[文書名] チャンピ・イタリア首相主催晩餐会における羽田内閣総理大臣の挨拶
チャンピ首相,ご列席の皆様
本日は貴国の政情が大変重大な局面に直面している時期にある中で,このように盛大な宴席を催して頂き,誠に感謝に堪えません。日伊両国は,ともに新たな体制の構築に向けた困難な過渡期にありますが,貴首相は,高潔な人格,豊かな識見をもって,政治・経済の両面で画期的な業績を残されました。私は,その卓越した指導力と行動力に最大級の敬意を表したいと思います。
また,同席されているベルルスコーニ次期首班候補に対しましては,過般の総選挙での勝利に対して心から祝意を申し上げます。今後先進国サミット等において,国際的な問題に緊密に協力して対処し,また,伝統的に良好な日伊関係を一層増進するために,ともに汗を流してまいりたいと思っております。
この五年間,我々は東西対立という戦後の国際構造が崩壊するのを目のあたりにし,友愛と連帯,相互理解と賢明な理性が決して無力ではなかったことに意を強くしました。しかし,恐怖や暴力から解放された新たな平和な時代を築くためには,更に幾多の試練を乗り越えねばなりません。次の世代により良い未来を保障することは,我々が背負っている重大な責務であります。
七月のナポリ・サミットは,まさにこうした観点からお互いに智恵を絞り,行動を起こすための重要な機会であります。この度貴国で行われるこのサミットに関し,貴首相との間で率直な意見の交換ができましたことを喜んでおります。
また貴国は,昨年十一月よりCSCEの議長国として,欧州建設の指導的役割を果たされています。我が国は,強力で安定した欧州,開放的で未来志向的な欧州ができることを強く希望し,このために,貴国が今後も積極的な役割を担っていかれることを願っております。
未来への挑戦の時期にあるのは,日本も含めたアジア・太平洋地域も同様であります。ここで重要なのは,相互依存関係がますます深まっている国際社会にあって,常に開かれた政治,経済,社会を創ることを心掛け,理解し合える共同体を広げていくことであります。
日伊両国には,永きにわたる歴史の中で培われた伝統と文化を擁するなど数多くの共通点があり,理解し合える関係が続いてまいりました。昨年九月には天皇皇后両陛下の貴国御訪問により,二国間の友好親善関係は飛躍的に高まりました。今後も,貴国とは友人として,共通の目標に向かって歩んでいけるものと信じております。
では,ご列席の皆様
希望と活力に満ちた新時代の幕開けを喜び,ここにチャンピ首相,ベルルスコーニ氏及びイタリア国民の御健勝と御繁栄,また,日伊両国間の友好協力関係の更なる発展を祈念して,杯を上げたいと思います。サルーテ(乾杯)。