[文書名] 日独パートナーシップのための行動計画(改訂)
日本国外務大臣及びドイツ連邦共和国外務大臣は、1995年10月31日に行われた外相協議において、両国の間の良好な関係を、二国間及び他国間の様々な分野において更に強化し、深化させることにつき意見の一致をみたことを受け、1996年5月20日に共通の行動計画を策定し、5つの分野において両国政府が行う意図を有する協力の対象、方法及び目的を定めることを決定した。
両外務大臣は、1996年5月以降の日独間における協力協調関係の発展を踏まえ、1997年10月24日の東京における日独外相協議において本行動計画の改訂を行った。本文書の付表には、両国政府が現在、交流、意見交換若しくは協力を行っている分野が挙げられている。
両国政府は、このような方法によって、日独両国の良好な関係が一層の進展を見せることを希望する。両国政府は、これにより新たな国際秩序の形成、国際社会の平和と繁栄の達成に積極的に貢献しようとするものである。両国政府は、グローバルな問題に協調した取組を行うことができるように二国間関係を発展させることを希望する。両国政府は、引き続き、毎年開催される外相協議において協力の進捗状況を検討するとともに、行動計画の一層の拡大について検討する。
両国政府は、両国の関係者に対し、本行動計画の策定、進捗及び実現に積極的に参加していくことを呼びかける。
1.国際社会の平和と安定のための貢献
(1)国連{前2文字下線}
両国政府は、国連が21世紀の課題に応えられるよう機能強化すべく、全体として均衡の取れた形での国連改革を推進していくために引き続き協力する。特に、国連安全保障理事会の改革に関し、常任、非常任双方の議席の拡大を伴う形での改革の早期実現のため、各国とも緊密に協議しつつ両国政府間で協力を継続する。また、両国政府は、国連の平和維持活動について意見交換を行う。
(2)安全保障{前4文字下線}
両国政府は、アジア及び欧州の安全保障の動向は相互に関連性を有するとの認識の下、両地域の安全保障分野の動向、見通しにつき対話を促進し、相互理解を深める。
(3)軍備管理・軍縮及び大量破壊兵器の不拡散{前19文字下線}
両国政府は、非核兵器保有国として、核兵器を始めとする軍備管理・軍縮及び大量破壊兵器の不拡散の分野における一層の協力を強化する。
両国政府は、核兵器の不拡散に関する条約(NPT)、1995年のNPT再検討・延長会議における決定、及び1996年に採択されたCTBTを基礎として核軍縮の促進及び核不拡散のために努力する。
両国政府は、1997年4月29日に発効した化学兵器禁止条約の目的のために行動し、また、細菌(生物)兵器禁止条約に付属する検証議定書の作成に向けた交渉に協調して貢献していく。
両国政府は、全世界で60ケ国以上に存在する未処理の地雷の問題に関し、地雷除去を含め、国連等の国際機関を通じ緊密に協力する。
(4)原子力の平和利用{前8文字下線}
両国政府は、原子力の平和利用及び原子力安全の分野における協力を推進する。
(5)地域に係る協力{前7文字下線}
(イ)北朝鮮{前3文字下線}
両国政府は、北朝鮮の核兵器開発問題の解決に向け、新たにEUが加盟したKEDOの活動に対し一層積極的に取り組む。
両国政府は、朝鮮半島における平和増進のためには、四者会合の実現が重要であることを確認する。
(ロ)旧ユーゴー{前5文字下線}
両国政府は、旧ユーゴーにおける和平の強化及びボスニア・ヘルツェゴヴィナの経済復興のための国際社会の努力に積極的に参画していく。難民及び避難民に対する人道支援の重要性についても認識を共有する。両国政府は、ボスニア・ヘルツェゴヴィナに対する経済復興支援の供与の前提条件は、デイトン和平合意を完全に履行する意思にあるとの見解を共有する。
(ハ)ロシア{前3文字下線}
