[文書名] 第5回日・EU首脳協議に関する日・EU共同プレス発表(第5回日・EU定期首脳協議)
橋本龍太郎日本国内閣総理大臣、ジョン・ブルートン欧州理事会議長及びジャック・サンテール欧州委員会委員長は、1996年9月30日東京で第5回日・EU首脳協議を行い、以下の発表を行った。
対話と協力
1.第5回日・EU首脳協議参加者は、昨年6月19日にパリで行われた前回の日・EU首脳協議以降の動向を検討し、最近の日・EU関係の発展に満足の意を表明した。首脳協議参加者は、日・EU関係の重要性を強調し、対話と協力に基づく、より緊密で、今まで以上に調和のとれた関係をめざして、引き続き努力する意思があることを改めて述べた。首脳協議参加者は、また、国際関係やグローバルな問題についても協議を行った。
2.首脳協議参加者は、1991年7月18日に、ハーグで発表された「日・EU共同宣言」を尊重することを確認し、また、同共同宣言において想定されている制度的枠組みの充分かつ定期的な活用の重要性を確認した。また、首脳協議参加者は、1995年パリで開催した日・EU首脳会議の際の日・EU共同プレス発表が、日・EU関係にとり依然として妥当であることを強調した。
政治的結びつきの強化
3.首脳協議参加者は、政治対話の促進に留意するとともに、とりわけさまざまな地域問題について、ワーキング・レベルの対話が著しく強化されたことを歓迎した。首脳協議参加者は、民主主義、開発、人権及び基本的自由の尊重が相互依存の関係にあり、相互に補強しあうものであることを再確認し、これらの問題につき対話を通じて引き続き強力していくことを期待した。
4.日本とEUは、安全保障と国際政治関係における最近の動向の結果、一層の役割を果たすことが求められている。首脳協議参加者は、この分野における双方間の協力を推進することが、国際社会の安定と信頼の醸成への重要な貢献となるとの点で意見の一致をみた。協議参加者は、アジア及び欧州の平和及び安全保障に共通の関心を有していることを表明した。
5.EU側は、旧ユーゴスラヴィアにおける確固たる和平の構築のための努力への日本の参画、とりわけボスニア・ヘルツェゴヴィナ復興支援に対する日本の貢献を歓迎した。日本側は、朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)へのEUの当初の貢献を歓迎し、EUが早期にKEDOに参加すること、及び一層の財政的貢献を行うことへの希望を表明した。双方は、中東和平プロセスにおける重大時期にあたって、交渉を発展させる重要性を強調し、この分野ぶんやにおいて緊密に協力を行っていきたいとの認識につき意見の一致をみた。
6.首脳協議参加者は、ロシアの改革プロセス及び民主主義の基盤強化に対し、引き続き支援していく必要性を確認した。首脳協議参加者は、また、東京宣言を基礎とした日露関係の完全な正常化が、アジア太平洋地域の平和及び安定にとって重要であることにつき意見の一致をみた。EU側は、中東欧諸国における政治並びに経済改革支援への日本の貢献を歓迎した。双方は、また、ミャンマーの民主化の前進と人権状況の改善を促進する必要性を確認した。日本側は、幾つかのアジア諸国に対する欧州からの開発援助並びに改革への支援を、地域の安定を促進するものであるとして歓迎した。双方は、民主主義と市場経済に向けたこうした改革の成功は、欧州、アジア及び世界の安定にとり重要であることを確認した。
7.首脳協議参加者は、国連システムが21世紀に直面する挑戦、責任及び機会に対応できるよう、同システムを適応させ、強化する方策を見い出すことに積極的に貢献することの必要性を再確認した。双方は、第51回国連総会が、国連の適応、改革及び再構築という緊急かつ基本的な課題を前進させ、実現するために活用されねばならないとの見解を共有した。
8.双方は、包括的核実験禁止条約(CTBT)が採択され、署名解放されたことに対し、暖かい歓迎の意を表明した。首脳協議参加者は、この新条約が、軍縮・不拡散分野における国際社会の最も優先度の高い目的の一つの達成、並びにNPT第6条に基づく義務の履行に向けた具体的一歩を記すものであるものとの意見の一致をみた。首脳協議参加者は、核軍縮プロセス推進のため、CTBTの締結に続けてジュネーヴ軍縮会議においてカットオフ条約の交渉を開始すべきであるとの意見の一致をみた。首脳協議参加者は、核兵器不拡散条約再検討・延長会議で採択された「核不拡散と核軍縮のための原則と目標」で宣言された目標に対し、明確な態度で取り組むことを再確認した。首脳協議参加者は、核以外の大量破壊兵器の軍縮の促進と拡散防止、及び多数国の批准による化学兵器禁止条約の早期発効の促進に向けて一層の努力を行っていくことを確認した。また、首脳協議参加は、生物兵器禁止条約の実効性を強化し、その実施を改善する必要性を確認した。
9.双方は、対人地雷の完全な廃絶という共通の目標に向け努力すること、及び対人地雷を全世界的に禁止する有効な国際合意をできるだけ早期に達成することに向け、積極的活動に取り組むことを確認した。首脳協議参加者は、また、特に対人地雷の拡散及びその使用に関する一層の規制並びに地雷の探知・除去努力及び被害者の援助に対する国際的な支援を強化していくことが重要であるとした。
10.双方は、1996年3月にバンコクにおいて開催された第1回アジア欧州会合(ASEM)の成功に満足の意を表明し、そのフォローアップを成功させることが重要であるとした。EU側は、ASEM調整国としての日本の役割を歓迎した。双方は、バンコクにおいて開催された第1回アジア欧州会合のフォローアップの準備、及び1998年にロンドンにおいて開催予定の第2回アジア欧州会合の準備において緊密に協力する意思があることを強調した。
