データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 21世紀に向けての日仏協力20の措置

[場所] 東京
[年月日] 1996年11月18日
[出典] 外交青書40号,306−310頁.
[備考] 概要
[全文]

前文{前2文字下線}

○アジアと欧州の関係緊密化のために日仏両国は、共同で更なる行動をとることを強く決意。

○日仏関係は二国間交流のあり方のモデルとなる。

○新国際秩序の構築に寄与するため両国関係の強化を希望。協力関係発展のため21世紀に向けての20の措置を共同でとる。

 橋本龍太郎(署名)              ジャック・シラク(署名)

より定期的かつ密度の高い協議{前14文字下線}

アクション1:日仏首脳協議の年次開催

○少なくとも年1回の首脳会談の開催。

アクション2:閣僚間協議の強化

○日仏外相会談の開催(年2回)の他、経済、貿易、産業、財政、宇宙、科学技術、教育、文化の分野での関係閣僚会合の開催。

アクション3:行政面での協力の拡大

○外交問題(アジア情勢、ロシア情勢、中東・アフリカ情勢、国連、軍縮等)、対外経済関係、産業協力、国際金融問題に関する関係省庁局長レベルの協議実施。

○ポリティコ・ミリタリー分野における協議(2+2)の原則年1回開催。

○日本の防衛庁とフランス国防省との間で決定される協議は2+2の機会に実施。

○若手外交官交流をはじめとする公務員交流の充実。両国外交使節団の間の協議の拡大。

アクション4:政治、経済及び社会分野において活躍している者の関係の深化

○両国国会議員の交流強化。

○両国の地方自治体間の協力の発展。日仏知事会議の計画の歓迎。新たな姉妹都市関係の探求。

アクション5:日仏対話フォーラムの活用

○日仏対話フォーラムは少なくとも年1回会合し、両国首脳に対して両国関係緊密化のための勧告を行う。

○日仏対話フォーラムは、20の措置のフォローアップにつき勧告。

二国間協力の強化{前8文字下線}

アクション6:二国間の経済面での協力の発展

○貿易の拡大促進、市場アクセスを制限する障壁除去のための必要に応じた二国間協議。

○「ル・ジャポン・セ・ポシブル」キャンペーンの強化。

○第三国における共同プロジェクトの推進。

○サービス分野における協力の強化。

○産業協力の深化、多様化(航空機産業、宇宙産業、情報・コミュニケーション技術産業、自動車部品・装備品産業等の分野)。

○両国間における投資促進のための環境の改善。投資に関するセミナーの開催。

○日本とフランス海外領土との間の経済関係の強化。

アクション7:観光の促進

○双方向での観光の促進。

○ニュー・カレドニア及び仏領ポリネシア地域の観光促進の努力。

アクション8:人物交流の増大

○フランスにおける日本語学習及び日本におけるフランス語学習の教材の共同開発の可能性検討。

○両国間における学生の相互交流の増加。

○JETプログラムによるフランス人青年の日本への招聘の推進。フランス側の(日本の若者を対象とする)研修制度創設への努力。

○相手国の若者の自国内企業における研修の推進。

○有力者招聘計画の拡大。

○研究者の交流の強化。

○若手芸術家の交流の促進。

○両国のジャーナリスト間の交流の強化。

アクション9:科学技術分野における関係の深化

○科学技術分野での協力の推進(環境、エネルギー、宇宙、バイオテクノロジー、生命科学、海洋開発、新素材、電子工学及びソフトウェアの分野を重点課題として展開)。

○エネルギー及び環境分野における協力の強化。

○宇宙開発事業団(NASDA)と仏国立宇宙研究センター(CNES)間、日本学術振興会(JSPS)と仏国立科学研究センター(CNRS)間等の両国科学技術関係機関間の協力の促進。

○ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラムの多国間協力の枠組みを通じた協力の強化。

アクション10:両国の生き生きとして豊かなイメージの普及

○「フランスにおける日本年」(97−98年)、「日本におけるフランス年」(98−99年)の実施、支援。

○パリ日本文化会館を、日本関連情報の対欧州発信基地、日仏の若者の出会いの場として支援。日仏会館(東京)は両国の科学者の交流発展に新たな役割。

○第一級の国宝級の美術品等の交流促進。美術品の保存、修復に関する協力。

アクション11:情報技術、新たな情報伝達網及び映像交流の発展

○情報技術及び文化伝搬のための新たなネットワーク(マルチメディア、デジタル)に関する共同の考察。

アクション12:スポーツ交流の発展による日仏友好関係の普及

○武道、サッカー、ゴルフ及びラグビー等の協議団体間における競技会開催を通じた両国のスポーツ交流の促進。

21世紀に向けての共同作業

アクション13:国連の改革と機能強化

○安全保障理事会の拡大、財政及び経済社会分野の改革等を含む、全体として均衡のとれた国連改革に向けた共同イニシアティヴ。

○フランスは、日本が国連安保理常任理事国となることへの支持を再確認。

アクション14:平和、不拡散、軍縮及び安全保障のための共同作業

○核軍縮並びに核兵器、化学兵器及び生物兵器等の不拡散、対人地雷問題に関する協力の強化。

○テロ、銃器・薬物取引及び国際組織犯罪対策に関する関連当局間の協力強化。

○PKOに関する情報交換の協力の実施等。

アクション15:原子力の平和利用・安全のための共同作業

○原子力エネルギーの平和利用政策及び情報公開の努力に関する協力と意見交換の緊密化。

アクション16:地域安全保障のための協力

○アジア、欧州における地域安全保障に対する相互支援。

○日本は、フランス及びEUのKEDOへの参加を歓迎。両国は、KEDOに対する支援を強化。

○フランスは、日本のOSCEにおける役割拡充を支持。欧州評議会におけるオブザーバー・ステータスの日本への付与を支持。

○日本は、フランスのARFに寄せる関心を歓迎。フランスのARFへの参加は地域の安全保障に貢献すると考える。

アクション17:開発の共同推進

○持続可能な開発の達成を「開発のための新たなグローバル・パートナーシップ」の基本目的とするリヨンサミットの結論の履行を決意。

○新開発戦略の普及と実施のために協力。

○全ての先進国に対し、援助からの後退を拒否し、マルチの譲許的資金の増資のための約束を尊重するよう呼びかける。アジア開発基金第6次財源補充交渉が成功裡に終結するよう協力。また、「新興工業国」に対し、ドナーのサークルに加わるよう慫慂。

○アジア及びサブサハラ・アフリカの最貧国における協力を一層効果的・効率的にするために共に作業。

○関連国連機関において両国代表部間の一層の協議に努力。

○関係諸機関間で、密接かつ可能な限り定期的な協議を行い、また、開発援助関係者の人的交流を促進。

アクション18:移行・再建過程にある国における二国間協力

○「インドシナ総合開発フォーラム」等を通じたインフラ整備、人材育成面でのカンボディア、ラオス、ヴィエトナムにおける協力の推進。

○旧ユーゴースラビアにおける民生面での復旧、復興をはじめとする支援に関する意見・情報交換、協力可能な分野に関する検討。

○ロシア、中央アジア及びモンゴルの情勢や二国間協力に関する経験・情報の共有。

アクション19:アジア・欧州会合(ASEM)のフォローアップ及び成功への貢献

○アジア・欧州関係強化の中核となるべく、ASEMにおいて、二国間協力、特に閣僚レベルでの協力を強化。政治、経済及び協力の各分野における協力を強化し、共同イニシアティブを追求。明年開催予定の外相会合、経済閣僚会合及び蔵相会合の成功に向け共に努力。

アクション20:世界経済のための努力

○フランスは、日本の「世界福祉構想」を評価し、両国は、その具体化のために緊密に協力。

○多角的貿易制度を弱体化させるようなあらゆるイニシアティヴと闘う。

○構造障壁、市場アクセスと制限する規則の除去に関する協力促進。

○WTOを強化するため、サービス貿易分野の継続交渉の妥結を促進し、WTOへの新メンバーの加盟(特に中国とロシア)を促進し、WTOにおける投資に関する作業の開始を支持。

○環境保護や労働基準尊重等の問題への一層の重要性の付与を認識。

○国際会議の場における、経済・金融分野での協力推進(為替安定化のための通貨面での協調、マネーロンダリング防止等)。