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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本国とチェッコスロヴァキア共和国との間の通商に関する条約及び合意された議事録

[場所] 東京
[年月日] 1959年12月15日
[出典] 外交青書4号,281−285頁.
[備考] 
[全文]

 日本国及びチェッコスロヴァキア共和国は,

 両国間の通商関係の発展を促進することを希望し,

 千九百五十七年二月十三日に署名された日本国とチェッコスロヴァキア共和国との間の国交回復に関する議定書第五条に定める通商に関する条約を締結することに決定し,そのため,次のとおりそれぞれの全権委員を任命した。

日本国

日本国外務事務次官 山田久就

チェッコスロヴァキア共和国

日本国駐在チェッコスロヴァキア共和国特命全権大使 

             ドクトル・ラディスラフ・シモヴィッチ

 これらの全権委員は,互にその全権委任状を示し,それが妥当であると認められた後,次の諸条を協定した。

第一条

 両締約国は,それぞれの法令の範囲内において,かつ,最恵国待遇の一般原則に基いて,両締約国間の相互に有利な貿易関係を助長し,かつ,強化するためあらゆる努力を払うものとする。

第二条

1 各締約国は,輸入もしくは輸出について又はそれらに関連して課されるすべての種類の関税及び課徴金に関し,それらの関税及び課徴金の賦課の方法に関し,並びに輸入又は輸出に関連するすべての規則及び手続に関するすべての事項について,他方の締約国を原産地とする産品又は他方の締約国に仕向けられる産品に最恵国待遇を与えるものとする。

2 前項の規定は,いずれか一方の締約国が与える次の利益には適用しない。

(a) 国境貿易を容易にするため隣接国に与える利益

(b) 内国漁業の産品に与える利益

第三条

1 いずれの一方の締約国の産品も,一又は二以上の第三国の領域の通過輸送の後にも,他方の締約国の領域への輸入に際しては,それらの産品が当該一方の締約国の領域から直接輸入された場合に課される関税又は課徴金より高い関税又は課徴金を課されないものとする。

2 前項の規定は,第三国の領域の通過の間に積替,再包装及び倉庫における保管を経た産品にも適用される。

第四条

 一方の締約国の領域への又はその領域からの途中にある産品(原産地のいかんを問わない。)については,国際通過のため最も便利な経路により他方の締約国の領域を通過する自由があるものとする。

第五条

 各締約国は,輸入品について又はこれに関連して課されるすべての内国税その他すべての種類の内国課徴金に関し,並びにその締約国の領域内における輸入品の国内販売,販売のための提供,購入,輸送,分配又は使用に影響を及ぼすすべての法令及び要件に関するすべての事項について,他方の締約国の産品に対し,内国民待遇及び最恵国待遇を与えるものとする。

第六条

1 いずれの一方の締約国も,いずれかの産品の他方の締約国の領域からの輸入又は同領域への輸出に対し,同様の産品のすべての第三国の領域からの輸入又は同領域への輸出に対して同様に課していない禁止又は制限を課してはならない。

2 前項の規定にかかわらず,いずれの一方の締約国も,対外財政状態及び国際収支を擁護するため輸入制限又は為替制限を課することができる。ただし,その制限が類似の事情においてすべての国に適用される場合に限る。

第七条

1 各締約国は,国家企業を設立し,若しくは維持し,又はいずれかの企業に対して排他的の若しくは特別の特権を正式に若しくは事実上与えるときは,それらの企業を,輸入又は輸出に伴う購入又は販売に際し,無差別待遇の一般原則に合致する方法で行動させることを約束する。

2 前項の規定は,それらの企業が,この条約の他の規定に妥当な考慮を払つた上で,前記のすべての購入又は販売を商業上考慮される事項(価格,品質,入手可能性,市場性その他購入又は販売の条件をいう。)に従つてのみ行うことを要求するものと了解される。

第八条

1 各締約国は,その領域に輸入されるか,又は一時的にその領域にもち込まれ,かつ,その領域から持ち出される他方の締約国の商品見本及び広告資料に対する関税及び課徴金の免除について,千九百五十二年十一月七日にジュネーヴで締結された商品見本及び広告資料の輸入を容易にするための国際条約又はこれを修正する条約の該当規定に定められた原則に,両締約国がその条約の締約国である限り,従うものとする。

2 各締約国は,一時的にその領域に持ち込まれ,かつ,その領域から持ち出される他方の締約国の次の物品に対し,現行の国内法令に従つて,関税及び課徴金の免除について最恵国待遇を与えるものとする。

(a) 試験用及び実験用の物品

(b) 展覧会,共進会及び見本市に出品される物品

(c) 組立工が設備の組立及び取付のために用いる器具

(d) 加工され,又は修理される物品及び加工又は修理の材料となる物品

(e) 輸出され,又は輸入される商品の容器

  第九条

1 チェッコスロヴァキア共和国において,外国の自然人及び法人と商事契約を締結する権限を与えられる者は,独立の法人たる外国貿易公団及びチェッコスロヴァキアの法律により外国貿易を行う権限を与えられるその他の独立の法人(以下「チェッコスロヴァキア共和国の法人」という。)に限られる。

