[文書名] 日中平和友好条約交渉(第8回会談−1)
極秘
総番号 (TA) R055141 5443 主管
78年 月01日19時00分 中国発
78年08月01日20時18分 本省着 アジア局長
外務大臣殿 佐藤大使
日中平和友好条約交渉(第8回会談)
第1488号 極秘 大至急
(限定配布)
往電第1464号に関し
1日午後3時5分より5時7分まで(休けい65分を含む)第8回会談を行なつたところ概要次のとおり。(場所及び出席者は第1回会談に同じ)
1.先ず本使より、本日は私が主さいする番であるが、韓副部長から何か先に発言ありやと質したところ、韓副部長は「日本側から先にどうぞ」と述べたので、本使より別電のとおりの発言を行なつた。
2.本使発言の後、韓副部長は休けいを提案したのでこれに同意し、65分間休けいした。
3.休けい後韓副部長は次のとおり述べた。
(1)先ほど大使は長い発言を行なつた。われわれは大使の発言を詳細かつ真けんに聞いた。大使の提出された第3条第1文に関する新しい案文については、これは重要なものであるので本日は時間も足りないことでもあり、本日は話さないこととし、次回にわが方の意見を述べることにしたい。
(2)わが方は、昨日の会議において新しい案文を提出した。それは、つまり反は権条項の第1文を、「この条約は、は権を求めない第三国に対するものではない。」と書き換え、また、これをこの条項の末びにおくことである。この表現方法は、われわれが、日本側の意見を考慮し、日本側の立場を配慮して提出したものである。残念ながらわれわれのこの新しい案文は、日本側の理解と同意を得なかつた。
(3)大使は、わが方案文に同意できない理由をいろいろ述べた。大使がわが方案文に同意できないとする理由は、実を言うと成り立たないものである。実は、共同声明のかく度からみれば、われわれとしても、これ(中国側新提案)を決して理想的な案文であるとは思つていない。真に理想的なのは、やはりわれわれのもともと提出した案文である。
(4)私は、この前の会談で、再三、反は権条項における双方の意見の食い違いは重大で、原則的なものであると述べた。これは、文字上の表現の問題だけではないと述べた。本日の大使の発言は、私のこの考えを一層深めた。
(5)今回の新しい提案は、「特定の」を「いずれかの」にとりかえただけである。日本の新聞によれば、「特定の」の英訳は「SPECIFIC」となつているが、この「いずれかの」を英語に訳すとどうなるのか知りたい。
4.これに対し、本使より「その点についてはまだ考えていない」旨述べた。
5.韓副部長は、更に、次のとおり述べた。
(1)もし「いずれかの」を中国語で「任何一個」と訳すとこれは「特定の」と区別がなくなる。これは次回に話すこととしよう。
(2)私が再三強調し、また、これまで国家指導者も強調したことであるが、私たちの条約の中の主要な条項は反は権条項であり、この問題は、単なる文字上の表現の問題ではなく大局のかく度からまた政治のかく度からみるべきものである。
(3)今ばんは、日本大使館のえん会もあるので時間の関係上、本日の会談はこれまでにしたい。
6.次回の会談について韓副部長は明日午後3時から行うことを提案し、本使よりこれに同意した。
(了)