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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本国とグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の文化協定及び交換公文

[場所] 東京
[年月日] 1960年12月3日
[出典] 外交青書5号,283−286頁.
[備考] 
[全文]

 日本国政府及びグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国政府は、

 友好的交流と協力により、自国において相手国の知的、芸術的及び科学的活動並びに歴史及び生活様式ができる限り十分理解されることを助長するため、文化協定を締結することを希望して、

 このため、次のとおりそれぞれの全権委員を任命した。

 日本国政府

    外務大臣 小坂善太郎

 グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国政府

    日本国駐在連合王国特命全権大使

        サー オスカー・チャールズ・モーランド

 これらの全権委員は、互いにその全権委任状を示し、それが良好妥当であると認められた後、次の諸条を協定した。

第一条

 両締約国は、大学教職員、教員、学生、研究員、専門家並びに文化的及び科学的機関の構成員の両国の領域間における交流を助長し、かつ、各締約国は、自国の領域内の大学その他の教育機関において、相手国の言語、文学、歴史、地理、芸術及び考古学並びに相手国に関するその他の問題についての教授その他の教員の職及び講義の創設及び拡充を奨励するものとする。

第二条

 各締約国は、自国の領域内における他方の締約国の文化施設の設立及び発展のためできる限りの便宜を与えるものとする。ただし、このような施設の設立及び発展に関しては、その領域における法令の一般的要件に従うものとする。「文化施設」とは、講義、講演、演奏会、展覧会、図書館施設、音楽図書館、レコード図書館及びフィルム・ライブラリーの諸手段により、この協定の一般的目的の実施に専念する団体又は施設を含むものとする。

第三条

 各締約国は、自国の領域内において、他方の締約国の国民が修学、技術的訓練又は研究を行なうことができるように、これらの者に奨学金を与えるための方法を研究するものとする。

第四条

 両締約国は、この協定を実施するため、両国の文化的、科学的、教育的及び専門的団体の間における密接な協力を奨励するものとする。

第五条

 両締約国は、一方の締約国の領域内において与えられる学位、資格証書その他の証明書が、修学上の目的及び適当な場合には職業上の目的のために、他方の締約国の領域内において与えられるこれに相当する学位、資格証書その他の証明書と同等の価値を認められるための限度及び条件を研究するものとする。

第六条

(a) 両締約国は、次の諸手段により、相手国内において自国の文化が一層理解されるように、できる限りの便宜を相互に与えるものとする。

(i) 書籍、定期刊行物、地図及び教材

(ii) 講演及び演奏会

(iii) 美術展覧会その他の展覧会

(iv) 演劇

(v) ラジオ、レコードその他の機械的複製手段

(vi) 文化的、科学的又は教育的性質を有する映画

(b) 各締約国は、他方の締約国の国民又は団体により製作された文学的、芸術的又は科学的内容の著作物の翻訳又は複製を奨励するものとする。

(c) 各締約国は、自国の領域内において、他方の締約国の国民に対し、博物館、図書館その他資料編集施設の利用についてできる限りの便宜を与えるものとする。

第七条

(a) この協定を適用するため、二の混合委員会を一は東京に他はロンドンに設置するものとする各混合委員会は、五人の委員、すなわち、東京においては委員長を含む三人の日本国の委員及び二人の連合王国の委員、ロンドンにおいては委員長を含む三人の連合王国の委員及び二人の日本国の委員で構成する。

(b) 日本国政府は、両混合委員会の日本国の委員を任命するものとし、連合王国外務省は、連合王国政府の権限のある各省の同意の下に、両混合委員会の連合王国の委員を任命するものとする。

(c) 各締約国は、両混合委員会の自国国民を任命する条件を定めるものとし、かつ、委員代理を任命する権限を有するものとする。

第八条

 各混合委員会は、この協定が効力を生ずる日から二年以内に会合し、その後は必要に応じ会合するものとする。ただし、少なくとも二年に一回は会合するものとする。

第九条

 各混合委員会は、特別の問題に関し、議決権を有しない顧問として個人の出席を要請する権限を与えられるものとする。

第十条

 各混合委員会は、それぞれの手続規則を採択するものとする。

第十一条

 混合委員会の主たる任務は、両国間の文化関係の検討を行ない。かつ、この協定の適用に関し、両締約国の考慮を求めるため勧告を行なうものとする。

第十二条

 この協定において、

(i) 連合王国に関し、「領域」及び「国」とは、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国をいい、

(ii) 連合王国に関し、「国民」とは、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国に通常居住する連合王国及び植民地の市民をいう。

第十三条

 この協定のいかなる規定も、いずれか一方の締約国の領域において施行されている外国人の入国、居住及び出国に関する法令に従う個人の義務に影響を与えるものとみなされてはならない。

第十四条

 この協定は、批准されなければならない。批准書の交換は、ロンドンで行なわれるものとする。この協定は、批准書交換の日の後十五日で効力を生ずる。

第十五条

 この協定は、最小限五年間効力を有する。その後においても、いずれか一方の締約国がこの期間の満了の少なくとも六箇月前にこの協定の廃棄を通告しないときは、この協定は、いずれか一方の締約国が他方の締約国に廃棄を通告した日から六箇月の期間が満了するまで引き続き効力を有する。

 以上の証拠として、前記の全権委員は、この協定に署名調印した。

 千九百六十年十二月三日に東京で、ひとしく正文である日本語及び英語により本書二通を作成した。

日本国政府のために

小坂善太郎

グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国政府のために

O・C・モーランド

交換公文

 書簡をもって啓上いたします。本日署名されたグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国と日本国との間の文化協定に関し、本使は、連合王国政府が、同協定の範囲に属する措置を実施するため、適当な場合には連合王国政府の主たる代行者として行動するように英国文化振興会を指定することを提案する旨を閣下に申し述べる光栄を有します。これに関連して、日本国における英国文化振興会の活動は、日本国の現行の法令に従って行なわれるものと了解されます。

 本使は、日本国政府が前記の提案に同意されるときは、この書簡及びその旨の閣下の返簡がこの問題に関する両政府の合意を記録にとどめたものとみなすことを提案する光栄を有します。

 本使は、以上を申し進めますに際し、ここに重ねて閣下に向かって敬意を表します。

  千九百六十年十二月三日に東京で

                         O・C・モーランド

 日本国外務大臣 小坂善太郎閣下

 書簡をもって啓上いたします。本大臣は、閣下が本大臣に次のとおり通報された本日付けの閣下の書簡に言及する光栄を有します。

(連合王国側書簡)

 本大臣は、日本国政府が、閣下の書簡に盛られた提案に同意し、かつ、閣下の書簡及びこの返簡がこの問題に関する両政府の合意を記録にとどめたものとみなす旨の提案を受諾することを閣下に通報する光栄を有します。

 本大臣は、以上を申し進めますに際し、ここに重ねて閣下に向かって敬意を表します。

  昭和三十五年十二月三日に東京で

                     日本国外務大臣 小坂善太郎

 日本国駐在連合王国特命全権大使

    サー オスカー・チャールズ・モーランド閣下