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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第18回日・EU定期首脳協議 共同プレス声明

[場所] プラハ
[年月日] 2009年5月4日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

はじめに

1.ヴァーツラフ・クラウス・チェコ共和国大統領、これを補佐するハビエル・ソラナ上級代表、及びジョゼ・マヌエル・バローゾ欧州委員会委員長と、麻生太郎日本国内閣総理大臣は、2009年5月4日、プラハにおいて第18回日・EU定期首脳協議を行った。

2.日・EU首脳は、長期にわたる協力、並びに民主主義、法の支配、人権、グッド・ガバナンス、持続可能な開発及び市場経済といった共有する基本的価値及び原則を基盤として、日・EU間の戦略的パートナーシップを一層促進することを決意した。

3.日・EU首脳は、双方の間における現在の実り多い対話と協力の基盤としての2001年の日・EU協力のための行動計画の重要性と、その継続的な履行に対するコミットメントを改めて表明した。日・EU首脳は、2010年の定期首脳協議において正式な議論を開始することを視野に、現行行動計画が2011年に終了した後に、これをいかに置き換えるかについての検討を開始する意図を示した。

グローバルな責任を担って

4.日・EU首脳は、グローバルな課題に対処する責任を十分に担いつつ、日・EUが、例えば世界経済の回復に向けた取組、気候変動への対処」、アフリカ開発を特に念頭においてのミレニアム開発目標(MDGs)の達成、国際の平和と安全の維持の支援にあたり、主導的役割を発揮し続ける意思を再確認した。日・EU首脳は、気候変動と開発の諸課題の間に緊密な相乗作用が存在しており、これら各分野における行動は相互に補強すべきものであることを強調した。日・EU首脳は、進行中の新型インフルエンザの発生に対する懸念を共有し、感染症の更なる拡大を防ぐためにあらゆる手段を講じるとの決意を表明すると共に、世界的な協力のための既存の枠組みを通じて国際社会による個々の取組を連携させていくこと、及び世界保健機関並びにその他の国際的機関と緊密に協力していくことの重要性を強調した。

5.日・EU首脳は、金融市場の安定及び世界経済の回復が引き続き日・EUの最優先事項であると改めて述べた。この観点から、日・EU首脳は、2009年4月2日のロンドンにおけるG20サミットで採択された決定、すなわち、長期的な財政の持続可能性と価格の安定を確保しつつ、成長と雇用を回復するために必要な金融、通貨、財政に関する対策の実施、金融システムの監督及び規制の強化、大幅なIMFの増資などを通じた国際金融機関の強化及び改革、あらゆる形式の保護主義との闘い及び世界的な貿易と投資の促進と円滑化、全ての人にとって公平かつ持続可能な回復の確保、を実施するために、日・EU間及び他の国際的パートナーとの間で緊密な協力を継続するとのコミットメントを再確認した。

6.日・EU首脳は、2009年12月のコペンハーゲンにおいて、グローバルな気候に関する野心的、実効的かつ包括的な合意が達成されるよう確保する決意を再確認した。日・EU首脳は、現下の経済危機がこの目標を達成するための努力を弱めてはならないこと及び経済回復措置が低炭素な経済成長を達成する機会をもたらすことを強調した。日・EU首脳は、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の下での現在の交渉プロセスが、そのような合意に向けて包括的に進められるべきであると強調した。日・EU首脳は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第4次評価レポートの重要性を認識しつつ、気候系への危険な人為的干渉を防ぐ水準で大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させるという究極の目的を達成するために、時宜を得た方法で地球全体の温室効果ガス排出量を大幅に削減する緊急性を共に強調した。

7.そのため、コペンハーゲンで到達すべき合意は、OECD加盟国を含む全ての先進国にとって拘束力のある約束を含まなければならず、また、OECD加盟国ではないが経済の発展段階がOECD加盟国に匹敵する諸国、及び先進国として扱われることを自発的に希望する諸国にとっても同様の約束を含むべきである。各先進国のそれぞれの排出削減約束は、過去の努力とセクター別分析を含む緩和ポテンシャルに関する分析などの要素に基づく努力の比較可能性を確保するような、公平な方法で設定されるべきである。

