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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 安倍外務大臣のユーゴースラヴィア公式訪問に際しての共同新聞発表

[場所] ベオグラード
[年月日] 1983年6月8日
[出典] 外交青書28号,457−458頁.
[備考] 
[全文]

1.安倍晋太郎日本国外務大臣閣下は,ラザル・モイソフ=ユーゴースラヴィア社会主義連邦共和国外務大臣閣下の招待により,1983年6月6日から6月8日まで政府賓客として同国を訪問した。

2.安倍外務大臣は,6月7日モイソフ大臣と公式会談を行った。

3.両大臣は,極めて友好的な雰囲気の中で行われた会談において,日本とユーゴースラヴィア社会主義連邦共和国の関係があらゆる分野にわたって着実に発展してきたことに満足の意をもって留意するとともに,両国の有効・協力関係が今後ともますます増進するよう一層の努力を払うとの決意を表明した。

 両大臣は,両国の間の経済関係が一層発展する可能性を認識しつつ,共通の関心及び相互利益の存する分野における協力促進のため,今後とも相互に努力する必要があることを強調した。

4.両大臣は,共通の関心を有する国際問題につき双方にとって有益な意見の交換を行った。両大臣は,両国がそれぞれ自国の位置する地域及び世界の平和および安定のために払っている努力を互いに評価した。

5.両大臣は,現下の国際政治情勢が世界の人々の重大な関心を呼んでいるとの共通の見解を表明した。両大臣は,国際関係における武力による威嚇または武力の行使に反対である旨表明し,国際粉争は平和的手段によって解決されなければならないとの共通の信念を明らかにした。両大臣は,緊張の緩和及び真の軍縮の促進に賛同の意を表明するとともに国際の平和及び安全の維持に賛同すると述べた。両大臣は,世界全体が関心を有する国際的な諸問題につき国連憲章の諸原則に基づいた解決を見出すことが緊要であることを強調した。この関連で両大臣は,国連が果たしている重要な役割を強調した。

6.会談において両大臣は,すべての国,特に開発途上国に打撃を与えている現下の世界経済の諸問題を克服するための努力に対し特に留意した。ベオグラードにおいて開催中の第六回UNCTAD総会がこのために多大の貢献をするであろうとの希望が表明された。

7.両大臣は,世界経済の回復及び発展過程への復帰のためには,世界のすべての国が相互依存関係にあることを認識するとともに,新たな協調の方策を見出す努力を払うことが不可欠であるとの確信を強調した。

8.モイソフ大臣は,安倍大臣に対し第七回非同盟諸国首脳会議の結果を説明した。安倍大臣は,モイソフ大臣に対しウィリアムズバーグ・サミットの結果を説明した。

9.安倍大臣は,国際の平和及び安全の維持に占める独立の要因としての非同盟政策の重要な役割を強調するとともに,ユーゴースラヴィアの非同盟に基づく外交政策を高く評価した。

10.安倍外務大臣は,ユーゴースラヴィア滞在中,ミカ・シュピリャック連邦幹部会議長(国家元首)及びミルカ・プラニンツ連邦執行評議会議長(首相)を表敬訪問した。

 また,安倍外務大臣は,ヤンコ・スモーレ連邦執行評議会員兼日本・ユーゴースラヴィア経済混合委員会ユーゴースラヴィア側委員長と会談し,両者は,両国の間の経済関係の発展のための方策につき協議した。また,両大臣は,産業協力及び第三国市場における各種の協力を含む協力形態の多様化の可能性があることに留意した。

11.安倍外務大臣は,「ヨシップ・プローズ・チトー記念館」を訪問し,故チトー大統領の墓前に献花した。

12.両大臣は,安倍外務大臣の訪問が両国の間に存在する友好・協力関係及び相互理解の増進に著しく貢献したことに満足の意をもって留意した。

13.安倍外務大臣は,ユーゴースラヴィア社会主義連邦共和国政府の極めて暖かい歓迎と真心のこもった接遇に対し,深い感謝の意を表した。安倍外務大臣は,モイソフ外務大臣が適当な機会に訪日するよう招待し,モイソフ大臣は,この招待を快諾した。