データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本・EC経済関係についての伊東正義外相談

[場所] 
[年月日] 1980年11月17日
[出典] 日本外交主要文書・年表(3),1179−1180頁.外務省情報文化局『外務省公表集』昭和55年,177−178頁.
[備考] 
[全文]

一、政府は、近時日本と欧州共同体の関係が政治と経済の両面に亘って緊密の度を深めつつあることを歓迎するとともに、今後とも自由と民主主義の尊重という基本的価値観を共にする先進工業諸国間の協力関係の強化の見地から日本・欧州共同体間の関係の一層の緊密化を進めて参りたいと考える。政府は、この協力関係の緊密化を進めるに当り、貿易関係においては経済協力開発機構(OECD)の新貿易宣言において表明された開放的かつ多角的な世界貿易体制の維持・改善と保護主義的措置の回避への決意が指針となるべきであると考える。

二、他方、政府は、現在欧州共同体が現下の経済上の諸困難を背景として、本年の対日貿易不均衡および一部のセクターにおける対日輸入の急増が欧州共同体内で自由貿易の原則を脅かす動きを強める可能性があるとの懸念を有していることを認識している。

三、政府は、基本的立場としては、貿易収支はグローバルなベースで判断すべきであり、さらに貿易外収支等も含めて国際収支の問題を考慮すべきであると考える。また、政府は、現在欧州共同体が抱えている経済上の諸困難が日本の欧州共同体向け輸出の増加に起因するかの如き主張は根拠に乏しいものであると考える。

四、政府は、日本・欧州共同体間の貿易不均衡の問題は、基本的には欧州共同体の対日輸出の増大によって改善されるべきであり、このためには第一義的に欧州共同体の企業家の一層の努力が必要であるとの考えに変りはない。もし欧州共同体の企業家が日本市場への進出に困難を経験することがあれば、政府は欧州共同体委員会との間で、具体的にケースに即して、ともにこれを検討することが有益であると考える。

 他方、政府としては、世界経済の現状に鑑み、わが国の経常収支の赤字を急激に軽減することを特定の目的とする政策をとることは考えておらず、むしろ調和ある対外経済関係の形成に留意した経済運営に努めてきており、中・長期的にも基本的には内需中心の成長パターンをめざしてゆく方針に変わりはない。更に政府は、民間企業に対し、いかなる地域に対しても特定品目の集中豪雨的輸出が行われることのないよう勧奨していく所存である。

五、政府は、欧州共同体委員会が日本と欧州共同体との経済関係を一層開放的なものへ改善するため対日通商政策について新しいイニシアチブをとろうとしていることを基本的に評価するとともに欧州共同体委員会がその実現のための具体的な提案を行う場合にはこれを検討する用意がある。

六、政府としては今後、欧州共同体との協力関係を貿易の面のみならず産業協力、南北問題等貿易以外の面においても増大し、日本・欧州共同体間に一層幅広い関係を築いてゆきたいと考えている。