データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 「三か国+X」協力に関するコンセプトペーパー

[場所] 中国・古北水鎮
[年月日] 2019年8月21日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

1 背景

 中国,韓国及び日本は,1999年にマニラで開催されたASEAN関連首脳会議の際に 三か国の首脳か初めて集って以来,政治,経済,社会及び持続可能な開発をはじめとする幅 広い分野において協力を進展させてきた。2018年5月の第7回日中韓サミットにおいて,三首脳は,地域における協力を深化・拡大させるために,一層努力するとのコミットメントを新たにした。この観点から,持続可能な地域開発のために,「三か国+X」という第 3国における日中韓協力のモタリティを探求する意図を共有した。

 アジアにおける多数の途上国の存在及びアジアが直面する不均等かつ不十分な開発とい う喫緊の問題に鑑みれば,第 7 回日中韓サミットにおいて確認されたこれまでに成し遂げられた前向きな進展に基づいて,日中韓協力を向上するために新たな分野及びモデルを追求することが不可欠である。「三か国+X」のモダリティは,特に三か国が他国と共有することができる多くの成功体験及び知見を有する分野において探求するに値する。

2 目標

 地域の内外における持続可能な共通の発展を促進するための共同の取組の中で,三か国間の相互理解を構築し,日中韓協力を推進し,また,相互補完性を醸成すること。

3 原則

 i 自発性

  協力案件は,受益国の需要に基づくものとし,自発的に包括的な協議を通じて実施される。

 ii 対等性

  協力のモデルは,共有利益のために三か国及び受益国の間で共同で決定される。

 iii 開放性

  協力は,三か国以外の国及び地域並びに新たな分野及びモデルに対して開放される。

 iv ウィン・ウィン

  協力は,互恵,共通の発展及びウィン・ウィンの成果のために共同の参加を通じて実施される。

 v 透明性

  協力は,三か国の内外の人々に対して透明性のある形で実施される。

 vi 持続可能性

  協力案件は,環境及び経済効率性にしかるべき考慮を払い,持続可能的なものとする。

4 主要な協力分野

 i 持続可能な経済

  三か国は,それぞれの経済的な強みに基づいて,地域の内外の共通の発展を促進する方 途を探求することができる。

 ii 生態及び環境保全

  三か国は,環境分野において緊密かつ効率的な協力を実施してきており,海洋プラスチックごみ,生物多様性,大気汚染及び気候変動を含む環境分野における地域及び国際協力 の促進において重要な役割を果たし続けていく。

 iii 防災

  三か国は,災害が多発する国として,防災分野において豊富な経験及び先進技術を有している。三か国は,地域の国々が防災,減災及び災害救援能力を向上させること並びに防 災に関する公教育及び意識を向上させることを支援する方途を探求することができる。

 iv 保健

  三か国は,広範囲で実務的な交流を通じ,感染症及び高齢化に関する協力のための強固な基盤を築いてきた。三か国は,既存の協力を元にして,この分野における他国との協力 を探求することができる。

 v 貧困削減

  三か国は,それぞれ中国の「東アジア貧困削減イニシアティブ」,日本のマイクロ・ファイナンスを通じた貧困削減協力及び韓国の「3つのP(人,平和及び繁栄)政策」に反 映されているとおり,パートナー国の実際の需要に基づいて自国の貧困削減に関する経 験を地域の国々と積極的に共有してきており,この分野における他国との協力を探求す ることができる。

 vi 人的交流

  三か国の政府及び日中韓協力事務局は,国民間の相互の理解及び信頼を深化させるため,多様な人的交流,文化交流及び教育交流のプログラムを主催してきた。三か国は,こ のような経験を元にして,他国との協力を探求することができる。

 vii その他の分野

  三か国は,適当な場合には,他の分野における「三か国+X」のモダリティを探求する意図を共有する。

5 実施方法

 協力のモデル及び案件は,対話と協議を通じて,三か国の関係省庁が外務省と連携しつつ,探求し,及び決定する。必要に応じて,共同ワークショップ,人的交流及び訓練を開催する ことができる。「三か国+X」協力案件を探求し,実施する際に,日中韓協力事務局も,適当な場合には, 役割を担う。

6 タイムライン

 i 関心を有する国に,本コンセプト・ペーパーを適時に配布する。

 ii 第8回日中韓サミットにおいて,アーリー・ハーベストとなる案件を特定すべく取り組む。