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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日・EU双方向投資促進のための協力の枠組み(第13回日・EU定期首脳協議)

[場所] 東京
[年月日] 2004年6月22日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

 双方向の直接投資は、特に新技術や革新的経営ノウハウの導入により経済を活性化し、雇用機会を創出し、双方に大きな利益をもたらす。したがって、本日、日本とEUは、相互間での直接投資が日・EU経済関係にとって極めて重要であることを再確認した。

 民間部門は、特に日・EUビジネス・ダイアログ・ラウンド・テーブルを通じてこのような見方を支持し、日・EU間の投資の流れを一層拡大するための措置を要望している。これを受け、日本とEUは、双方向投資促進のために以下の項目に示された具体的措置を取る。これらの措置は、民間部門との連絡を緊密にしつつ、「日・EU協力のための行動計画」及び「日・EU投資イニシアティブ」において現在まで取組んできた努力を基礎として行われる。日本とEUは、またWTOにおいて投資の課題に適切に取組んでいくという両者の共通の決意を想起した。更に、日本とEUは、この機会に、多国籍企業がどこで活動するかにかかわらず「OECD多国籍企業行動指針」を遵守すべきであるとの日・EUの勧告を多国籍企業に共同で呼びかけた。

1.規制当局間の対話と協力{前13文字下線有り}

 日本とEUは、双方向の投資促進のためには、日本、EU及びEU加盟国における投資・ビジネス環境の整備が引き続き重要と認識した。この関係で、日本とEUは、日・EU間の貿易・投資活動に影響を及ぼし、一般的に適用される全ての公的措置が、合理的、客観的、公平かつ透明性のある方法で施行されるべきであるとの見解を共有した。

 投資に影響を与える双方の国内規制に関しては、従来より、規制改革対話が実施されている他、日・EU産業政策・産業協力ダイアログ、日・EU財務金融ハイレベル協議、日・EU経済協議等の日・EU間の特定のハイレベル協議の場を通じても、対話が実施されている。これらの場においては、双方向の投資促進を共通の目標の一つと位置づける。投資促進の関係で規制当局間の対話と協力の優先度が高い分野としては、環境、健康、衛生、金融、商法/会社法、知的財産権及び政府調達が含まれる。

 かかる観点より、日本とEUは、以下の一連の取組みを行うことを決定した。

(1)新たな規制に関する対話促進

 日本とEUは、特に投資活動に影響を与えうる新たな規制に関して非公式な意見交換を行うことにより、新たな規制についての対話により高い優先度をおく。

(2)規制の透明性の向上

 日本、EU、及びEU加盟国は、規制環境全般の改善及び規制手続きの透明性向上を目的とする規制改革対話を継続する。これは、規制の策定段階及び実施段階の双方を含み、具体的実例に則して行われる。その目的は、特に、明確で透明性のある規制上の決定と、出された意見に然るべき考慮が払われることを確保する協議過程への関与を求めるビジネス界の要望に答えることである。ノー・アクション・レター制度とパブリック・コメント手続の運用に取組むための2004年3月の日本の閣議決定及びEUの新たなより良い規制パッケージ(関係者の協議のための一般原則と最低標準を含む)は、規制の透明性向上を目的とする。日本とEUは、この目標を達成するため、透明性に関するそれぞれの措置を実施及び点検する。

(3)基準・認証制度における協力

 日本とEUは、国内の強制規格、任意規格、及び適合性評価手続きが投資や貿易の不必要な障害とならぬよう確保すべく以下の取組みを進める。

(i)強制規格及び任意規格の国際的調和及び相互間での受け入れ

 日本とEUは、強制規格、任意規格、及び適合性評価手続きの国際的調和(ハーモナイゼーション)に関する協力を進める。更に、日本とEUは、適切な場合には、強制規格及び任意規格における相互の同等性を促進する。これに関連して、日本とEUは、欧州委員会が国際会計基準と既存の日本の会計基準の間の同等性を確立する作業を開始したことに留意し、出来る限り早期に、そして遅くとも2007年より前に、会計基準の同等性を確立するための作業を完結するよう促した。

(ii)相互承認協定(MRA)の活用の奨励及び対象分野拡大の可能性

 日本とEUは、両者の産業界に対し、既存のMRAの枠組みをより活用するよう奨励するとともに(例えば、最近適用可能となった医薬品に係る優良製造所基準(GMP)に関する分野別付属書)、規制制度の同等性を基礎として新たな分野へMRAを拡大する必要性があるか否かについての評価を行う。

