データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 三木内閣総理大臣によるニコラエ・チャウシェスク大統領(ルーマニア)歓迎晩餐会における挨拶

[場所] 
[年月日] 1975年4月5日
[出典] 三木内閣総理大臣演説集,158−160頁.
[備考] 
[全文]

 ニコラエ・チャウシェスク大統領閣下、令夫人並びに御列席の皆様

 本日ここに、ニコラエ・チャウシェスク・ルーマニア社会主義共和国大統領閣下御夫妻およびオプレア副首相閣下を含む御一行の御来臨を得て、歓迎の宴を開くことができましたことは、私の最も光栄かつ欣快に存ずるところであります。

 大統領閣下が国務多忙の折にかかわらず、日本を訪問する最初のルーマニア国家元首として、遠路日本を訪問されましたことに対しまして、私はここに、日本国政府および国民を代表して、大統領閣下、令夫人ならびに御一行の皆様に対し、哀心より歓迎の意を表するものであります。

 貴大統領閣下が国民の信望を一身に担って、対内的には、ルーマニア社会主義共和国の経済産業の発展とルーマニア国民の福祉増進に精力的に取り組まれ、対外的には、民族独立、主権尊重、互恵の原則を高くかかげられ、国際緊張緩和、軍縮および世界の平和と安全保障の実現のために、活発なる外交活動を展開されておられますことは、日本国民によく知られ、深い尊敬の念をもって迎えられているところであります。

 日本とルーマニアの関係は、一九五九年の外交関係回復後、順調に発展し、特に近年に至りまして、ますます緊密の度合いを深めてまいりました。経済面では、両国間にはすでに貿易支払協定および通商航海条約が締結されており、これらの法的基盤に基づき、両国間貿易は、着実に発展をとげ、ことに昨年は約二億四千万ドルと飛躍的な発展をみせました。両国間の経済協力も実をみのらせており、アレキサンドリア市でのボールベアリング工場建設における協力も順調に進んでいると聞いています。

 目下わが国は世界の多くの国と同様に、経済的不振に悩んでおりますが、経済回復の暁には、貴国との経済協力を一層進めたい希望であります。

 経済面のみならず、スポーツ面、すなわち卓球の分野でも両国間の協力は見事成功いたしました。本年二月のインドにおける世界卓球選手権試合の女子ダブルスでは、貴国のマリア・アレクサソドル選手と日本の高橋嬢のペアーがチャンピオンとなりました。この他にも、ルーマニア少年少女合唱団や民族音楽アンサンブルの本邦演奏等により、多くの日本国民が美しいルーマニアの合唱やメロディーに接することができました。

 このように、両国の各分野での多面的な相互交流は両国民の相互理解と相互信頼に貢献するところ大でありましたが、この度の貴大統領閣下御大妻の日本訪問は、それをさらに深めるものでありまして、両国友好関係史上に特筆すべき画期的出来事であります。これを契機に、両国の友好親善関係、経済関係が一層発展することを祈ってやみません。

 今日のように、相互依存関係がますます強まりつつある世界では、世界全体の平和と繁栄なくしては各国の平和と繁栄はあり得ません。したがって、体制の差を乗り越えて国家首脳間の接触・交流が進められることは、国際間の相互理解の増進、緊張の緩和、世界平和の実現に貢献するもの大であることを確信いたしております。

 歓迎の御挨拶を終えるにあたり、貴大統領閣下御夫妻の日本滞在が短期間ながらも、楽しく、かつ実り多いものでありますよう祈ってやみません。

 御列席の皆様

 ここに、私は皆様とともに、杯{サカズキとルビ}を挙げ、ルーマニア社会主義共和国の繁栄と二コラエ・チャウシェスク大統領閣下および令夫人、ならびに御一行の皆様の御健康と御多幸を祈念いたしたいと存じます。