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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日中平和友好条約交渉(第4回会談−1)

[場所] 北京
[年月日] 1978年7月25日
[出典] 情報公開法に基づき公開された外務省資料
[備考] 
[全文]

極秘

総番号 (TA) R053421  5320  主管

78年  月25日19時05分  中国発

78年07月25日20時24分  本省着  アジア局長

外務大臣殿  佐藤大使

日中平和友好条約交渉(第4回会談)

第1407号 極秘 大至急

(限定配布)

往電第1396号及び同第1398号に関し

 25日午後3時より4時45分ころまで約1時間45分間(休けい時間45分を含む)にわたり、第4回会談を行つたところ、概要次のとおり。(場所及び出席者は第1回会談に同じ。)

1.先ず、本使より、本日は私が会議を主さいする番であるが、韓副部長より何か先に発言すべきことがありやと質ねたところ、韓副部長は、「日本側から先にどうぞ」と述べたので、本使より別電のとおりの発言を行なつた。

2.本使の発言の後、韓副部長は休けいを提案したので休けいに入り、約45分間休けいした。

3.休けい後、韓副部長は、次のとおり述べた。

(1)先程の大使の発言を聞いて双方は主要な問題においてきよ離がまだ非常に大きいと感じた。大使の発言の中の論点には、私たちの同意できないところが多い。本日の大使の発言に対しては、私たちは詳細に検討した上で次の会談において私たちの意見を述べたい。

(2)次に非公式な意見交換を行なうとの大使の提案については、われわれは考慮できる。しかし、かかる非公式な意見交換は、主要な問題すなわち反は権問題をめぐつて行なうべきである。前文と他の条項については、この主要な問題である反は権問題が解決した後、または少なくとも解決の目途がついた後に討議したいと考える。

(3)その他、個人としての提案であるが、自分は明日午後4時に外交活動の先約があるので、明日は、1日休会とすることを提案する。

4.これに対し本使より、韓副部長は、午前中は病院におられる必要があり午後はそういうことならば、韓副部長の言われるようにするよりし方ないと述べたところ、韓副部長は、ここで日本側と交渉を行なつている以上、他の国のし事を全くしないことは他の国との関係上都合が悪く、また、入院以来担当のし事をすべて同僚に代わつてやつてもらつてきたが、同僚もみんな多ぼうであるので、すべてを任すこともできず、多少は自分も働かなくてはならない旨述べた。よつて本使より、韓副部長の提案に同意する旨述べた。

5.次回の会談については、27日午後3時から行うことに双方で合意した。

6.また、本使より、再度他の条項について非公式に意見交換することに中国側の同意が得られなかつたが、日本側代表団には条約の関係者もいるので、中国側の関係者と意見交換を行なつてもらつて結構であると述べたところ、韓副部長は次のように述べた。

(1)先ほども述べたとおり、大使の非公式な会談を行なうとの提案は考慮でき、また理解もしている。日本側は他の問題の解決を希望しているが、主要な問題である反は権の問題が解決できなければ他の問題の解決にプラスにならない。従つて既に述べたとおり非公式な意見交換も主要な問題である反は権問題をめぐつて行なうべきである。

(2)われわれは中国外交部と日本外務省の同僚の間で絶えず接触して意見交換を行なうことをかん迎する態度を一かんしてとつている。今まではこの面での接触は少なかつたが、双方で努力してこの面の改善を行ないたい。ドウノワキ公使をはじめ北京の日本大使館の方とアジア司、国際条法司、領事司との間に意見交換を行なつていることを承知している。これは結構なことである。東京の中国大使館でも日本外務省と行なつていると思うが、まだ不十分である。今後とも、いろいろなルートを使つて双方が接触することはよいことであり、双方の理解とよしみを増進することになる。

7.最後に本使より、明日のことについては団長である本使と韓副部長とは休けいすることとするが、他の団員に何らかの必要があれば、先ほどの韓副部長の発言の中にあつたように双方で接触を保つために明朝、日本側から王ギョウウン副司長またはテイミン日本処長代行に連絡するかも知れない旨述べたところ、韓副部長は明日は全員休会とすることを自分は提案したものであるが、後刻日本側に新しい考えがあれば聞く用意がある旨述べた。以上で会談を終了した。

(先方は明日は一切休会としたい希望が強いものと判断されたので、後刻当方より、明日は会合なしとすることで結構である旨連絡しておいた。)

(了)