[文書名] 新日英行動計画(世界に拡がる特別なパートナーシップ)(主要点)
日本と英国は、グローバルな利益と視野を共有するパートナーとして、21世紀を迎えようとしている。日本は、英国の対アジア太平洋地域政策の中心を占めている。英国は、日本の対欧州関係の主たる柱である。両国は、成熟した先進民主主義国として、世界各地の平和と安定の推進に、また多角的自由貿易体制を通じた繁栄の促進に、深く関与している。両国は、さらに、民主主義、自由、基本的人権といった価値を共有し、また、その促進に努力しており、人類の進歩へ貢献している。両国の共同行動は、伝統的外交や政府間の接触にとどまらず、文化、教育、青少年及び草の根の交流を含む、より広範な分野に及んでいる。
日英両国の外務大臣は、1995年12月に、両国間の協力を発展させるための方途を具体的に提案した日英行動計画を確認した。池田外務大臣とリフキンド外相は、1996年9月2日に東京で行われた会談において、1995年12月以来達成された協力関係を踏まえて、21世紀に向けた新たな「特別なパートナーシップのための行動計画」を発表した。この新行動計画は、グローバルな平和の推進(安全保障及び政治的問題に関する協力)及び繁栄の促進(経済問題に関する協力)、並びにアジアと欧州の地域的協力の促進を包含しており、また、次世紀に向け二国間関係を深め、かつ充実させることを狙っている。この新計画は、継続的に見直され、かつ拡充される。
新日英行動計画における主要な点は以下の通り。
I. グローバルな協力
(i)国際平和と安全保障への貢献
A.ボスニア
−日英両国は、和平履行会議運営委員会のメンバーとして、復興、融和、及び難民の帰還、並びに9月14日の選挙後のボスニアにおける新たな国家機関の創設に向け引き続き緊密に協力する。
−両国政府は、ボスニアの送電線プロジェクトの経費を共同負担することを決定しており、また協力しうる他のプロジェクトや分野を発掘しているところである。
B.平和維持・平和構築
−両国政府は、PKO訓練における協力、及び予防外交のためのより効果的な手段の開発のための努力を強化する。
−両国外務省は、「アフリカにおける紛争に関するハイレベル・シンポジウム:紛争後の平和構築への道」を1996年9月9、10日に東京で共同開催する。松永信雄(元駐米)大使とディヴィッド・ハネイ卿(元英国国連代表部大使)が、同シンポジウムの共同議長を務める。
−英国国防省、英国外務省の代表が、1996年9月に東京における防衛研究所主催のPKOに関するセミナーに参加する。
−1996年11月に英国カンバーリーにて行われるPKO図上演習に、日本から参加する。
日本の自衛隊員が、英国ウォーミンスターにおけるPKO訓練コースに1997年中に参加することが検討されている。
C.国連改革
−英国政府は、日本の国連安保理常任理事国入りを、引き続き強く支持する。
−両国政府は、財政改革、経済、社会及び開発分野の活動の改革、並びに安保理改革を含む国連改革の実現のため、協力を強化する。
D.テロ
−両国政府は、テロと闘うための一層緊密な国際協力を奨励する。
E.不拡散及び軍備管理
−両国政府は、包括的核実験禁止条約(CTBT)の可能な限り早期の実現のため努力する。両国政府は、核不拡散条約(NPT)の普遍性確保のため引き続き努力し、NPT再検討・延長会議で合意された「核不拡散と核軍縮のための原則と目標」の完全な履行を、引き続き支持する。両国政府は、化学兵器禁止条約を可能な限り早期に発効させることの重要性を強調する。両国政府は、効果的な検証メカニズムの構築を含む、生物兵器の脅威に対処する多国間メカニズムの強化に協力する。さらに、両国政府は、日英のイニシアチブにより創設された国連通常兵器移転登録制度への、可能な限り全ての国の参加を促すよう協力する。
−両国政府は、輸出管理政策を含む不拡散の懸念に関する協力を強化する。
F.北朝鮮の核兵器開発
−両国政府は、北朝鮮の核開発計画を修正し、NPTの下における北朝鮮の義務に合致させるために1994年10月21日の「枠組み合意」の下で行われている努力を歓迎する。
−両国政府は、枠組み合意の下で設置された朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)を支持し、これまでその成功に向け貢献してきた。
−両国政府は、引き続き、緊密に協議を行うとともに、将来におけるEUのKEDOへの参加及び支持につき協力する。
(ii)国際社会の繁栄への貢献
A.多角的自由貿易体制
−日本と英国は、英国のEU加盟国としての義務を念頭に置きつつ、特に1996年12月にシンガポールで開催される第1回WTO閣僚会議に向けて、多角的自由貿易体制の強化のため、世界の主要貿易国として引き続き緊密に協力する。両国政府は、同会議をウルグァイ・ラウンド合意の実施の進捗状況をレビューし、WTOの新たな包括的作業計画を設定するための重要な機会と考える。両国政府は、更なる自由化を達成し、WTOが貿易と投資及び貿易と競争政策の問題に取り組むことについてのコンセンサスを形成するために協力する。両国政府は、金融サービス、基本電気通信、海運についての交渉が各分野毎に合意されたスケジュール内に成功裡に妥結することを確保するため協力することにコミットする。両国政府はまた、貿易と環境についての作業及び地域貿易協定の多角的貿易体制との整合性についてWTOで行われる検討において、顕著な進展が得られるよう努力する。
−両国政府は、中国の地域的及びグローバルな重要な役割を認識している。両国政府は、中国が適切な条件の下でWTOに加盟することを支持し、その目的のために引き続き緊密に協力する。
B.援助協力