8.日・EU首脳は、低炭素社会への移行を促進するともに、既存技術の移転及び普及を加速化し、革新的技術及び慣行の開発を刺激するための適切な措置を採用することの重要性及び緊急性を再確認した。ピークアウトの期間と中期及び長期の排出削減目標に関し、日・EU首脳は、IPCCの第4次評価報告書の第3作業部会の貢献において引用された複数の幅を含む第17回日・EU首脳会談における議論を想起した。

9.日・EU首脳は、途上国に対し、測定可能、報告可能かつ検証可能な方式での緩和のための政策及び措置を含む、低炭素開発に向けた国別行動計画を策定または更新するよう促した。共通に有しているが差異ある責任及び各自の能力に従い、途上国、就中最も先進的な途上国は、現状維持時の排出量増加を下回る大幅な乖離を確保することを目指し、更に意味ある国別に適切な測定可能、報告可能かつ検証可能な方式での緩和措置を取ることが期待される。

10.日・EU首脳は、気候変動問題に取り組むには、国内的及び国際的に、より多くの公的及び民間の資金を動員する必要があるとの見解を共有し、また、日・EU双方が途上国に対する適切、予測可能かつ迅速な資金援助を増大させる努力を支持すること、及びコペンハーゲン合意の実施のために適切に貢献することを言及した。日・EU首脳は、あらゆる種類の資金を最も効率的に活用することを通じて、途上国に対する緩和及び適応のための支援を増大、合理化、かつ加速することの重要性を認識した。この点に関し、日・EU首脳は、資金フローをより効率的かつ効果的にするために、既存の多国間開発銀行を最大限関与させる必要性、官民の専門家による助言を伴ったセクター別技術協力の有効性、及び適応に関する最新の科学的知識を普及させる重要性を認識した。

11.日・EU首脳は、国際航空及び海上輸送部門が温室効果ガスの増大する排出源であることを認識した。日・EUは、両部門からの温室効果ガスを効果的に削減することを達成するために、UNFCCC、国際民間航空機関及び国際海事機関の間で緊密に作業する。

12.排出源からの温室効果ガス排出を削減すること及び吸収源による温室効果ガスの除去を高めることの重要性を認識しつつ、日・EU首脳はまた、途上国における森林減少及び森林劣化に由来する排出削減(REDD)の重要性を想起した。途上国は、森林減少及び森林劣化を削減する措置によって達成された排出削減に関し報いられることになる。日・EU首脳は、途上国が森林減少及び森林劣化に由来する排出を削減し、かつ世界規模の森林消失を阻止することを支援するための適切な資金メカニズムの必要性を認めつつ、REDDに関する早期の行動の必要性を認識し、また、2012年以降の枠組にREDDを含めることを支持した。この文脈において、日・EU首脳は、熱帯での森林減少に関し特別な懸念を表明した。

13.日・EU首脳は、技術の開発、普及及び移転、排出権取引、性能に基づく規制や消費者向け表示などの市場的手法の積極的な活用、排出を削減し、エネルギー効率を改善するための官民パートナーシップの強化、並びに気候変動の不可避な影響に対処するための適切な適応措置の重要性を再確認した。日・EU首脳は、そうした政策措置をそれぞれの状況に応じて促進し、異なる政策措置の有効性に関する経験を共有し、並びにこの点に関して協働することとした。日・EU首脳はまた、クリーン開発メカニズムの効率性・有効性、及び途上国の意味ある行動を確保することを通じて、同メカニズムの環境面での十全性が更に強化されるべきであると認識した。

