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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日中平和友好条約交渉(第15回会談)

[場所] 北京
[年月日] 1978年8月10日
[出典] 情報公開法に基づき公開された外務省資料
[備考] 
[全文]

極秘

総番号 (TA) R057398  5665  主管

78年  月10日15時45分 中国発

78年08月10日17時02分 本省着  ア局長

外務大臣殿  佐藤大使

日中平和友好条約交渉(第15回会談)

第1617号 極秘 大至急

(限定配布)

往電第1613号に関し、

10日午前9時より12時まで3時間にわたり(30分の休けい2回含む。)18号賓館において第15回本使・韓念リュウ会談を行つたところ、主要点次のとおり。(出席者:日本側;本使、ナカエ、大モリ、ドウノワキ、タジマ、サイトウ(正)、東ゴウ、■■{2字黒塗り}、■■{2字黒塗り}、

中国側;韓念リュウ副部長、王ギョウウン・アジアし副し長、チンイ良国際条法し副し長、ショウフクキョウ国際条法し処長、テイ民日本処処長、王効ケン同副処長、ジョトン信同副処長、リュウガクウン副部長秘書官、陸き{前1文字ママ}日本処処員、ソン平日本処処員)

1.わが方案前文第3パラの国際連合憲章の原則のじゅん守に言及することについて先方より、国連憲章の原則を「共同声明の諸原則」とへい行することは好ましくない旨述べたので、わが方より右を別段落(新第4パラ)とし、「国際連合憲章の原則が十分にそん重されるべきことを確認し、」とする旨の新提案を行つたところ、先方これに同意した。

2.わが方がわが方案第1条(条約の目的)を維持すべきことを重ねて主張したところ、中国側は、わが方案第1条と中国側案第4条(協議条項)をともにさく除することを主張した。これに対し、わが方より、わが法案第1条をさく除する場合には、前文新第5パラと新第6パラの順序を入れかえかつ新しい第6パラを「両国間の平和友好関係を強固にし、発展させるため、」としたい旨述べたところ、先方はこれに同意すると述べた。

3.わが方は、わが方案第3条第1文(中国側案では第2条第1文)を独立した新しい条にすること、具体的にはこれをわが方現行案の新第5条とし、第5条を第6条とすることを提案したところ、中国側は、これを検討する旨述べた。

4.反は権条項の「反対する。」及び「反対である」との問題に関し、わが方より重ねて中国側の再考方を強く主張したのに対し、中国側より、第1に日中共同声明の日中両語テキストは当時専門家が真けんに検討して確立したものであり、第2にテキストは第三国語によつて修正してはならない、第3に「反対である」は「反対する」に比し意味に違いがあり共同声明より弱くなる等の理由を挙げて「反対する」とすることを強こうに主張した。これに対しわが方は、これを検討することを約した。

5.条約の有効期間に関し、中国側は、わが方案によれば、極たんに言えば条約発効後すぐにも廃案条項を採用すると1年で失効しうることになるので、中国側としては(イ)具体的な有効期間も定めず、かつ、廃棄条項も定めない規定ぶり、つまり、日本側から1975年に提示された条約案の関係部分を採用することとするか、あるいは(ロ)廃棄条項を入れるならば、有効期間を規定すべきであり、期間は、10年で短かいならば、20年でも30年でもよい旨述べた。これに対し、わが方は検討の上、中国側の1975年の第1次案によることに同意することとした(必要な修文は加わえる。)

6.双方が合意した部分に関し、わが方より、日本文と中国文の表現の対照や所要のレダクションを行なわれめるため起草委員会を作ることを提案したところ、中国側はこれに同意し、わが方からタジマ、東ゴウ及びサイトウ、中国側からテイ民、ショウフクキョウ、王効ケンが出席し、午後2時より作業を開始することとした。

(了)