データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] アンドレオッティ伊首相歓迎晩餐会における田中内閣総理大臣スピーチ

[場所] 
[年月日] 1973年4月23日
[出典] 田中内閣総理大臣演説集,131−132頁.
[備考] 
[全文]

 首相、令夫人、ならびにご列席の皆様

 今夕ここにアンドレオッティ首相ご夫妻をお迎えし、日本国政府を代表して歓迎のご挨拶を申し述べる機会を得ましたことは、わたくしの最も欣快とするところであります。

 特に、イタリアから初めて首相として今回御来日を得ましたことは、長い日伊友好の歴史に画期的なことでありまして、殊更うれしく思います。

 私ども日本人は、西欧文化の母胎であるローマの偉大さはもとより、特にルネッサンス時代の、輝かしい芸術作品を生み出したイタリアの天才、巨匠に対し、深い尊敬と親愛の情を抱いております。また、両国の間には、気候風土、国民性、経済、社会構造等の面で多くの類似性が存し、伝統的な親善関係によって結ばれております。

 しかしながら、現下の国際環境は、両国がかかる絆を単に二国間関係の拡大増進のためだけではなく、ひろく人類一般の福祉と進歩のために、活用することを要求しております。すなわち、貴国とわが国は地理的にこそ遠く相離れていますが、共に自由世界の一員として共通の価値観に支えられ、国際的な平和と安定の一層の促進に寄与する責任をになっております。そして、かかる両国の責任は、現下の国際社会においてますます増大しております。

 日伊両国は、従来から密接な協力関係を維持して参りましたが、かかる共同の責任を果たすためには、両国間の連帯を一層強化することが大事だと思います。したがって、日伊両国間の相互理解を更に進めることが必要であります。この意味においても、貴首相の今回の御訪日は、単に両国関係の増進にとどまらない大きな意議を有し、それにふさわしい成果を挙げるものと確信いたします。

 ここに盃を挙げて、大統領閣下、首相閣下御夫妻の御健康ならびにイタリア国民の御繁栄を祝したいと思います。