(iii)試験結果やデータの受け入れ

 環境や人の安全、健康を保護するために日本とEUそれぞれが必要な措置をとることが妨げられないことに留意しつつ、事業費用を削減し、市場への進出を容易にするため、日本とEUは、試験結果や関連データの受入れを適切な分野において可能な限り推進する。

(iv)専門職資格の相互承認

 日本とEUは、投資促進に与える影響や、民間部門から意見が表明される場合にはその意見を考慮しつつ、共通の関心分野において専門職資格の相互承認についての交渉に向けた枠組みを確立する可能性について検討を行う。

2.双方における投資環境の整備{前15文字下線有り}

 双方向の投資促進のためには、ヒト及びモノの国境を越えた移動の円滑化、投資に関連する税制の適切な整備や良い企業統治の推進等を通じた透明で安心な投資環境の整備、外国人事業者の生活環境の整備が有益な要素である。

 日本とEUは、企業の社会的責任(CSR)の推進は投資環境の改善に貢献し得ると考えるため、当局とビジネス界との間での良い実例についての意見交換を進める。

 日本とEUは、日本とEU加盟国との間の租税条約の適切な見直しを支持する。

 日本とEUは、日本とEU加盟国との間の社会保障協定の締結を支持する。

 日本は{前3文字下線有り}、特に以下の措置を通じて対日投資促進プログラムや規制改革・民間開放推進3カ年計画が掲げている諸課題に取り組んでいく。

(i)国境を越えたヒトの移動のための条件整備

・国内法及び手続きに則った適切な場合における投資家や経営者に関する入国手続の迅速化

(ii)モノの移動がスムーズに行われるための環境整備

・主要港湾の24時間フルオープン化の推進及び輸出入・港湾関連手続の簡素化に資する国際海上交通の簡易化に関する条約の早期締結

・輸出入・港湾関連手続のワンストップサービスの一層の推進

(iii)透明で安心な投資環境の整備

・商法改正を踏まえ、合併等(M&A)における対価を柔軟化、関連する税制措置の検討という2003年3月の対日投資会議決定に留意

・税制に関連する文書回答制度の円滑な運用、外国人の起業の円滑化

(iv)我が国で暮らす外国人の生活環境の整備

・在留外国人を診察する医師の相互開業の推進

 EUは{前3文字下線有り}、経済競争力強化のためのリスボン戦略の目標達成に向けて取組む。このような取組みを基礎に、EUは以下の努力を継続する。

(i)EU域内の複数加盟国間での損益通算を認める指令案の早期採択に向けた努力

(ii)通関24時間前の申告義務付けの新規則に関する業者にとっての現実的解決策の確保

(iii)共同体特許制度の可及的速やかな実施、標章の国際登録に関するマドリッド協定議定書への加盟及び個人情報保護指令に関連した「標準契約条項」についての日本側要望の検討

(iv)国境を越えた合併を可能とするEUレベルでの法的枠組みの創設

(v)EU加盟国における査証、労働許可及び滞在許可手続きの緩和のための努力を含む、日本国民のための行政手続きの更なる簡素化

3.投資促進のための交流事業の実施{前17文字下線有り}

 日本とEUは、民間部門の活動を容易にし、また促進するために、「日・EU投資イニシアティブ」の実施を踏まえ、以下の活動を実施する。

(1)広報事業の実施

 日本とEUは、双方向投資促進のためのシンポジウムやセミナーなどの各種事業実施を通じて広報活動を支援する。

(2)投資促進ミッションの派遣

 日本とEUは、投資促進ミッションの派遣(地方公共団体や民間部門により実施されるものを含む)を奨励し、可能な場合には、広報事業等との連携に努める。

(3)投資促進機関間の交流強化

 日本とEUは、双方の関係官庁や投資促進機関間の協力や情報交換を強化することにより、投資促進に係るノウハウや経験を共有する。この目的のため、日本とEUは、投資促進機関間のワークショップを開催する。

(4)投資促進専門家の交流強化

 日本とEUは、日欧産業協力センターの事業強化を通じて、特に投資促進専門家の交流を強化する。

4.評価{前4文字下線有り}

 日本とEUは、以上の諸措置の進捗状況を、「日・EU協力のための行動計画」の優先課題として、今後の日・EU定期首脳協議において評価する。これは、2003年5月の日・EU定期首脳協議においてEUが歓迎した対日投資残高を五年間で倍増させるという2003年1月の小泉総理の呼びかけを支持する形で、また、日・EUのビジネス界の意見を考慮しつつ行われる。