両国政府は、これまで行われてきたロシアに関する対話及びロシアの改革プロセスに対する支援を継続していく。
(ニ)NIS{前3文字下線}
両国政府は、対NIS諸国支援における日独協調を図る。
(ホ)中国{前2文字下線}
両国政府は、日独双方の対中認識及び対中政策についての相互理解及び協調を促進する。
(ヘ)中東・湾岸地域{前7文字下線}
両国政府は、中東地域における永続的かつ包括的な和平の達成のため、日独を含む先進国の一層の貢献が必要であるとの認識を共有する。
両国政府は、国際社会の平和と安定の維持のためには湾岸地域の安定が不可欠であるとの認識を共有する。
(ト)中南米{前3文字下線}
両国政府は、中南米の経済的発展に鑑み、同地域の現状及び将来の展望につき意見交換を促進する。
両国政府は、両国外務省間で開催されている中南米に関する協議を歓迎する。この地域に関する意見交換は両者にとって有益である。
2.国際経済システムの強化のための貢献
(1)世界経済の安定的成長のための協調{前16文字下線}
両国政府は、世界経済の安定的成長のため、G7諸国の間での政策協調を強化すべく努める。
両国政府は、経済のグローバル化の結果生じた様々な問題にともに対処していくことが重要であることを認識する。
(2)多角的自由貿易体制の強化のための協調{前18文字下線}
両国政府は、WTOを中心とした多角的自由貿易体制強化のための日独協力を推進する。
両国政府は、WTOの場における一層の自由化のために努力する。
(3)新たな国際経済ルール策定のための協調{前18文字下線}
両国政府は、OECDの場における新たな国際経済ルール策定のための日独協力を推進する。
3.国際社会の福祉向上のための貢献
(1)援助協調{前4文字下線}
両国政府は、開発途上国の経済発展を支援するため、リーディング・ドナーとして在外公館を含む日独間の協力を強化する。
両国援助当局は、日独間の援助政策協議を強化し、双方の経済協力のスキームについての相互理解を深めつつ、援助協調案件の発掘に努める。
(2)環境{前2文字下線}
両国政府は、本年8月に日独環境保護協力協定を締結したことを歓迎し、同協定の枠組みを活用しつつ、環境分野における日独協力を強化する。
両国政府は、OECD及びIEAの枠組みにおける環境技術の分野での協力を強化する。
(3)国際防災の10年(1990〜1999)への支援{前23文字下線}
両国政府は、国際防衛の10年を共同して支援する。
(4)人権問題{前4文字下線}
両国政府は、人権が普遍的な価値であることを認識し、人権の促進・擁護のために協力を促進する。
(5)社会問題{前4文字下線}
両国政府は、先進国共通の課題となっている雇用問題、高齢化問題、社会保障問題などに対応するため、情報交換及び意見交換を行う。これらの問題に関連して、両国政府は、社会的な価値観の問題についての意見交換が行われることを歓迎する。
4.アジアと欧州との間の関係強化のための貢献
(1)アジア欧州会合(ASEM){前13文字下線}
両国政府は、冷戦終結後、ダイナミックな変動を遂げるアジアと欧州の間の種々の分野、様々なレベルにおける関係強化が、安定した国際秩序の形成、国際社会の繁栄の確保において重要であると認識する。
かかる観点から、両国政府は、アジア欧州間の協力関係を総合的・重層的に強化していくフォーラムとしてASEMのプロセスを歓迎する。
両国政府は、1998年4月に予定される第2回ASEM首脳会合の成功に向け協力するとともに、ASEMのフォロー・アップにおいて協調していく。
(2)アジア欧州間の相互理解の促進{前14文字下線}
欧州では、政治面ではEUの深化と拡大、経済面では通貨統合が進められており、また、アジア太平洋地域においては、「開かれた地域協力」を目指すAPECが推進されている。このように、欧州及びアジアにおいては、冷戦後の新たな秩序を模索しダイナミックな進展がみられており、こうした欧州及びアジアの動きは、相互に密接な影響を及ぼすものである。かかる認識の下、両国政府は、両地域の相互理解増進のため積極的な役割を果たす。
