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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本国政府と中華人民共和国政府との間の海上における捜索及び救助についての協力に関する協定(日中海上捜索救助(SAR)協定)

[場所] 中国・北京
[年月日] 2018年10月26日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

日本国政府及び中華人民共和国政府(以下「両締約国政府」という。)は、海上における人命の安全を確保し、及び海上における捜索救助活動の効率を更に向上させるため、改正された千九百七十九年の海上における捜索及び救助に関する国際条約に基づいて、次のとおり協定した。

   第一条

 両締約国政府は、この協定に従い、これまで行ってきた捜索救助活動と同様の捜索救助活動を行うとともに、これをより効果的なものとするため、双方の能力に応じて更に緊密な協力を行う。

   第二条

 いずれの一方の締約国政府も、いかなる者又は船舶の遭難警報を受信した場合においても、当該者又は船

舶に対し、その国籍若しくは地位又は発見されるときの状況にかかわりなく必要な援助が与えられることを確保するために緊急措置をとらなければならない。

   第三条

1 両締約国政府は、前条に規定する緊急措置をとるに際して、必要な場合には、当該緊急措置に関する情報(遭難者及び遭難船舶についての関連情報を含む。)を相互に通報しなければならない。

2 1の通報については、次の機関を通じて行う。

 (1)日本国については、国土交通省海上保安庁

 (2)中華人民共和国については、交通運輸部中国海上捜索救助センター

3 1の通報を行うに当たり、2に規定する一方の締約国政府の機関は、必要な場合には、最も迅速で効果的な捜索及び救助の方法を検討するため、2に規定する他方の締約国政府の機関と調整を行う。

   第四条

 両締約国政府は、第一条の規定を実施するため、協議の上、その実施方法を定めることができる。

   第五条

1 両締約国政府は、国際法及びそれぞれの国において施行されている関係法令に従ってこの協定を実施する。

2 この協定のいかなる規定も、日本国又は中華人民共和国を締約国とする他の現行の二国間又は多数国間の国際約束に基づくそれぞれの国の権利及び義務に影響を及ぼすものではない。

3 この協定のいかなる規定も、海洋法並びに沿岸国及び旗国の管轄権の性質及び範囲に関するそれぞれの締約国政府の現在又は将来の主張及び法的見解を害するものではない。

   第六条

 この協定の適用又は解釈に関して生ずる問題は、両締約国政府の間の協議によって解決する。

   第七条

 この協定は、両締約国政府の間の合意によって改正し、又は補足することができる。その改正又は補足は、両締約国政府の間の外交上の公文の交換によって確認された後に効力を生ずる。

   第八条

1 両締約国政府は、この協定の効力発生のために必要な国内手続を完了した旨を外交上の公文により相互に通告する。この協定は、双方の外交上の公文が受領された日のうちいずれか遅い方の日に効力を生ずる。

2 この協定は、三年間効力を有するものとし、次の(1)又は(2)に規定する場合を除くほか、その効力は、自動的に三年間ずつ延長される。

 (1) 両締約国政府が別段の合意をする場合

 (2) 一方の締約国政府が他方の締約国政府に対して、書面によりこの協定の終了を希望する旨を通告する場合。この場合には、この協定は、当該他方の締約国政府がその通告を受領した日の後六箇月で終了する。

3 この協定の終了は、両締約国政府による別段の合意がある場合を除くほか、既にこの協定に従って行われており、かつ、この協定の終了の時に完了していないいかなる海上における捜索救助活動に対しても影響を及ぼすものではない。

 以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けてこの協定に署名した。

 二千十八年十月二十六日に北京で、ひとしく正文である日本語及び中国語により本書二通を作成した。


日本国政府のために

中華人民共和国政府のために