[文書名] 欧州連合理事会結論
欧州と日本‐次の段階
欧州連合理事会結論 1995年5月29日
欧州連合理事会は、アジア戦略に関する結論を想起し、「欧州と日本‐次の段階」と題する欧州委員会の報告書に基づき、その報告書のレベルの高さを強調しまがら、欧州連合(EU)と日本の関係を討議し、次の結論に達した。
I.全般的な結論
1.理事会は、1991年7月18日の共同宣言および1992年6月15日の理事会の結論に基づいて確立されたEUと日本の対話の充実を歓迎する。理事会は、日・EU関係が優先事項のひとつであることを強調する。EUと日本の関係は、その成果の定期的な評価に裏づけられた、長期的な視点に立つ一貫したアプローチに基づいていなくてはならない。
2.理事会は、EUと日本の双務関係における政治的な側面に関しての欧州委員会の分析と提案に十分に留意した。しかし、報告書の国連安全保障理事会の拡大に関してなされている提案は、加盟国のコンセンサスが得られない問題であり、受け入れることができない。理事会は、世界における経済的な重要性に見合うように、もっと大きな政治的な役割を果たしたいという日本の意思表示を歓迎する。したがって、理事会はEUと日本の間に政治対話を強化することに賛成である。
3.経済の領域においては、理事会は、相互に関心の高い事柄に関する対話と協力に加えて、市場アクセスとEU企業の進出について明白に確認できる問題について、先を見越して解決を図るという、1992年以来の建設的な政策の健全性を確認する。
そのような戦略によって日本政府当局との間に優れて効果的な関係を築くことができ、いくつかの貿易問題の解決に結びついてきたことに、理事会は留意する。同時に、市場アクセスと投資に対して広範な障害が引き続き存在しており、欧州企業が可能性を十分に開花させることを妨げていることにも留意する。理事会は、以下のような方向で、EUの戦略を継続し強化することを希望する。
‐実質に関しては、市場アクセスの改善は、特定の問題についての双務交渉および多国間交渉を発展させ、水平的問題の重要性とWTOルールの完全遵守を強調するという、もっと積極的な方法で追求されなくてはならない。
‐手続きに関しては、この戦略は、欧州委員会による定期的な報告を生み出すことになり、さらに、できるかぎり欧州委員会と加盟国の協調的な行動、とりわけ東京における加盟国と欧州委員会の代表者のレベルでの協調的な行動に基づいて進められることになる。
II.政治対話
理事会は、1991年の共同宣言によって制度化された構造の可能性を最大限に活用しなくてはならないと考える(日本と欧州のトロイカの間で6カ月ごとに開催される閣僚および政治局長レベルの会合)。年次首脳協議(議長国および欧州委員会と日本)を欧州と日本で交互に開催するという構想は特に望ましいようにみえる。欧州と日本で交互に開催するという原則は、1995年6月19日にパリで開催される次期首脳協議において提起することもできよう。
政治対話は言うまでもなく両者が利害を共有するあらゆる分野を対象とすることができるものであり、理事会は、政治局長がそれぞれの会合の準備を進める際に明快に見極めるように要請する。
対話を深化させることをめぐる論議、なかでも東京において接触を持続させることに関しての論議はさらに進められるべきである。また、EUと日本の政治対話についての日本の世論の認識がもっと高まるように図るべく注意が払われるべきである。
III.経済および通商関係
理事会は、経済分野において欧州共同体が確立した質の高い緊密な関係を前向きに評価する。理事会は、比較的ささやかだったとはいえ、当初の具体的な成果が得られたことに、満足感とともに留意する。欧州委員会によって明快に洗い出された一連の構造的障壁および部門別の障害が、対日輸出と投資の発展を妨げており、たとえ後者が減らされたとしても、大きな貿易不均衡の要因となっている。
理事会は、欧州委員会にその対策を継続し強化するよう勧告する。
1.市場アクセス
‐市場アクセスの改善
農産物・食料品、工業製品にせよ、サービスにせよ、市場アクセスに対する部門別の障害の除去は、これまでの成果およびウルグアイ・ラウンドの下で講じられた前向きの措置にもかかわらず、依然としてEUの優先事項である。理事会は、非関税障壁、規制および行政による障壁がなくならないこと、流通システムに起因する障害に危惧を抱いている。
‐貿易分析専門家会合(TAM)
貿易分析専門家会合(TAM)によってそれぞれの市場についての理解がかなり深まり、信頼醸成の機運も高まった。理事会は、実施された分析結果の今後の動向に注視しながら会合を継続し、欧州共同体とその加盟国の権限の領域を守りながら会合の対象をサービス分野にまで拡大する可能性を探るように、欧州委員会に要請する。