−両国政府は、南アフリカ、タンザニア、ケニア、ジンバブエ及びザンビア等の主としてアフリカ諸国における共同援助プロジェクトや並行的に実施する援助プロジェクトの可能性を、より体系的に検討する。また、両国政府は、現場における緊密な連絡を促進する。」{前1文字ママ}
−両国の外務大臣は、日本と英国がキルギスタンの医療分野への支援供与プロジェクトにおいて協力することを決定した旨発表した。日英共同ミッションが、今月後半にキルギスタンを訪問する。
−両国の外務大臣は、1996年7月から8月にかけて派遣された南アフリカの教育分野でのプロジェクト形成のための日本の調査団の成果を歓迎する。同調査団は、南アフリカにおける協力の可能性をさぐるべく、南アフリカ政府関係者及び南部アフリカで活動する英国の援助実施機関との協議をもった。
−英国政府は1998年に第2回アフリカ開発会議(TICADII)を開催するとの日本のイニシアチブを支持する。同会議の準備として、英国の援助専門家がジンバブエ及び象牙海岸における地域ワークショップに参加し、また英国の高級実務者がアフリカ開発に関するハイレベルセミナーに出席した。
−両国政府は1997年に英国で開催される英連邦首脳会議に向けて、英連邦の開発途上国・地域に関するより緊密な協力の可能性を探究する。
−両国政府は、OECDの開発援助委員会(DAC)により提案され、リヨン・サミットで歓迎された開発戦略の実施において協力する意図を有している。
C.環境及び保健問題
−両国政府は、環境保護、エイズ等の問題につき、多国間の場で引き続き協力する。
−両国政府は、先進国による2000年以降の新たな目標設定の合意を含め、1997年に日本で開催される気候変動枠組条約第3回締約国会議の成功を確保するための日本政府の努力を支持する。
(iii)アジアと欧州との関係強化に向けた貢献
A.ASEM
−英国は、1998年前半に第2回アジア欧州会合(ASEM)をロンドンで主催する。日本は、アジア側の調整国の1つであり、したがって、両国政府は、第2回ASEMに向けて、緊密に協力する。
−英国と日本は、民間部門をASEMに成功裡に統合することにコミットしている。両国は、アジア欧州間の貿易と投資の促進のため、両国の民間部門のより大きな関与を目指して協力することとする。
B.地域的安全保障機関
−英国は、東アジアと長期にわたる関係を有する国連安保理常任理事国として、アジア太平洋地域に安全保障上の大きな利益を有している。日本政府は、ASEAN地域フォーラム(ARF)へ国家として参加したいとの英国の希望の重要性を認識しており、この問題をARFのプロセスにおいて正式に取り上げる。
−英国政府は、ボスニア及びウクライナを含む欧州の安全のために日本がなしうる重要な貢献を認識しており、欧州の安全保障に関する適当な議論の場に十分に関与したいとの日本の希望を支持する。英国は、欧州安全保障協力機構(OSCE)における日本のオブザーバーとしての地位を、当初より強く支持していた。
C.知的交流
−両国政府は、日英のシンクタンク間のより緊密な連絡、及びASEMの枠組みの下でのアジア欧州協力協議会(CAEC)の役割を含め、アジア欧州間の知的交流の強化を奨励する。(注:英国国際戦略問題研究所(IISS)及び日本国際交流センターは、それぞれ欧州側、アジア側のアジア欧州協力協議会事務局となっている。)
II.二国間の協力
A.文化及び教育
−リフキンド外相は、1998年に日本にて「英国祭」を開催することを発表した。
−日本政府は、2001年に英国にて日本祭を開催することを計画している。
−両国政府は、それぞれのフェスティバルの成功を確実にするために協力していく。
−両国政府は、JETプログラムへの英国の参加者が近年急増していることを歓迎し、同プログラム修了者の同窓会活動を支援する。
−両国政府は、両国間の教育交流を引き続き促進する。
−池田外務大臣は、今会計年度にロンドンに日本語センターを開くことを発表した。
B.「アクション・ジャパン」キャンペーン
−日本政府は、英国が欧州で最初に自国企業に対し日本への投資及び貿易に積極的な姿勢をとることを奨励したこと、及びこのような積極的な姿勢が継続されることを歓迎する。
−英国政府は、英国の対日輸出が引き続き拡大することを希望する。ケント公は、「アクション・ジャパン」キャンペーンを支援するため、11月に訪日する。
−日本政府当局及び日本貿易振興会(JETRO)は、「アクション・ジャパン」キャンペーンを支援するために開催されるセミナー、タスク・フォース会合及び貿易ミッションを引き続き支援する。JETROからの二人目の上級貿易顧問が、1996年9月より英貿易産業省(DTI)に出向する。
C.第三国における商業上の協力
−両国政府は、日英両国の企業がしばしば補完的な長所を有している第三国市場における商業上の協力を、引き続き奨励する。英国輸出信用保険庁(ECGD)及び通産省(MITI)が昨年10月に開始した貿易保険に関する協力プログラムは、商業上の協力の促進に資するものである。
−英国政府は、英国の28企業から成るミッションが7月にインドネシアを訪問し、現地日系企業との協力を促進する機会を持ったことを歓迎した。
−英国の電子部品製造企業を東南アジアの日系製造業に紹介するための電子部品調達セミナーが、10月にシンガポールで開催される。
D.科学技術
−英国政府は、英国の研究開発(R&D)施設への日本の投資を歓迎する。
−両国政府は、引き続き科学技術分野での協力を、優先課題とする。既に、150以上の協力・共同研究プロジェクトが進行中である。両国政府は、さらなる協力プロジェクト及び若手科学者間の交流を奨励するため引き続き努力する。
−1998年の英国祭開催と関連して、大規模な英国の科学展を東京で開催する計画がある。