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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日中平和友好条約交渉(第13回会談)

[場所] 北京
[年月日] 1978年8月7日
[出典] 情報公開法に基づき公開された外務省資料
[備考] 
[全文]

極秘

総番号 (TA) R056512  5578  主管

78年  月07日19時28分 中国発

78年08月07日20時49分 本省着   ア局長

外務大臣殿  佐藤大使

日中平和友好条約交渉(第13回会談)

第1569号 極秘 大至急

(限定配布)

本件交渉第13回会談は先方の要望により午後4時から開始され、途中休けいなしで同4時45分まで行なわれた。出席者は当方より通訳のみを伴う会談を提案したところ、先方は王ギョウウン副司長を帯同する旨回答越したので、当方はタジマ中国課長を帯同した。通訳は当方■■{2字黒塗り}、先方陸キ。同会談概要次のとおり。

1.本使より韓副部長のお身体の具合は、と問うたところ、同副部長は少々ひ労を感ずるだけである旨答えた。続いて本使より、ソノダ外務大臣の訪中を突然申し入れたにもかかわらず直ちに種々の御手配をいただき感謝する旨述べたのに対し、同副部長は、当然のことである、われわれ双方ともこれから準備でいそがしいですね、と答えた。

2.更に本使より次のとおり発言した。

(1)われわれはせつかく長いこと会談を重ねて来たのであるが、大臣訪中前につめられるだけつめたい。この前わが方の提出した案文について、中国側は種々問題点があり良い案ではないと述べられたので、わが方としては表現を修正した2の案文を改めて提出するので、中国側の御理解と御検討をいただきたい。(ここで貴電アジア局長第1044号御訓令の2案を読み上げ、その中国語訳文を先方に手交した。)本国政府としても、これを強く望んでいるので検討していただきたい。

(2)非常に残念なことは先日張コウ山が条約問題をとり上げて発言を行なつたので本国政府としては、中国案を考慮することが困難となつている。外部に、これが中国案だという形で出た以上、「特定の第三国に対するものではない」というのが日本案として新聞に出ているから中国側として取り上げられないと言われたのと同じように、わが方としても中国案として出たものを取り上げることには同じ困難が生じてしまつた。条約交渉の内容を外にもらされたことは非常に遺かんである。次に本国政府からは、本日更に訓令があるかも知れないので、明日も会談を続けることとしたい。

3.これに対し韓副部長は要旨次のとおり述べた。

大使の言われた第1の問題については、中国側は既に意見を述べてあり、中国案が比較的良いものであり、最も適当なものであると考えているが、日本側が更に2つの案を出された以上、それを検討する。

 第2の問題については、われわれは異る見方をもつている。第1に、張コウ山発言は中国案を公開したということと等しいことではない。第2に、中国の友人と日本の友人が互いに会う時に、日本側が条約問題を先に言い出す場合が非常に多い。その場合でも中国側は、簡単にしか話さないか、全く話さない場合もある。第3に、張コウ山は政府の役人でも外交官でもない。ただ、中日友協の副会長であるから、条約交渉に関心をもつており、何か言うことは避け難い。しかし張コウ山は外交部の役員ではないから条約交渉の細部まで知つているわけではない。ただ中央放送事業局々長であるから全然知らないと言うことも出来ない。大使は、この問題について非常に遺かんであると言われたが、我々は、日本側がわれわれの話し合つたことを早くもらしてしまい、困難を生じさせたと感ずることが多い。こういうことは、小川大使とも話合つたことがあるが、小川大使は致し方のないことであると述べていた。秘密を守れず秘密をもらしてしまうということは、日本側に回数も多いし、きわだつているといえる。まだ張コウ山は間違つたことを話したわけでもない。従つて、日本側でこの問題の取扱いが困難になつたり、遺かんに思うという理由はないと思う。私は毎日新聞を読み放送をきいているが、条約交渉の問題は日本の新聞や放送における報道が最も多く、この10数日来連日連やとりあげている。中国側は人民日報でも放送でも交渉内容を取上げていない。日本の新聞は、事実と無関係のもの、事実と異ること、推測等も多く報道している。しかし、われわれは大使に対してこの問題をとりあげたことはない。既にわれわれは、こういうことに習慣づいてしまつたということもあるから、大使に対して取上げたことは少い。こういう報道には、ねつ造もあり、例えば、1昨日の放送では、自分が発言していないことが発言したように報じられていた。従つて、この問題について、日本側が取扱いを困難にさせたとか、遺かんであると言われるのはその必要もないし、根拠もないと思う。

4.これに対し、本使より、自分はリ先念副総理が■■{2字黒塗り}に会つた時何も話されなかつたことを知つている。また、自分自身は条約交渉の内容について話したことはない旨述べたところ、韓副部長は、中国を訪問する日本の友人の方から条約のことを質問するので、何も話さないというわけに行かない、秘密保守に関しては日本側の方により困難があるように思う、われわれは慣れつこになつてしまつたので、これ以上はもう話さないと述べた。

5.よつて本使より、自分の方もこれ以上話さないが、ただ、交渉担当者としての自分が非常に困つたということは強調しておきたいと述べ、更に、明日の会談については、明朝あらためて連絡をとつて決めることとしたい旨述べたところ、先方は結構であると答え会談を了した。

(了)