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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ヴィリー・ブラント・ドイツ連邦共和国副首相兼外務大臣の日本訪問に関する日独共同コミュニケ

[場所] 東京
[年月日] 1967年5月12日
[出典] 外交青書12号,10−11頁.
[備考] 
[全文]

 ヴィリー・ブラント・ドイツ連邦共和国副首相兼外務大臣は、クラウス・シュッツ外務次官その他の高官を帯同して、本年度の日独外相定期協議を行なうため、五月九日東京に到着した。同副首相夫妻は、一〇日天皇・皇后両陛下に謁見を賜わった。同外務大臣は、また、一〇日佐藤総理大臣と会見し、一一日および一二日の両日三木外務大臣との間で協議を行なった。一一日には、事務レヴェルの協議も行なわれた。

 この第三回目の定期協議は、一九六六年一月椎名悦三郎前外務大臣のボン訪問に際して行なわれた協議に引きつづくものであり、極めて友好的な雰囲気のもとに行なわれた。両外務大臣は、アジアにおける情勢および欧州の諸問題につき意見を交換し、現下の世界情勢に関し、両国の共通の関心ある事項について討議を行なった。その際両外務大臣は、東西緊張緩和の趨勢に歓迎の意を表した。両外務大臣は、軍縮が世界的規模で行なわれるよう具体的な措置がとられることの必要性を強調した。両外務大臣は、核兵器の製造を行なわず、かつ、かかる兵器に対する管理権の取得を求めないことは、日独両国政府がつとに宣明している政策であること、および日独両国が原子力平和利用の分野において、すでに自発的に国際管理に服していることを指摘した。両外務大臣は、核兵器拡散防止条約について意見の交換を行ない、このような条約が核兵器非保有国による原子力の平和利用を妨げるものであってはならず、また真に世界平和の維持に有効な貢献を齎すものでなければならないことにつき意見の一致をみた。

 両外務大臣は、日独両国が、アジアおよび欧州における緊張緩和のための努力を強化継続し、諸問題の平和的解決につとめることにつき意見の一致をみた。

 三木外務大臣は、アジア太平洋地域諸国に連帯感と進取の精神が急速に高揚していることを指摘し、さらに同地域の開発途上にある諸国における生活水準の向上が、これらの国の政治的安定、ひいてはアジア太平洋地域および世界の平和の維持に大きな関係があることを力説し、これら諸国の援助に域外先進国であるドイツが協力することを希望した。

 ブラント外務大臣は、三木外務大臣の意見に同感の意を表し、ドイツができる限り、これら諸国の援助に協力する用意があることを明らかにした。ブラント外務大臣は、真の永続的な世界平和の確立のためには、ドイツの分割が平和的手段により、かつ民族自決の基礎に立って克服されることが不可欠の要素であるとの見解を強調した。三木外務大臣は、この見解に同感の意を表するとともに、日本政府が常に理解と同情をもってドイツ国民の国家再統一への願望を支持していることを確認した。

 この点に関し、ブラント外務大臣は、一九六七年四月一二日のドイツ連邦議会におけるドイツ政府声明に言及して、ドイツ民族がドイツの分割の期間中できる限り二つに分れて隔離されたままでいないようにすることがドイツ政府の意向であると述べた。同外務大臣は、また、ドイツ政府は、ドイツにおける暫定的措置は受け入れることができるが、このことは、ドイツにおける現状を承認するものと解されてはならない旨を強調し、同政府の関心は、政治的前提条件なしに、人道上の問題の軽減をはかることにあると述べた。

 両外務大臣は、さらに、両国間の関係の発展について討議し、前回の定期協議以来両国政府間において、両国が共通に関心を有する諸問題に関して接触と意見の交換が一層緊密かつ建設的に行なわれるようになったことを満足の意をもって確認した。両外務大臣は、両国間の経済関係が良好に発展してきており、この関係が両国経済界の指導者の接触および技術協力の強化により、更に増進されることを希望した。両外務大臣は、文化面における両国間の協力が、過去一年の間に、特に学術、技術および芸術の交流ならびに実習生、青少年の交換の分野において強化されたことを喜び、両国における文化会館の開設が両国の文化協力を一層緊密にするものであることを認めた。

 両外務大臣は、日独間の定期協議は、両国関係を相互理解と友好親善の基礎の上に発展させるに資するところが大であることにつき意見が一致し、今後もこれを積極的に進める希望を表明した。

 両外務大臣は本年八月の日本国の大使会議のさいに予定されている三木外務大臣のドイツ訪問にあたり、両外務大臣が再会する機会が与えられることを満足の意をもって確認した。