2 両締約国の領域の間の貿易に従事する日本国の自然人及び法人並びにチェッコスロヴァキア共和国の法人は,その貿易に関連する取引から生ずる紛争の解決のため,それぞれチェッコスロヴァキア共和国及び日本国の領域内で裁判所の裁判を受け,及び行政機関に対して申立をする権利に関し,内国民待遇を与えられる。

3(1) 両締約国は,一方日本国の自然人及び法人と他方チェッコスロヴァキア共和国の法人との間で締結される商事契約から,又はそれらの契約に関連して生ずることのある紛争に関する仲裁判断を執行する義務を負う。ただし,仲裁による前記の紛争の解決が契約自体に,又は妥当な形式で作成された別個の約定に規定されている場合に限る。

(2) 仲裁判断の執行は,次の場合に拒否することができる。

(a) 仲裁判断が,その判断がされた国の法律により確定判決としての効力を生ずるに至らない場合

(b) 仲裁判断が,その判断の執行が求められる締約国の法律によつて許されない行為を当事者に義務づける場合

(c) 仲裁判断が,その判断の執行が求められる締約国の公の秩序に反する場合

(d) 仲裁判断が不利益に援用される当事者が,防禦することができる適当な時期に仲裁手続について通告を受けなかつた場合又はその当事者が,無能力者であつて正当に代理されていなかつた場合

 (3) 仲裁判断は,その判断の執行が求められる締約国の法律に従つて執行されるものとする。

第十条

1 いずれの一方の締約国の商船も,他方の締約国の商船及び第三国の商船と同様の限度において,かつ,同様の条件で,外国との通商及び航海のために開放されている当該他方の締約国のすべての港,場所及び水域に出入する権利を有するものとする。これらの船舶は,当該他方の締約国の港,場所及び水域において,海運及び航海に関するすべての事項に関して内国民待遇及び最恵国待遇を与えられる。

2 前項の規定は,沿岸貿易には適用されないものとする。ただし,いずれか一方の締約国の商船が,他方の締約国の法令に従つて,外国から輸送する旅客若しくは積荷の全部若しくは一部を陸揚し,又は外国向けの旅客若しくは積荷の全部若しくは一部を積載するため,当該他方の締約国の一の港から他の港へ航行することは,前記の沿岸貿易とはみなされないものとする。

第十一条

 各締約国の政府は,他方の締約国の政府がこの条約の運用に影響を及ぼす問題に関して行う申入れに対して好意的考慮を払わなければならず,また,協議のため適当な機会を他方の締約国の政府に与えなければならない。

第十二条

 前諸条のいかなる規定も,いずれか一方の締約国がその重大な安全上の利益の保護を目的とするいかなる措置をも執ることを妨げるものと解してはならない。

第十三条

 この条約のいかなる規定も,いずれか一方の締約国が関税及び貿易に関する一般協定又はこれを修正し,若しくは補足する多数国間協定の締約国として有するか又は有することがある権利及び義務については,両締約国が当該協定の締約国である限り,影響を及ぼすものではない。

第十四条

1 この条約は,批准されなければならない。批准書は,できる限りすみやかにプラーグで交換されるものとする。

2 この条約は,批准書の交換の日に効力を生じ,五年の期間効力を有し,その後は,この条に定めるところにより終了するまで効力を存続する。

3 いずれの一方の締約国も,他方の締約国に対し六箇月前に文書による予告を与えることによつて,最初の五年の期間の終りに,又はその後いつでもこの条約を終了させることができる。

 以上の証拠として各全権委員は,この条約に署名調印した。

 千九百五十九年十二月十五日に東京で,英語により本書二通を作成した。

日本国のために

山田久就

チェッコスロヴァキア共和国のために

ラディスラフ・シモヴィッチ

合意された議事録

 本日署名された日本国とチェッコスロヴァキア共和国との間の通商に関する条約に関し、日本国全権委員及びチェッコスロヴァキア共和国全権委員は、次のことを記録する。

1 日本国全権委員及びチェッコスロヴァキア共和国全権委員は、いずれの一方の国の政府も、現行の関係国内法令の下において、他方の国の領域を原産地とする産品の輸入のため領事仕入書を要求していないこと、及び現状においてはこのような要求を新たに行う意向を有しないことを確認した。

2 日本国全権委員及びチェッコスロヴァキア共和国全権委員は、各政府が、原産地表示及び特許、商標、意匠その他すべての種類の工業所有権に関する事項について、国際的に承認された公正な慣行に従うこと、及び両国間の通商に有害な影響を及ぼすことがあるすべての慣行を防止するため他方の政府と協力することを確認した。

3 日本国全権委員及びチェッコスロヴァキアの共和国全権委員は、チェッコスロヴァキア共和国から日本国に輸入される産品についての船積の時期とは、その産品が日本国への輸出のためチェコスロヴァキア運送取扱機関の手を離れた日をいうものであることを確認した。

日本国のために

山田久就

チェッコスロヴァキア共和国のために

ラディスラフ・シモヴィッチ

千九百五十九年十二月十五日に東京で