14.日・EU首脳は、エネルギー分野における共通の関心事項について強調し、エネルギー安全保障、持続可能なエネルギー政策及びエネルギー技術において引き続き日・EUが協力することの重要性を強調した。日・EU首脳は、開放的で、透明性が高く、効率的かつ競争的なエネルギー市場を促進し、生産国と消費国の間の強化された対話及び協力等を通じてエネルギー安全保障を強化し、持続可能なエネルギーの選択肢を広げることが必要であることを強調した。日・EU首脳は、最近行われたエネルギー研究及び技術開発に関する日EU戦略ワークショップの成功を歓迎した。日・EU首脳は、G8、国際エネルギー機関、国際エネルギー・フォーラム及びエネルギー憲章条約の枠組みを含め、多国間の文脈で密接に協力することの重要性を強調した。世界における省エネルギーの潜在的可能性と省エネルギーがエネルギー安全保障と気候変動の緩和において果たす役割にかんがみ、日・EU首脳は、この問題における日・EU間及びグローバルな協力を向上させ、更に強化する必要性を強調した。また、日・EU首脳は、国際省エネルギー協力パートナーシップが可及的速やかに運用段階に入るよう取り組むことの必要性を再確認した。

15.日・EU首脳は、地球環境に関するその他の重要な諸課題に関して緊密に協力することの重要性を強調した。日・EU首脳は、現在の生物多様性の損失速度を2010年までに顕著に減少させること、また、国連生物多様性年や日本がホストする生物多様性条約第10回締約国会議の文脈で、2010年以降の生物多様性に関する野心的なビジョンと目標を策定することへの日・EUのコミットメントに再度言及した。日・EU首脳は、違法伐採とその関連取引と闘うとのコミットメントを強調し、また、生物多様性及び生態系サービスに関する政策と科学の連携強化のための現在の国際的努力に対する支持を強調した。日・EU首脳は、国連環境計画第25回管理理事会が、水銀に関し、地球規模で法的拘束力を持つ枠組のための政府間交渉立ち上げを決定したことを歓迎した。双方は、この枠組が交渉され完成するまでの間、自発的な枠組であるグローバル水銀パートナーシップの下、行動を加速する必要があるとの見解を表明した。日・EU首脳は、特に途上国に対する関連するリスクを考慮に入れつつ、有害廃棄物の国境を越える移動の規制に関するバーゼル条約と整合的な環境上適切な方法で、3Rイニシアティブを含む、資源と原料の最適なリサイクル及び回収並びに効率的な利用のためのイニシアティブを強化するとのコミットメントを強調した。

16.日・EU首脳は、国際社会の政府開発援助(ODA)につき議論し、特にアフリカにおけるMDGsの達成に向けたペースが遅いことに対する懸念を表明した。日・EU首脳は、G8が、就中、北海道洞爺湖、ハイリゲンダム、グレンイーグルス等におけるG8首脳会議において行ったコミットメントの誠実な履行の必要性と、責任分担の重要性を強調した。双方は、援助効果向上に関するアクラ行動計画を履行していく決意を表明した。日・EU首脳は、気候変動の有害な影響ともあわさった、昨年の急速な食糧及び原油価格の急騰に続き、世界的な金融・経済危機が開発途上国に深刻な影響を及ぼしていることを認識した。MDGsを含む国際的に決定された開発目標と、対国民総所得比0.7%をODAに供与するとの目標に向けた努力に留意しつつ、日・EU首脳は、国際社会に対し、世界的な金融危機にもかかわらず、特にアフリカ支援をはじめとするすべての既存のODAに対するコミットメントを維持し、実施するよう呼びかけた。双方は、開発分野におけるキープレイヤーとして、2009年の後半から開発政策に関する年次協議を開催することを決定し、援助及び開発効果のための相互協力を更に促進するため、アフリカ、MDGs、気候変動等の地球規模の課題、並びにそれぞれの援助政策及びアプローチに焦点を当てることを決定した。日・EU首脳は、政治的決定が迅速に履行されるように、それぞれの実施機関間の協力が強化されることを歓迎した。