‐WTO
〓理事会は、日本政府当局に現在進行中のサービスに関する交渉の建設的な妥結に向けて全面的に貢献するよう求める。
〓理事会は、厳格に遵守されるべきものとしてのWTOルール、特に最恵国待遇条項への傾倒を再確認する。たとえば、この原則は日米協定、特に自動車部門の合意にあてはまる。この文脈において、理事会は1994年11月の閣僚会合で日本政府から与えられた保証を歓迎する。理事会は、日米の部門別合意に関する多国間の監視と多国間の適用についてWTOの中で討議するよう欧州委員会に要請する。
〓さらに、理事会は、必要に応じてWTOの紛争解決手続きに訴える意向を宣言する。
2.部門間および構造的な問題
EUと日本の通商関係の改善が、以下の分野における日本政府当局による決定に大きく依存していることは明白である。
‐規制緩和
理事会は、日本政府が1995年3月31日に公表された計画の推進に努力を傾けていることを認識しながらも、完全には期待にこたえるものではなく、新しい措置が速やかに発表され、導入されるべきであると考える。理事会は欧州委員会に対し、特に初年度の年度末に実施される計画の見直しを念頭に、日本政府当局と開始した対話を継続するよう要請する。
‐投資
EU加盟国の経済とは異なり、海外から日本経済への投資は依然としてむずかしい。投資条件の改善は、双務交渉および多国間交渉の両方で対処すべき優先事項である。理事会は、投資環境を改善するための措置の一覧表を作成し、欧州企業と「ケイレツ」との関係を促進するという提案を歓迎する。
‐技術的な障害
あらゆる種類の技術的な障害(規格、認可、試験など)は、特に相互認証協定の締結を通して、また、規制緩和に関する対話を通して、優先的に取り除いていかなくてはならない。
‐競争
日本の公正取引委員会との連携により日本における競争ルールの効果的な適用に寄与することを目指す欧州委員会の行動は継続する必要がある。
‐政府調達
政府調達市場の開放も同じように追求されなくてはならない。
3.日・EU協力
欧州共同体は、貿易促進に加えて、日本との協力を推進する政策を発展させてきた。そのような行動は価値ある結果を生み出した。理事会は、欧州委員会がその報告書の中で示した提案、特に以下の分野の提案を承認する。
‐第4次枠組み計画の枠内における研究開発。重要なテーマのひとつは情報社会に関する技術である。
‐企業間の密接な結びつきの確立を目的とする産業協力。特に中小企業に注意が向けられる。
‐EUと日本の間の「知識の不均衡」を改善し、両地域における発展の機会を知らせるための相互の情報交流。
‐欧州共同体のプログラムの枠内における第三国での開発協力。
‐環境、特に地球規模の環境問題に解決策を見いだすことを目指す。
4.輸出促進
理事会は、EUの対日政策における貿易促進の重要性を認識し、日本の輸入促進活動との相乗効果が高まっていることを歓迎する。理事会は、欧州共同体と加盟国の行動が相互補完的であることの必要性に関する1992年の結論を想起する。
IV.未来の仕事の組織
理事会は、日本との関係においてEUが手の内にあるあらゆる手段を有効に活用してもらいたいと考える。なかでも以下の内容を重視している。
‐113条委員会は、EUと日本の経済関係について討議するために定期会合を開催することになる。
‐東京における欧州委員会の代表部と加盟国の大使館の協力はすでに大きな成果を上げているが、特に、現地でのEU使節団受け入れ準備、情報収集、日本政府当局との折衝の面でこれを(条約の規定に基づいて)いっそう緊密にすることになる。なかでも、特定のテーマ別(農産物・食品の貿易、公衆衛生規則、サービス)に共同作業グループを設置することができるだろう。
‐もっと一般的に、理事会は、欧州企業にとって優先すべき部門における市場アクセスについて、また、規格や競争政策といった水平的なテーマについて、多国間の枠組みで進められている交渉を損なわなうことなく交渉を進めるために、113条委員会と協議の上で日本政府当局との定期的な会合の予定を立てるよう欧州委員会に要請する。
‐欧州委員会が報告書の中で提案しているさまざまな形態の下で、ビジネス界、特に東京の欧州ビジネス協会(EBC)と欧州委員会の接触が強化されることになる。
理事会は、政府、大学、民間部門の代表を巻き込んでEUと日本の協力に関する会議を開催するという欧州委員会の提案に関心を示した。会議は、EUの責任ある立場の人々の日本に関する知識の水準を引き上げるのに役立つだろうし、あらゆるレベルにおいて日本とEUの協力を強化することにつながるかもしれない。会議の開催は提案の評価と今後の慎重な作業に基づいて決められることになる。
理事会は、1996年末までに日・EU関係の進展について改めて報告するよう欧州委員会に指示する。