データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本国とポーランド人民共和国との間の通商に関する条約

[場所] 東京
[年月日] 1958年4月26日
[出典] 外交青書3号,204−207頁.
[備考] 
[全文]

 日本国及びポーランド人民共和国は、

 両国間の通商関係の発展を促進することを希望し、

 千九百二十二年十二月七日に署名された日本国波蘭国間通商航海条約が効力を失つたことを考慮し、

 千九百五十七年二月八日に署名された日本国とポーランド人民共和国との間の国交回復に関する協定第五条に定める通商に関する条約を締結することに決定し、そのため、次のとおりそれぞれの全権委員を任命した。

 日本国

   日本国外務事務次官 山田久就

 ポーランド人民共和国

 日本国駐在ポーランド人民共和国特命全権大使 タデウス・ゼブロウスキー

 これらの全権委員は、互にその全権委任状を示し、それが妥当であると認められた後、次の諸条を協定した。

第一条

 各締約国は、輸入若しくは輸出について又はそれらに関連して課されるすべての種類の関税及び課徴金に関し、それらの関税及び課徴金の賦課の方法に関し、並びに貨物の通関に関連する規則、手続及び課徴金に関するすべての事項について、他方の締約国を原産地とする産品又は他方の締約国に向けられる産品に最恵国待遇を与えるものとする。

第二条

1 いずれの一方の締約国の産品も、一又は二以上の第三国の領域の通過輸送の後にも、他方の締約国の領域への輸入に際しては、それらの産品が当該一方の締約国の領域から直接輸入された場合に課される関税又は課徴金より高い関税又は課徴金を課されないものとする。

2 前項の規定は、第三国の領域の通過の間に積替、再包装及び倉庫における保管を経た産品にも適用される。

第三条

 各締約国は、一時的にその領域に持ち込まれ、かつ、その領域から持ち出される他方の締約国の次の物品に対し、現行の国内法令に従つて、関税及び課徴金の免除について最恵国待遇を与えるものとする。

(a) 商品見本

(b) 試験用及び実験用の物品

(c) 展覧会、共進会及び見本市に出品される物品

(d) 組立工が設備の組立及び取付のために用いる器具

(e) 加工され、又は修理される物品及び加工又は修理の材料となる物品

(f) 輸出され、又は輸入される商品の容器

第四条

 各締約国は、輸入品について又はこれに関連して課されるすべての内国税その他すべての種類の内国課徴金に関し、並びにその締約国の領域内における輸入品の国内販売、販売のための提供、購入、分配又は使用に影響を及ぼすすべての法令及び要件に関するすべての事項について、他方の締約国の産品に最恵国待遇を与えるものとする。

第五条

1 いずれの一方の締約国も、いずれかの産品の他方の締約国の領域からの輸入又は同領域への輸出に対し、同様の産品のすべての第三国の領域からの輸入又は同領域への輸出に対して同様に課していない禁止又は制限を課してはならない。

2 前項の規定にかかわらず、いずれの一方の締約国も、対外財政状態及び国際収支を擁護するため輸入制限又は為替制限を課することができる。ただし、その制限が類似の事情においてすべての国に適用される場合に限る。

第六条

1 各締約国は、国家企業を設立し、若しくは維持し、又はいずれかの企業に対して排他的の若しくは特別の特権を正式に若しくは事実上与えるときは、それらの企業を、輸入又は輸出を伴う購入又は販売に際し、無差別待遇の一般原則に合致する方法で行動させることを約束する。

2 前項の規定は、それらの企業が、この条約の他の規定に妥当な考慮を払つた上で、前記のすべての購入又は販売を商業上考慮される事項(価格、品質、入手可能性、市場性その他購入又は販売の条件をいう。)に従つてのみ行うことを要求するものと了解される。

第七条

1 いずれか一方の締約国の国旗を掲げる船舶で、国籍の証明のためその締約国の法令により要求される書類を備えているものは、当該締約国の船舶と認められる。

2 いずれの一方の締約国の商船も、他方の締約国の商船及び第三国の商船と同様の限度においてかつ同様の条件で、外国との通商及び航海のために開放されている当該他方の締約国のすべての港、場所及び水域に出入し、及び停泊する権利を有するものとする。

