データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ボン大学訪問の際の竹下内閣総理大臣の挨拶

[場所] 
[年月日] 1988年5月6日
[出典] 竹下内閣総理大臣演説集,176−177頁.
[備考] 
[全文]

 フライシャワー学長

 ご列席の皆様

 本日、美しい緑に囲まれ、また数々の歴史的な人物を輩出した由緒あるボン大学を訪問し、ドイツの文化の香りに触れることができましたことは大きな喜びであります。私の今回のドイツ滞在は比較的短いものでありますが、貴大学の訪問を楽しみにしておりました。特に、この大学が私の母校である早稲田大学と姉妹校の関係にあることで特別の親しみを覚えるからであります。

 日独両国は伝統的な友好関係により結ばれております。この関係の維持、発展の原動力となりましたのは、正しく本日ここにご列席の皆様はじめ、学術・文化交流、文化行政に携わっておられる多くの方々の献身的な活動であったことは言を待ちません。なぜならば、相互理解の基盤となるのは、相手国の文化に対する理解及び寛容さであり、皆様はそれらを持ちあわせ、日独間交流を推進してこられたからであります。ここに皆様に心から感謝したいと思います。

 ここに列席されているボン大学の学生諸君に一言申し上げます。ボン大学では約五百人の学生が、現代日本の研究を重点項目としている日本研究所、あるいは昨年百年を迎えた東洋言語研究所において、日本語を勉強していると聞いています。あなた方は二十一世紀に向けてドイツを支える世代ですが、同時に二十一世紀に向けて日独関係を支える世代でもあります。あなた方が現在有している日本に対する関心と情熱を将来も持ち続け、日独両国民の相互理解の推進者になられんことを心から期待します。

 明一九八九年には、ボンは生誕二千年祭を祝います。このような歴史のある町ボンにおいて、ボン大学が学術と文化の殿堂として一層貢献されることを確信し、私の挨拶といたします。