データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ベルギー国王アルベール二世国王陛下歓迎晩餐会における橋本内閣総理大臣の挨拶

[場所] 
[年月日] 1996年10月24日
[出典] 橋本内閣総理大臣演説集(上),465−466頁.
[備考] 
[全文]

アルベール二世国王陛下、パオラ王妃陛下、並びにご列席の皆様

この度、ベルギー国王アルベール二世国王陛下、パオラ王妃陛下がフィリップ皇太子殿下とともにわが国をご訪問になり、本日ここにささやかな歓迎の宴を催すことができますことは、私にとり深く喜びとするところであります。

日本とベルギーが一八六六年に修好通商条約を結んで以来、わが国からは多くの使節団や留学生が貴国を訪問しました。爾来、今日に至るまで、両国の間には幅広い交流が続いております。更にそれ以前にも、例えば、ブラバン州ブラッセルを示すB/Bのイニシャルの入った貴国のタピストリーが古く我が国にもたらされ、日本の代表的な伝統年中行事の一つである京都祇園祭の折に、そのタピストリーが人々の目を楽しませてくれる等、両国の交流が中世にまでさかのぼるものも少なくありません。

我々は、現在二十一世紀までわずか数年を残す世界に生きております。二十世紀は二度にわたり世界大戦を経験し、まさに動乱の世紀でありました。しかし同時に、科学技術が驚くべき早さで進歩し、また、政治、経済、文化等とあ

らゆる分野で世界の国々の間で相互依存関係が深まる新たな動きも見られます。特に貴国をはじめとする欧州においては、経済の統合が急速に進展するとともに、安全保障の面でもより安定した枠組みに向けての精力的な努力がなされております。

アジアにおいても著しい経済成長に支えられ平和と繁栄を確固たるものにするダイナミックな動きが見られます。相互依存関係が深まった今日、ユーラシア大陸の東と西で起きているこれらの動きを調和し、互いに協力し合って行くことが大切であります。このような欧州とアジアの間の橋渡しを行う上で、我が国と貴国は極めて適切な役割を果たすものと思っております。

幸いにも、我が国と貴国は先に申しました通り、長きにわたり暖めてまいりました良好な友好関係があります。このような友好関係の大きな礎となっているのが、両国の皇室、王室の親密な結びつきであることは疑いありません。私は、今後の二国間の更なる発展には、両国民のあらゆるレベルでの人の交流を活発化させることが最も大切だと思っております。その点で既に両国の間で若々しい芽が育ってきております。

貴国はアトランタ・オリンピックで史上最高の成績をおさめられ、特に貴国柔道陣が際だっていたと承知していますが、女子柔道では二つの階級で日白の選手が決勝で対決し、一勝一敗と仲良く引き分けました。これはまさに我が国と貴国の友好関係を象徴する結果でありましょう。我が国の女性のパワーは日頃実感しておりますが、日本の伝統的武道の分野で、このパワーと互角に闘われるベルギー女性のパワーも相当なものであると実感いたしました。

国王王妃両陛下の今回の実りある秋のご訪問を機会に、日白友好関係の幅が更に拡大し、実り多いものとなることを心より願っております。

国王王妃両陛下には、わが国においてつつがなく快適にご滞在されるよう、また、両陛下のますますのご健勝とベルギー王国及び国民の一層の繁栄を祈りつつ、ここに杯を挙げたいと思います。