5.日独二国間関係の再活性化及び一層の強化
(1)要人往来{前4文字下線}
両国政府は、日独双方の要人往来を一層推進していく。
両国政府は、両国議会の外務委員会を含む議員の相互の交流の強化を歓迎する。
(2)外交当局間の協力{前8文字下線}
両国政府は、外交面において各種事務レベルの協力を拡大していく。
両国政府は、第三国における日独在外公館間の意見交換及び日独外交官交流を強化する。
(3)日独対話フォーラム{前9文字下線}
両国政府は、両国各界の有識者が参加する日独対話フォーラムが両国の相互理解と関係強化に貢献してきたことを歓迎し、対話の一層の進展を期待する。
(4)経済関係{前4文字下線}
両国政府は、両国間の経済関係を更に強化する。
このため、両国政府は、貿易・経済・財政金融に関する日独政府部内の当局間の定期的な会合を実施し、これらの分野における日独両国政府間の相互理解と協力を進める。
ドイツ政府は、経済活動の振興に中心的な役割を果たすドイツ各州と日本国政府及び日本の民間部門との間の対話を奨励し、旧東独各州と日本との間の経済関係強化を支援する。両国政府は、旧東独地域への外国からの投資を促進するためのドイツ政府による諸措置を日本の潜在的な投資家がより一層活用することを歓迎する。
両国政府は、ドイツ経済界のジャパン・イニシアティブを歓迎し、特にドイツの中小企業が日本との関係強化を図ることを支援するとともに、日独経済主要団体の交流並びにアジア及び中東欧など第三国における日独企業間の協力関係の拡大を奨励する。
両国政府は、知的所有権の保護について協力する。
(5)科学技術分野の交流{前9文字下線}
両国政府は、人材交流の拡充に重点を置きながら、両国の科学技術協力の促進を図る。
両国政府は、両国首脳のイニシアティブによって創立されたハイテク及び環境技術に関する日独協力評議会の活動の拡大を歓迎する。
(6)文化・青少年交流及び司法分野における交流{前20文字下線}
両国政府は、両国間の友好関係の基礎となる文化・学術面での相互理解を促進する。
両国政府は、両国間の次世代の有効関係の担い手となる青少年交流の拡大のため、「日独青少年交流計画」の着実な実施を進めるとともに、一層の青少年交流政策につき検討する。
両国政府は、都道府県・州及び市町村のレベルでの交流拡大を歓迎する。
この関連で、両国政府は、姉妹都市交流の拡大を歓迎する。
両国政府は、司法分野における交流を慫慂する。
(付表)現在実施されている日独間の協力分野
1.政治
(1) 首脳協議
(2)外相会談及び外相定期協議
(3)外務次官協議
(4)両国外務省間の職員交流
(5)第3国における日独在外公館間協議
(6)日独友好議員連盟間の意見交換
2.経済
(1)通産省・経済省間の情報・意見交換
(2)通産省・経済省職員交流
(3)経済専門家会合
(4)金融当局間協議
(5)郵政定期協議
(6)航空当局間協議
(7)農林業に関する農水省・食糧農林省間の意見交換
(8)日独観光交流促進定期協議
3.科学技術
日独科学技術合同委員会
4.開発援助
日独援助政策協議
5.環境
(1)環境庁と環境省の意見交換
(2)日独環境保護協力合同委員会
6.社会保障
(1)社会保障協定に係る政府間協議
(2)日独社会保障技術交換計画
7.文化・教育・青少年交流
(1)日独混合文化委員会
(2)各種青少年交流計画
(3)様々な研修生の交換
8.司法分野における交流
(1)裁判官及び検察官の日独間の相互訪問
(2)日独法律家協会における交流
9.その他(民間主導)
(1)日独対話フォーラム
(2)ハイテク及び環境技術に関する日独協力評議会
(3)日米欧三極委員会
(4)日独対話グループ