データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本・ECの共同コミュニケ

[場所] ブリュッセル
[年月日] 1973年5月4日
[出典] 外交青書18号,106−107頁.
[備考] 仮訳
[全文]

1. 大平正芳日本国外務大臣は,1973年5月4日,欧州共同体委員会を訪問し,フランソワーグザビエ・オルトリ委員長およびサー・クリストファー・ソームズ副委員長と会談した。

2. 3時間半にわたる率直かつ有益な意見交換を通じて,双方は,今日の世界が直面している多くの貿易及び経済の重要問題に対する建設的回答を見出すため,相互理解の精神に基づき,共に貢献することが欧州と日本にとり共通の利益であることを確認した。

3. 会談においては,日本および欧州からみた最近の世界情勢とその見通し,とりわけ欧州共同体の拡大及び世界における日本の経済力の急速な伸長等がとり上げられた。

4. 来たるべきガットにおける多角的貿易交渉が会談の主要焦点となつた。貿易拡大のための関税及び非関税障壁の将来の軽減並びにセーフガード問題が議題となつた。ガットの原則に従いかつ発展途上国を含む他の諸国に対する双方共通の責任に留意しつつ,右の多角的交渉を成功に導くよう努力することが何よりも重要であることが認識された。

5. 日本と欧州共同体との双務的関係について,双方の友好関係を強化し増進するために,両者間に存在する問題を相互間での話し合いにより解決すべきである旨意見の一致をみた。

6. 国際通貨及びエネルギー問題もとり上げられた。

7. 双方は,世界の繁栄を高め進歩への新らたな視界を開くため,他の諸国とともに行なう努力の一環として,日本と欧州共同体との間で緊密な接触を維持・強化することの必要性を十分に認識し,共通の関心事について建設的な話し合いを継続して行なうべきであることについて意見の一致をみた。このような対話は閣僚レベル及び事務レベルの双方で行なわれることとなり,サー・クリストファー・ソームズ副委員長の訪日が今秋に予定されている。

8. 大平大臣は,適当な早い時期に欧州共同体委員長が訪日するよう招待するとの日本国政府の希望を伝達した。オルトリ委員長は,これに感謝し,近い将来訪日したいとの希望を表明した。