貿易、投資関係の改善と経済分野における協力の強化
11.首脳協議参加者は、双方を合わせると世界経済の約半分を占める日本及びEUの経済の現状を検討した。首脳協議参加者は、各々の経済の見通しを改善するための、各々の経済政策および改革努力につき説明を行った。日本側は、規制緩和がこうした努力の最優先分野の一つであることを説明した。双方は、パリにおける首脳協議で発表された共同プレス発表を想起しつつ、規制緩和に関する対話を行い、お互いの努力に貢献していくとの意思を確認した。
12.双方は、最近の日・EU貿易における好ましい傾向を歓迎した。日本側は日本市場への欧州の一層の参入拡大に向けてEUが行った努力を歓迎した。EU側は、EU製品の日本への輸入を促進するための日本側による協力と継続的努力に対して感謝の意を表明した。この関連で、双方は、お互いの市場について十分に理解を深めることの重要性を認識し、関連の枠組みにおいて実施した客観的分析がこれに大きく貢献したことに留意した。双方は、日本とEUとの間に問題及び不均衡が未だに存在していることに留意し、市場アクセス問題についての共通の解決を見出すための努力を継続することを確認した。
13.首脳協議参加者は、相互理解を深めるため、流通に関する専門家による対話の場を設けるとの提案につき議論し、このための準備が速やかに完了すべきことにつき意見の一致をみた。
14.双方は、欧州企業による日本国内への外国直接投資の水準の向上は、双方にとって有益であることにつき意見の一致をみた。欧州側は、対日投資会議の活動を評価し、対日直接投資の拡大に向けた政策措置の実施を歓迎する。また、欧州側は、EUへの日本の直接投資の拡大を望んでいることを強調し、日本の直接投資誘致のための動力を強調した。
15.日・EU双方は、WTOの中心的役割及び多角的ルールの最重要性に留意しつつ、多角的自由貿易体制の強化に対するコミットメントを再確認した。首脳協議参加者は、WTOのシンガポール閣僚会議(SMC)を成功させるために強力するとの意思を強調した。首脳協議参加者は、SMCがウルグァイ・ラウンド合意の実施、「ビルトイン・アジェンダ」、「貿易と環境」、ITAの成功裡の妥績を含む更なる貿易の自由化及び新たな課題、特に「貿易と投資」および「貿易と競争政策」について進展を達成すべきであるとの点につき意見の一致をみた。首脳協議参加者は、基本電気通信に関する継続交渉において合意を得るため、指導力を発揮するとの決意を共有した。首脳協議参加者は、金融サービスに関する暫定合意を達成するにあたり果たした役割に満足し、関係当事国のより十分な参加を得てより恒久的な合意を達成するとの決意を表明した。首脳協議参加者は、WTOの紛争解決制度が公正かつ効率的な国際貿易体制にとり極めて重要であることを強調した。首脳会議参加者は、多角的ルールの最重要性を認識し、地域統合がWTO協定との厳格な整合性を確保することの必要性を強調した首脳協議参加者は、すべての主要な貿易パートナーがWTO体制に参加することが非常に重要であることを再確認した。首脳協議参加者は、中国のWTO加盟への支持を表明し、そのために緊密に協力していく意思を認識した。また、首脳協議参加者は、開発途上国を多目的自由貿易体制に十分に統合していくために支援を行うことの重要性を認識した。
協力の拡大と深化
16.双方は、産業協力、運輸、競争政策、科学技術、情報・通信、社会問題、環境、ODA、文化及び教育を含む分野で日本・EU間の協力活動が増大し、そのことにより相互関係の基盤が堅固なものになっているとの認識を共有した。
17.首脳協議会参加者は、日・EU関係のこの側面が人々に対して一層強調されるべきであることに留意した。この関連で、双方は、パリ首脳協議においてEU側より提案された1997年の東京における日・EU協力会議について、準備が進展したことを留意した。
18.産業協力に関し、双方は、1996年6月に日・EU産業協力センターの事務所がブラッセルに開設されたこと、並びに日本の自動車生産者と欧州の自動車部品産業間の会合等の産業協力事業の幅が拡大したことを歓迎した。
19.EU側は、日本が提唱した「世界福祉イニシアティヴ」に関心を示し、双方は、協力してこのイニシアティヴをさらに発展させていく意思があることを確認した。
20.開発に関して、双方はG7リヨン・サミットの結論文書及びOECD開発援助委員会の報告書「21世紀に向けて:開発協力を通じた貢献」を想起した。首脳協議参加者は、右に関し適切なフォローアップを行っていくことの重要性を認識した。この関連で、首脳協議参加者は、共同行動の可能性を含む双方間の援助強調強化の重要性を強調した。双方は、戦争・災害地域からの住民の大規模な逃避が繰り返し発生していることに鑑み、人道援助が引き続き重要であることを認識した。首脳協議参加者は、この分野における日・EU協力の拡大に向け努力していく必要性を確認した。
21.食糧安全保障についても、日・EU協力の拡大が有益な分野であると認識された。首脳協議参加者は、世界食糧サミットの準備にあたって強調を拡大していく意思を共有していることを確認した。
22.双方は、特に来年京都において開催される気候変動枠組条約第3回締約国会合の成功を確保するために、環境保護分野における更なる協力の必要性につき意見の一致をみた。
23.双方は、既存のフォーラムにおいて麻薬関連犯罪を含む国際組織犯罪対策に向け共に活動していく意思を確認した。首脳協議参加者は、また、税関分野における既存の協力に留意し、麻薬及び銃器の不法取引防止を含めこの協力を更に強化する意思を確認した。