[文書名] フランソワ・グザヴィエ・オルトリ欧州共同体委員会委員長の公式訪問に際してのコミニュニケ
1 フランソワ・グザヴィエ・オルトリ欧州共同体委員会委員長は,夫人を伴い,日本国政府の招待により,1974年2月18日から23日まで日本国を公式訪問した。同委員長には,エミール・ノエル委員会事務総長,フェルナンド・スパーク委員会エネルギー総局長,ヴォルフガング・エルンスト委員会対外総局次長,フィリップ・ド・マルジュリ委員長官房長,ドニ・ゴティエ・ソヴァニャック委員長官房参事官が随員として同行した。
2 オルトリ委員長夫妻は,2月22日皇居において,天皇皇后両陛下に謁見を賜つた。
3 同委員長は,2月19日田中角栄総理大臣を表敬訪問した。総理大臣及び委員長は,双方が共通の関心を有する広範囲の問題につき,卒直,かつ,有益な意見交換を行つた。討議は最も友好的雰囲気の中で行われ,日本国と欧州共同体との間の友好関係を一層増進し,相互理解の精神にもとづき緊密に協力することが日本と欧州との共通の利益であるのみならず,世界経済全体の安定的発展に貢献するものであることが確認された。
総理大臣及び委員長は最近のエネルギー情勢,新国際ラウンドの推進の必要性,特に世界的レベルでのインフレとの闘いを含む国際通貨情勢及び開発途上国に厳しく生じている諸問題をとりあげた。
4 オルトリ委員長は,2月19日及び20日の両日大平正芳外務大臣と2回にわたり,また,三木武夫副総理・環境庁長官,福田赳夫大蔵大臣,中曽根康弘通商産業大臣,内田常雄経済企画庁長官及び森山欽司科学技術庁長官と会談を行つた。会談は,日本国と欧州共同体との関係及び双方にとつて関心のある多くの国際経済上の重要な問題につき行われた。
5 外務大臣及び日本側閣僚は,欧州共同体委員会が日本国と欧州共同体との関係を一層強化するため,共同体委員会代表部を東京に開設しようとしていることに満足の意を表明し,右設立のために必要なあらゆる援助を行う用意がある旨,委員長に確認した。
これとの関連において,欧州共同体委員会の代表部の設置ならびにその特権及び免除に関する協定は2月22日イニシアルされた。
6 双方は,昨年末のエネルギーに関する進展及びこれに関連して2月11,12及び13日にワシントンで開かれた会議の評価と今後の方向につき,有益な意見の交換を行つた。この点に関し,双方は短期及び長期のエネルギー問題の早期解決を図るため,産油国及び開発途上国との間で多角的な建設的話し合いが開催されることが望ましく,かかる分野における日本と欧州共同体との間の一層緊密な協調が必要であることに意見が一致した。
また,原子力を始めとする代替エネルギーに関する研究開発の推進につき,日本と共同体との間で一層緊密な協力を行うことの必要性につき意見の一致をみた。
7 双方は,現下の国際経済情勢の下にこそ国際協調の進展及び国際貿易の自由化の促進を図ることが更に必要であることを認め,昨年9月12日から14日まで東京で開催された閣僚会議において開始が決定されたガットの多角的交渉が出来る限り早急に効果的に行われるようにするとの意向が確認された。
8 双方は,日本国と欧州共同体の間の関係を緊密化し,通商をはじめとする経済関係の双方に満足の行く発展をうながすことにつき合意し,このため,双方の間の閣僚その他のレベルの間断なき対話を継続してゆくことで,意見の一致をみた。
9 委員長は,滞日中,東京及び名古屋において産業界及び金融界の代表的指導者と懇談の機会をもつた。
10 委員長は,委員長夫妻及び随員一行が滞日中極めて暖かい歓迎を受けたことに対し,日本国政府及び日本国民への深い感謝の意を表明した。