データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 世界の平和と繁栄のための日独ステートメント

[場所] ボン
[年月日] 1985年5月1日
[出典] 外交青書29号,492頁.
[備考] 
[全文]

1.我々は,第二次大戦終結40周年に当たって,自由と民主主義及び平和の価値を再確認する。我々は,かかる価値を擁護し強化するため,1983年11月1日の東京声明を改めて確認すると共に,両国の交流及び協力を推進していくとの決意を新たにした。我々は,かかる両国の交流及び協力は,政治,経済,科学技術にとどまらず文化,芸術等幅広い分野において促進されるべきであることを確認する。

2.この関連で,我々は,日独両国間の交流と協力のための柱となる「ベルリン日独センター」が設立され,両国関係の質量両面における拡大発展のための礎が生まれたことを高く評価する。

 我々は,センターが東西にもまた南北にも開かれ,幅広い活動を展開していくことによって,世界の平和と発展並びに東西文化の創造的融合を目指した新たな時代精神の形成に貢献することを希望する。

3.我々は,会議において,科学技術の分野における日独協力の現状についても話し合った。その際,我々は,日独の研究機関の間に多数の接触があり,情報交換及び科学者の交流が増大していることを満足の意をもって確認した。エネルギー研究,生命科学,あるいは環境研究といった多くの現下のテーマに関して,数年来成功裡に協力が行われてきている。我々は,従来にも増して,かかる協力が共通の具体的な研究プロジェクトに結びつくよう希望する。

 我々は,研究成果が日独両国民の経済的・社会的利益のために実際に活用されることの必要性を強調した。我々は,日独両国の産業界がこれに対し積極的に関与することを希望する。将来における社会及び経済分野での挑戦は,国際的協力を共に進めることによってのみ解決されうるものである。日独両国は,主要先進民主主義国として,この面で特段の貢献を行うべき義務を負うものである。

4.我々は,現在高まりつつある保護主義を防遏し,自由無差別な貿易体制を再構築することの必要性につき合意した。その為にも我々はガット新ラウンドを可能な限り早期に開始するように共に努力することとし,サミットに向けて引き続き他の参加国と共に協議することとした。

 我々は,開発途上国における貧困と飢餓が人類及び文明に対する挑戦であること,また,世界の平和と繁栄を脅かすものであることを再確認し,両国が,今後とも協議の緊密化等を含め,開発援助の分野での協力を強化することにつき意見の一致をみた。