[文書名] ストヤノフ・ブルガリア共和国大統領歓迎晩餐会における橋本内閣総理大臣の挨拶
ぺータル・ストヤノフ大統領閣下、及び令夫人
一行随員の皆様
ご列席の皆様
本日、我が国の友邦であるブルガリアからストヤノフ大統領ご夫妻ご一行をお迎えし、ここにささやかな歓迎の宴を催すことができますことは、私の大きな喜びであります。日本政府及び国民を代表し、大統領閣下ご一行のご来訪を心から歓迎申し上げます。
大統領閣下
「自由の闘いに倒れし者は死せず」ブルガリアが生んだ詩人フリスト・ボテフの言葉です。貴国の建国以来の歩みに思いを馳せるとき、この言葉を生み出した、「歴史の重み」を感じずにはいられません。他国の支配を受けた長い苦難の歴史の中で、ブルガリア国民は、祖国への愛、勇気と強靱な精神を培ってきました。
一九八九年、民主革命の波がブルガリアにも到達したとき、新しい国造りという歴史的な試練に再び直面しました。しかし、ブルガリア国民は、何としてでも、この大事業を完遂しようという堅い決意をもって、閣下の下に集結しました。
閣下の英まいな指導の下で、新しい国造りが始まっています。私はここに、閣下とブルガリア国民のご努力に深い敬意を表します。また、我が国とブルガリア国民との連帯の印として、閣下の国造りにいささかでも協力できることを光栄に存じている次第であります。
大統領閣下
冷戦の終結と相前後し、貴国の隣国においては悲惨な紛争も生じました。貴国はその中にあって、冷静な対応を貫かれ、なおもバルカン地域の平和と安定のために、建設的な役割を発揮しておられます。平和の尊さを深く理解する貴国であればこそ、バルカン地域、ひいては欧州の安定のため、貴重な役割を果たされていくものと信じております。
大統領閣下
両国は地理的に隔たっているとは言え、貴国の優れた伝統文化や芸術は、我が国でもよく知られています。中でもバルカンの大地に響く民族音楽の歌声は、我が国の多くの音楽愛好家を強く魅了しています。
草の根レベルでの交流も、豊かに発展しております。今日もご出席いただいているピアニストの児玉幸子さん、人形劇団プーク代表の長谷川正明さんは、その代表的な例です。私は、この皆様、及びその他のブルガリアとの協力を、地道に続けておられるすべての方々に、心からの拍手を送りたいと思います。
また、大統領閣下のご出身地であるプロブディフ市と、我が国の岡山市とは、既に二十五年にわたり、姉妹都市交流を積み重ねてまいりました。岡山にゆかりある者として、私もこのような交流の発展を喜ばしく思います。
本日ご出席の方々のご努力で、豊かに発展してきた両国間の友好関係が、今回の閣下のご訪日を機に、一層深まることを期待してやみません。
大統領閣下
閣下のご滞在が、実り多いものであることを、心から希望いたします。同時に、どうか我が国におかれて、楽しくも心休まるひとときを過ごされますよう、心より念願しております。
大統領閣下及び令夫人のますますのご活躍、貴国ブルガリアの更なる発展と繁栄、そして新たな時代に入った二国間関係の更なる発展を祈念し、ここに杯を上げたいと思います。
ナ・ズドラーヴェ(乾杯)!