[文書名] 日中平和友好条約交渉(第11回会談−2)
極秘
総番号 (TA) R056009 5520 主管
78年 月04日18時25分 中国発
78年08月04日19時43分 本省着 ア局長
外務大臣殿 大使
日中平和友好条約交渉(第11回会談)
第1531号 極秘 大至急
(限定配布)
往電第1530号別電
はじめに、昨日の会談における韓副部長の御発言に関して、一点だけわれわれの意見を述べる。韓副部長は、日本の提案は、ソ連の圧力にくつぷくしたものであるとの趣旨を言われた。わが国の対ソ政策については再三にわたつて中国側に御説明したが、わが国が日中平和友好条約を締結するに当つて、ソ連の思わくを気にしたり、その圧力にくつぷくしたりすることはないことを、ここに再び明言しておきたいと思う。中国側において、日本がソ連を恐れてその思わくを気にしていると思い込まれ、日本側の発言や提案をその前提で理解されるということになると、われわれとしては、この交渉において共通点を拡大して双方とも満足のできる解決を見出すということが困難となると考えざるを得ない。
昨日、韓副部長は、中国側はちゆう心より条約の早期締結を希望していると言われた。日本側も、条約の早期締結を希望する点において、中国側になんらおとるものではない。日本側は、中国側と同様、日中共同声明を基礎として平和友好条約を早期に締結することが両国及び両国国民の利益に合致するものと確信している。このような立場に立ち、日本政府は、政治的かく度から大局に着がんし、双方の立場を平等にかつ十分にかん案した次の新提案を行なうこととした。
われわれの提案は、日本側条約案第3条第1文を、「この条約は、第三国との関係に関する各締約国の立場に影響を及ぼすものと解してはならない。」と代えるというものである。
第一に、日中両国とも独自の外交政策を有しており、互いにこれに干渉しないことは、これまでの会談において双方が確認したところである。日本側の新提案は、この点を明確に反えいせんとするものである。
第二に、わが国が何れの国とも友好関係を維持発展させるよう努力することを基本的外交方針としていることについては、中国側の御理解をいただけたものと考える。日本側は、この条約により日中両国それぞれの基本的外交方針が何ら影響されないことを明確にしたいと考える。
わが方の新提案は、中国側の考え方を十分そん重し、あわせて上述のわが国の考え方をも最小限満たすものとして、本国政府と当代表団の間でしん重かつ入念に検討の結果、得られたものである。
日本側は、反は権がソ連に対するものではないというようなことを言つてはいないし、今後とも言うつもりはない。ソ連であれ、他のいかなる国であれ、は権を求める国があれば、これに反対の立場を取るというのが日中共同声明にも明記された日中両国の立場であり、わが国のこの立場は不動である。本日のわが方の新しい提案は、このようなわが国の不動の立場を何ら変更するものではない。
以上、日本側の新提案について説明した。この案は、日本側として日中双方の立場を最大限かん案して作成したものであり、必ずや中国側の理解をいただけると考えている。中国側がこの案を真けんに検討され、これに同意されることを心から期待する。
(了)