の日中のビジネス界の皆様,そして皆様に代表される日中両国の関係各所の方々が共同で努力した結果です。私もまた,より一層協力を推進したいという皆様の強い思いを感じました。

本年5月に私が日本を訪問した際,安倍晋三首相との間で,共同で第三国市場を開拓していくとの共通認識を得ました。実際,我々は第三国市場において既に多くの協力を行ってきています。先ほど見たパネル展示においても,日中双方のいくつかの大企業,基幹産業分野においては元請け下請けの関係であり,新エネルギー分野においては共同融資の関係であることが展示されていました。更に多くのパネル展示を見たり,説明を聞く機会は無かったですが,第三国市場において,私たちの協力方法・モデルが多岐にわたることは想像に難くありません。これは日中間において既に確実に密接な経済貿易協力関係が形成されていることの証左と言えるでしょう。面白いのは,我々が本日開催しているのは第三国市場協力フォーラムであり,これは一つの願いを表すものであります。すなわち,日中双方が第三国において,悪質な競争をせず,相互補完性を十分に生かし,更なる協力の可能性を切り拓いていくことを表明するものであります。先ほどいくつかの紹介例を見ましたが,双方が共同出資した事例もあれば,双方が各自の優位性を用い,相互補完関係により,プロジェクトが第三国においてwin-win-winとなった事例もあります。

これは確かに,我々に対し日中協力により広い幅を与えるものであります。逆に言うと,我々双方の協力が一層深まり,一層緊密度が増せば,第三国市場を開拓するうえでの我々のポテンシャル,あるいは能力といったものが,ますます大きくなるだろうと私は思います。中国は巨大なグローバル市場であります。昨日もこの場で話をしましたが,中国は世界最大の発展途上国であり,日本は世界的に上位の先進国であります。日中間の相互協力は,強い相互補完性を持ち,より広範なグローバルな可能性を有します。中国は,この改革開放40周年を記念する節目にあたって,新たな対外開放策をさらに拡大していきます。繰り返しになりますが,日本の企業,日本のビジネス界が中国に来て投資・貿易を行うことを歓迎します。

中国の市場は,日本企業の発展を利するものであります。我々はイノベーション対話を立ち上げましたが,イノベーション協力において,より大きな市場が必要とされているのは誰もが知っているところであります。なぜなら,市場によってイノベーション協力を促すことができ,市場のニーズはイノベーション推進者に対して,更なる要求を行うことができるからであります。

中国政府としては,日本政府と互いに歩み寄ることを望んでいます。まずは,我々自身が中国というこの地において,一層のビジネス環境の最適化を図っていくことが求められるでしょう。今後,費用削減,行政手続き簡素化,税率軽減に力を入れていき,一層公正なる監督管理を推進していきます。知的財産権保護も同様です。二国間の通貨スワップなどの金融協力を通じ,双方企業に円滑なサポートを与え,協力していく所存です。また,我々の協力を通じて,世界に対し,自由貿易は公正な貿易の前提であり,公平な貿易は引き続き自由貿易の発展を推進していくものである,というメッセージが届けられることにも期待します。貿易の発展は,人々の福利改善,戦争回避,平和維持に利するものであります。

中国はまた,日本と共に,歴史を鑑とし,未来へ向かうとの精神をもって,日中関係の持続的な平和・友好を推進していくことを望んでいます。我々は引き続き,人的往来,特に若者世代の交流を拡大していきます。これらはいずれも,双方の市場協力に,より広い見通しを提供するものであります。なぜならば,より多くの良質な人的資源,購買能力を持つ消費者を有することになるからです。中国は世界における最大の発展途上国であり,経済の発展,人々の生活改善は依然として中国政府の筆頭任務であります。我々は中国経済の中・高速成長を引き続き維持します。我々の経済発展モデルは変化しつつあります。中国経済は長期的なファンダメンタルズでは良好であります。短期的な小幅変動については引き続き,ばらまき政策をせず,「ターゲット・コントロール」,「臨機応変なコントロール」を強化し,予期調整,微調整を強め,中国経済が長期的に良好状態を維持します。特に中国経済における新しいエネルギーは今まさに高速成長しており,実際,日中協力にとっても,新たなチャンスを生み出しています。

御来場の皆様方。40年来,日本のビジネス界は中国の改革開放プロセスに深く関与しており,中国の発展に対し重要な貢献をし,また同時に,発展のチャンスと利益をともに分かち合ってきました。日中のビジネス界が手を取り合うことを望むとともに,今ここで一堂に会し,肩を並べて座している皆様方が,市場においても手を取り合い,より大きな協力の可能性を切り拓き,より多くの実りある成果を生み出してくれることに大いなる期待を寄せています。

皆さんありがとう。