[文書名] 日仏プレス・コミュニケ
田中角栄日本国総理大臣は,9月26日から29日までフランスを公式訪問した。
田中総理大臣は,滞仏中,ジョルジュ・ポンピドゥー・フランス共和国大統領と会見した。田中総理大臣は,また,ピエール・メスメール首相と会談した。
田中総理大臣は,さらに,フランス全国経営者連盟の首脳と会見した。田中総理大臣は,無名戦士の墓に花輪をささげた。
日本国総理大臣の共和国大統領及び首相との会談は,きわめて親密かつ相互信頼にあふれた雰囲気のなかで行なわれ,当面の主要国際問題及び日仏関係につきつっこんだ意見の交換が行なわれた。これらの会談の結果広範な見解の一致が明らかになるとともに,政治,経済,文化及び科学における両国間の関係を発展させ,かつ,これらの分野における相互間の協議を強化することを双方が希望する旨確認された。
双方は,いろいろな形態における工業諸国相互間の協力及び発展途上国のための工業諸国間の協力に関し意見の交換を行なつた。この点に関し,双方は,通商及び通貨に関する多国間交渉が成功することを共に希望していることを確認するとともに,欧州経済共同体と日本との間の協力が重要なることを強調した。双方は,また,資源・環境等の工業諸国が直面する新たな諸問題の解決に寄与するため協調することに合意した。
去る5月の両国外務大臣の会談の結果に基づき,かつ,日本政府の要請により,共和国大統領は,レオナルド・ダ・ヴィンチのモナ・リザを日本に貸し出し1974年春東京において展示することに決定した。内閣総理大臣は,感謝の念をもつてこれを受諾した。
内閣総理大臣は,日仏交流の促進のためにはフランスにおける日本研究を促進し,かつ,深めることが必要であることを確信し,フランスの大学及び高等教育機関における日本研究の促進に寄与するため,国際交流基金を通じ,三億円相当額の寄贈を行なうとの意向を表明した。共和国大統領は,田中総理大臣のこの発意が両国間の接触,相互理解及び知的交流を奨励するものとしてこれを歓迎した。
双方は,日本国総理大臣の訪問により両国関係の友好的性格が再確認されたことに満足の意を表するとともに,この訪問が両国関係を深めることに貢献したとの確信を表明した。
共和国大統領はこのような見通しに立つて,同大統領が来年4月に日本を公式訪問することをきわめて重要視している旨強調した。