3 いずれの一方の締約国の商船並びにその乗組員、旅客及び積荷も、他方の締約国の港、場所及び水域において、すべての事項に関し、当該他方の締約国及び第三国の商船並びにその乗組員、旅客及び積荷に与えられる待遇より不利でない待遇を当該他方の締約国により与えられるものとする。

4 いずれか一方の締約国の権限のある当局が発給した船舶の積量測度に関する証書は、他方の締約国の権限のある当局によつて、同当局が発給した証書と同等のものと認められる。

第八条

 前条の規定は、沿岸貿易には適用されないものとする。ただし、いずれか一方の締約国の商船が、他方の締約国の法令に従つて、外国から輸送する旅客若しくは積荷の全部若しくは一部を陸揚し、又は外国向けの旅客若しくは積荷のの全部若しくは一部を積載するため、当該他方の締約国の一の港から他の港へ航行することは、前記の沿岸貿易とはみなされないものとする。

第九条

 いずれの一方の締約国も、難破、海上損害又は不可抗力による寄航の場合には、他方の締約国の船舶並びにその乗組員、旅客及び積荷に対し、同様の場合に自国の船舶並びにその乗組員旅客及び積荷に与えると同一の援助及び保護並びに同一の特権及び免除を与えるものとする。それらの船舶から救い上げられた物品は、それが国内消費のために搬入されない限り、すべての関税を免除される。

第十条

1 両締約国は、一方日本国の自然人及び法人と他方ポーランド人民共和国の自然人及び法人との間で締結される商事契約から、又はそれらの契約に関連して生ずることのある紛争に関する仲裁判断を執行する義務を負う。ただし、仲裁による前記の紛争の解決が契約自体に、又は妥当な形式で作成された別個の約定に規定されている場合に限る。

2 仲裁判断の執行は、次の場合に拒否することができる。

(a) 仲裁判断が、その判断がされた国の法律により確定判決としての効力を生ずるに至らない場合

(b) 仲裁判断が、その判断の執行が求められる締約国の法律によつて許されない行為を当事者に義務づける場合

(c) 仲裁判断が、その判断の執行が求められる締約国の公の秩序に反する場合

(d) 仲裁判断が不利益に援用される当事者が、防禦することができる適当な時期に仲裁手続について通告を受けなかつた場合又はその当事者が、無能力者であつて正当に代理されていなかつた場合

3 仲裁判断は、その判断の執行が求められる締約国の法律に従つて執行されるものとする。

第十一条

 この条約のいかなる規定も、いずれか一方の締約国がその重大な安全上の利益の保護を目的とするいかなる措置をも執ることを妨げるものと解してはならない。

第十二条

1 この条約は、批准されなければならない。批准書は、できる限りすみやかにワルソーで交換されるものとする。

2 この条約は、批准書の交換の日に効力を生じ、五年の期間効力を有し、その後は、この条に定めるところにより終了するまで効力を存続する。

3 いずれの一方の締約国も、他方の締約国に対し六箇月前に文書による予告を与えることによつて、最初の五年の期間の終りに、又はその後いつでもこの条約を終了させることができる。

 以上の証拠として、各全権委員は、この条約に署名調印した。

千九百五十八年四月二十六日に東京で、英語により本書二通を作成した。

 日本国のために  山田久就

 ポーランド人民共和国のために  タデウス・ゼブロウスキー

合意された議事録

1 本日署名された日本国とポーランド人民共和国との間の通商に関する条約(以下「条約」という。)第六条の規定に関し、日本国全権委員及びポーランド人民共和国全権委員は、次のことを記録する。

 日本国全権委員は、日本国において現に施行されている法令の下においては、日本専売公社(塩、たばこ及び粗樟脳油を含む粗樟脳の取引を行う。)及び食糧庁(米、小麦及び大麦の取引を行う。)が同条にいう種類の企業に該当すると述べた。

 ポーランド人民共和国全権委員は、前記の言明を了承した。

2 条約第七条の規定に関し、日本国全権委員及びポーランド人民共和国全権委員は、次の合意に達した。

 同条の規定にかかわらず、いずれの一方の締約国も、自国の船舶及び隣接国の船舶に対し内水航行の特権を与える権利並びに海港を持たない隣接国の船舶に対し港の規制に関し特権を与える権利を留保することができる。

日本国のために  山田久就

ポーランド人民共和国のために  タデウス・ゼブロウスキー

千九百五十八年四月二十六日に東京で