データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] キージンガー・ドイツ連邦共和国首相の日本訪問に関する日独共同コミュニケ

[場所] 
[年月日] 1969年5月21日
[出典] 外交青書14号,387−388頁.
[備考] 
[全文]

 クルト・ゲオルク・キージンガー・ドイツ連邦共和国首相は,日本国政府の招待により,夫人並びに政府高官を伴い,1969年5月17日から5月21日まで日本を公式訪問した。

 日本滞在中キージンガー首相夫妻は,天皇,皇后両陛下に謁見した。またキージンガー首相は佐藤総理大臣と会談し,友好と相互理解の雰囲気のうちに世界政治情勢一般および日独双方に関係のある諸問題に関し詳細にわたり意見の交換を行なつた。これらの会談は日独両国が極めて良好な関係にあることの証左であつた。

 両国首相は,両国の政策が自由の保持,国際協力の推進,特に,正義の原則に基づく平和の確保を主目的とする点で一致していることを確認し,この目的のために行なわれるあらゆる努力を歓迎するとともに,両国が相互の信頼と協力を通じてこの目的達成のために尽力するとの決意を表明した。また,両国首相は,厳重かつ効果的な国際管理下における全面完全軍縮の重要性を強調した。

 両国首相は国連憲章に規定されている民族自決の権利に基づくドイツ再統一の問題が基本的重要性を有しており,その平和的解決が欧州の恒久的,かつ,正義に基づく平和の達成のため不可欠であることについて見解の一致を見た。また両国首相は,ベルリンの自由が堅持されるべきことにつき意見の一致を見た。

 両国首相は,アジアにおける平和の保持と政治的経済的安定が世界平和の維持のために重要な意義を有していることを確認した。両国首相は,ヴィエトナムにおける平和回復のための努力を歓迎し,これが1日も早く達成されることを希望した。また両国首相は両国が今後とも可能なかぎりアジアにおける政治的および経済的安定に引き続き貢献する用意があることを確認した。

 両国首相は日独間の経済関係および文化交流の良好な発展に満足の意を表するとともに,貿易,発展途上国援助,科学,技術,航空,海運の分野において今後とも協力し,もつて国際経済関係の望ましい発展に寄与せんとの意図を表明した。

 両国首相は欧州経済共同体が欧州の発展に重要な貢献をなしていることを確認し,日本と欧州経済共同体の関係強化のための努力がいつそう促進せらるべきことについて意見の一致を見た。

 両国首相は日独間の友好関係がすべての分野においてますます緊密の度を加えつつあることに満足の意を表するとともに,今回のキージンガー首相の訪日が日独両国民の相互理解を増進し両国の友好関係を強化したことに同慶の意を表明した。

 キージンガー首相一行は京都を訪問した他,同首相一行のため計画された多数の催しに参加した。

 キージンガー首相は佐藤総理大臣をドイツ連邦共和国に招待し,佐藤総理大臣はこの招待を感謝をもつて受諾した。訪問の期日は追つて決定される。