データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日独共同コミュニケ

[場所] 
[年月日] 1962年11月8日
[出典] 外交青書7号,22−23頁.
[備考] 
[全文]

 池田総理大臣は、ドイツ連邦共和国政府の招待により、宮沢経済企画庁長官以下の随員を伴い一九六二年十一月五日から八日までドイツを訪問した。

 ドイツ滞在中、池田総理大臣はリュプケ大統領に謁見し、またアデナウアー首相、エアハルト経済大臣およびシュレーダー外相と会談した。

 これらの会談は友好的雰囲気のうちに行なわれ、国際情勢一般ならびに特に両国に関係の深い諸問題について隔意のない意見の交換が行なわれた。

 池田総理大臣とアデナウアー首相は、両国が自由と正義に基づく平和の達成を希求する点において理念を一にすることを再確認し、ひとしく自由世界の一員としてかかる目的達成のため緊密に協力することに意見の一致をみた。

 両国首相は、ドイツ・ベルリン問題が単に欧州のみならず自由世界全体にとって最も重要な問題の一つであり、本問題を解決することなくして世界の緊張緩和はありえず、その解決は民族自決と人権尊重の基礎の上でなされるべきことについて意見が一致した。また両国は核実験停止協定成立のため、ならびに一般に管理された軍縮のための協定が一日も早く締結されるよう努力が引続き行なわれるべきことについて意見が一致した。

 両国首相は、両国の貿易が着実に発展していること、および、右が両国共通の利益であることを満足の意をもって確認し、両国が従来から行なっている貿易関係強化の努力を無差別の原則および両国の通商自由化政策に従って継続すべきことについて意見が一致した。

 池田総理大臣は欧州経済共同体の発展に敬意を表するとともに欧州経済共同体が自由かつ開放的な通商政策を行ない、もって自由世界の福祉に寄与せんことを希望した。また、ドイツ連邦共和国政府は引続き欧州経済共同体が通商自由主義的な態度をとるよう努力すること、および同政府は全自由世界の貿易関係の緊密化に至ることあるべきあらゆる努力を歓迎するとの確言を与え、池田総理大臣はこれに満足の意を表した。

 さらに両国首相は日本のOECD参加が望ましいことを再確認するとともに、今後この方向に向って日本とOECDとの関係を強化すべきことにつき意見の一致をみた。

 両国首相は、逐年両国間の友好関係が強化されつつあることに満足の意を表するとともに、今後両国があらゆる分野において一層緊密に協力せんとの両国政府の共通の意思を確認した。

 また両国首相は、今回の池田総理大臣の訪問およびこれに先立つ大平外務大臣の訪独が日独の友好の絆を強化し、両国民の相互理解を深める上に多大の貢献をしたことに同慶の意を表明した。