データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本・EC関係に関するEC外相理事会宣言

[場所] ルクセンブルク
[年月日] 1985年6月19日
[出典] 外交青書30号,465頁.
[備考] 仮訳
[全文]

 理事会は,日本の市場開放を図るために欧州共同体が長年に亘り多岐にわたって行っている要請に対して,日本政府とEC委員会の最近の協議の結果が再び非常に限られた進展しかもたらすことのできなかったことに懸念を表明した。

 かかる共同体の懸念に対して日本側が対応してきていないことは,多角的貿易体制の維持と強化のために日本が他の西側パートナーと明らかに共有している責任に照らして評価されなくてはならない。即ち日本はこの多角的貿易体制により,絶大な恩恵を受けてきたにも拘らず,これまでその経済力に見合うだけの貢献を行ってきていないわけである。

 理事会は,日本政府との間の協議が続けられ,かつ,日本がその市場開放策を推進している間は日本に対するガット手続きを凍結するとした共同体の決定を想起した。

 しかし,日本は,製品の輸入性向という観点からは,その貿易相手国との足並みを揃えずにいる。更に日本は貿易黒字及び経常収支黒字を増やしつづけており,これは今後予見しうる将来にわたり増えつづけるものと思われる。その結果,現下の多角的貿易体制はますます圧迫を受け保護主義の圧力は高まっている。

 従って,共同体は日本政府が発表した最近の種々の貿易政策,特に1985年4月9日の対策が早期かつ具体的に効果をあげるよう期待する。現在東京で策定中の3年間のアクション・プログラムも,日本への製品及び加工農産品の輸入を顕著かつ持続的に増加させるという明確に立証できる公約が盛り込まれていて初めて信任を与え得るものである。同様に,日本の金融市場の自由化及び円の国際化も重要である。

 理事会は,1985年秋に行う予定の討議及び決定のたたき台として,共同体と日本の関係の包括的見直しを適切な行動勧告とともに準備するよう委員会に対して要請する。