[文書名] 日中平和友好条約交渉(第3回会談−その1)
極秘
総番号 (TA) R053132 5301 主管
78年 月24日20時07分 中国発
78年07月24日21時32分 本省着 アジア局長
外務大臣殿 佐藤大使
日中平和友好条約交渉(第3回会談−その1)
第1396号 極秘 大至急
(限定配布)
往電第1384号に関し
24日午後3時より5時20分まで約2時間20分間(35分間の休けい時間を含む)にわたり第3回会談を行なつたところ概要次のとおり。(会談の場所及び出席者は第1回会談に同じ)
冒頭韓副部長より、本日はどちらの側から先に発言することとするか御意見をうかがいたいと述べたので、本使より先回の約束もあるので日本側より発言したい旨述べ、先ず本使より発言を行なつた。同発言内容次のとおり。
先週22日の第2回会談において韓副部長が発言された中国側の見解について、本日私より再び日本側の考え方を簡けつに述べさせていただく。
先ず、わが国の外交政策において、日米関係が特別の地位を占めており、今後とも日米安保条約体制をけん持して行くことについて中国側がこれを理解する旨述べられたことを評価する。同時に、わが国が、何れの国とも友好関係を維持発展させるよう努力することを基本的外交方針としていることについても中国側がこれを日本政府の願望として理解する旨述べられたことをわれわれは重視し上述の努力を続ける所存である。
わが国が、日米関係をわが国の対外関係の基じくとするといつても、わが国が日中関係を取るに足らぬものなどと考えていないことは申すまでもない。わが国は、日中間の平和友好関係の維持をわが国の外交における重要なハシラの一つと考えている。そうであるからこそ、日本政府は、日中平和友好条約を一日も早く締結することを念願し、そのために努力していることは御存知の通りである。
わが国が何れの国とも友好関係を維持発展させるよう努力するという政策をとつていることを日本政府は、未だかつて等きよ離外交などというこ称で述べたことはない。日本の外交においても現実には重点のおき所があることは論をまたないところである。また、わが国が日米安保条約体制をけん持する必要性を考える場合に、日本に対する現実のきよういが何処から来るかということについては何らのげん想もいだいていない。
韓副部長は、日中平和友好条約交渉に当り、重要なことは、日中双方の共通点を確認することであると述べられたが、われわれはこれに全く同感である。は権を求めず、また他のいかなる国あるいは国の集団がは権を求める試みにも反対であるとう立場は日中双方の共通点であるとわれわれは考える。更に韓副部長はは権を求めるものがあれは反こうするよりほかはないと述べられた。われわれはそれを否定しない。ただ、は権を求める試みや行為に反対の立場をとるに当つては日本も中国もそれぞれの立場から対処するものであり、日本と中国が一致して共同行動をとらねばならないというものではないと考える。
なお、われわれは韓副部長より、ソ連に対する態度について中国の経験に基づく見解を参考のために述べられたことに感謝する。
日本もソ連との関係については長年にわたつて種々の経験をもつている。日本の対ソ政策についての考えは、第1回会談において述べたところで御理解いただいたと思う。それは決して軟弱な態度をとつているわけではなく個々の問題についてき然たる態度でわが国の正しい主張を続けて行く方針である。しかし、それは対決政策ではなく、ぜぜ非々をはつきりさせるコレクトな関係の維持を図るということである。日本がソ連とコレクトな関係を維持することには反対していないという韓副部長の御発言に留意する。
最後に韓副部長は、22日の御発言の最後の部分において、私の21日の発言の中に「何回も『特定の第三国』という言ばがあつた」と前置して、「『特定の第三国』という代名しを使用する必要がない」と言われた。この点についての見解を以下に申しのべる。
私は、21日の発言において「特定の第三国」という言ばを3回使つた。その意味するところは、それぞれ全く同一ではない。すなわち、
私は、「日中平和友好条約は『特定の第三国』を敵視してこれに対して結ぶものではない」と言つた。このことは、この条約が、日中共同声明にもあるとおり、もつぱら日中間の平和友好関係を強固にし、発展させることを目的とするものであることから導びかれる当然の帰結である。この部分は「特定の第三国」という言ばを「いずれかの第三国」と置きかえても構わない。
次に私は、「日中両国がは権を確立しようとする試みに反対するものであるとの中しように対してはこれを否定する」と言つた。ここで「特定の第三国」というのは、ズバリ言えばソ連のことである。韓副部長の言われるように「この条約はソ連を名指していない」のであるから、私は、「そのような中しように対してはこれを否定する」と言つた。
第三国に私は、「は権反対は、決して予め『特定の第三国』を指しているものではない」と言つた。「は権反対は、いかなる国あるいは国の集団であれ、は権の確立を試みるものがあればこれに反対であることをせん明するもの」であるから、ある第三国を特定しておいて、その国のは権確立の試みにだけ反対の立場をとればよいというものではない。
(了)
写手交済(24日21時42分)