データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日独プレス・リリース

[場所] 
[年月日] 1973年10月5日
[出典] 外交青書18号,40−41頁.
[備考] 
[全文]

 田中日本国総理大臣は,ブラント・ドイツ連邦共和国首相の招待により,1973年10月3日より,7日までの日程でドイツ連邦共和国を公式訪問中である。

 田中総理大臣は,滞在中ハイネマン大統領に謁見し,ブラント首相と会談した。大平日本国外務大臣は,10月5日,シェール独外相と第6回日・独外相定期協議を行なつた。

 会談は,両国間に存在する伝統的な友好関係を反映して,極めて良好な雰囲気のうちに進められ,国際情勢一般について率直な意見の交換が行なわれた。その際,田中総理大臣は欧州における平和秩序の確立と欧州統合を指向する連邦政府の努力に深い理解と敬意を示し,また,ブラント首相は,アジア・太平洋地域の安定と発展に寄与せんとする日本政府の努力を心から歓迎した。

 ブラント首相は,日本政府がドイツ民族の一体性に関する連邦政府の態度に理解と支持を与えていることに対して,田中総理大臣に感謝の意を表明した。

 田中総理大臣とブラント首相は,将来の欧州共同体と日本の関係及び先進工業民主主義国の緊密な協力について建設的な関心をもつて意見を交換した。田中総理大臣とブラント首相は欧州共同体,日本及び米国の共同のイニシアティヴに基づき,最近東京で開始された新国際ラウンドが成功裡に終結することが世界貿易の自由化の促進と拡大及び諸国民の生活水準の向上にとり重大な意義を有することにつき意見の一致をみた。田中総理大臣とブラント首相は,その際,発展途上国の利害に特別の考慮が払われなければならないことを強調した。また同時に国際通貨制度改革のための交渉が順調に進展する必要性が強調された。また経済分野のほか,文化,学術,科学技術,環境の諸分野での交流が益々発展しつつあることに満足の意が表明されるとともに,これらの諸交流および世界平和に寄与するための両国の協力が引続き強化される必要性が確認された。

 両国政府首脳は,世界的な需要の増大にかんがみ天然資源及びエネルギー供給問題の重要性を強調した。双方は天然資源及びエネルギー供給の分野における協力の可能性を検討する合同委員会を設立することに合意した。この委員会には後日関連産業の代表も招請されることができる。

 田中総理大臣は,両国間の相互理解を増進することを希望し,ドイツの大学における日本研究を一層促進するために,日本国政府が邦貨3億円に相当するドイツ・マルク貨の基金を国際交流基金を通じ,贈与する意図を表明した。

 田中総理大臣は,ブラント首相を日本への公式訪問に招待し,ブラント首相はこれを受諾した。訪日の期日は追つて決定される。