17.日・EU首脳は、世界経済を刺激する一手段として、WTOドーハ開発アジェンダの成功裡の妥結が急を要していることを強調した。この点に関し、双方は、モダリティに関するものを含め、これまでに達成された進展に基づき、全ての交渉分野において、野心的かつバランスのとれた、包括的な成果を伴う妥結に向けて前進することが重要であると認識した。日・EU首脳は、ワシントン・サミットにおいて誓約され、ロンドン・サミットにおいて延長された、2010年末まで貿易と投資に対する新たな障壁を設けず、新たな輸出制限を課さず、WTOと整合的でない輸出刺激策をとらないとのコミットメントを再確認した。また、日・EU首脳は、そのようないかなる措置も速やかに是正するとのコミットメントを再確認し、とられる場所の如何を問わず、協力してそれらの措置に対処するとのコミットメントを強調した。双方は、これらのコミットメントを遂行するために引き続き協力していく。

18.日・EU首脳は、国連が世界的な課題に効果的に取り組むための能力を強化するために、2005年の国連首脳会合において採択され、その成果文書で言及されている、主要な国連機関を含む国連システムの改革を、完全に実施することの重要性を強調した。日・EU首脳はまた、人権理事会及び平和構築委員会の作業を含め、多国間で一層協力していくことの重要性を強調した。日・EU首脳は、次の国連分担率について具体的な結果を達成する必要性を強調した。

平和と安全の促進

19.日・EU首脳は、多くの共通の関心事項について意見交換した。日・EU首脳は、現在行っている協力を、より行動指向のものとし、国際的な平和と安定を促進するとの意図を共有した。日・EU首脳は、依然として存在している安全保障上の懸念などに照らし、東アジア及び中央アジアに関する共通の認識を醸成するために、日・EU間の戦略的対話が有益であることを強調した。日本は、武器禁輸の問題は、地域の安全保障環境に照らし慎重な検討が必要との見解を強調した。

20.北朝鮮が4月5日の発射によって関連する国連安全保障理事会決議に違反したことを非難しつつ、日・EU首脳は、就中、特に六者会合において達成された合意を基にした朝鮮半島の完全かつ検証可能な非核化、国連安全保障理事会決議第1718号の履行を通じた弾道ミサイルによる脅威の除去、人権状況の改善、及び拉致問題の解決を含む人権上の懸念への対処といった、北朝鮮に関する問題への対処における協力を継続することを決定した。

21.日・EU首脳は、国際社会が、アフガニスタンに対する全体の取組、特にアフガニスタンの選挙プロセス及び国民のために平和と安定を達成するための政府の努力に対する支援を最大化することの重要性を強調した。日本は、EU警察ミッション(EUPOLアフガニスタン)の活動に対する評価を表明し、EUは、日本が非合法武装集団解体(DIAG)を通じて行っている努力に対する評価を表明した。双方は、地方開発、警察及び司法改革の分野におけるアフガニスタン支援についての緊密な協力を継続する。日・EU首脳は、3月31日にハーグで開催されたアフガニスタンに関する国際会議の成功裏の成果を歓迎した。

22.日・EU首脳は、パキスタン及びアフガニスタンが直面している課題は、孤立させた形で解決することはできないこと、及びより広範な地域において関係が強化されなければならないことを強調した。日・EU首脳は、パキスタン政府が複雑な安全保障上及び経済上の課題に直面する中、パキスタンにおける民主主義、グッド・ガバナンス及び法の支配に向けた継続的な支持を強調した。日・EU首脳は、4月17日に東京で開催されたパキスタン支援国会合の成功裏の成果を歓迎した。

23.日・EU首脳は、中央アジアにおける安定と繁栄を促進することの重要性を再確認するとともに、最近行われたタジキスタンの国境管理能力を強化するための協力を評価した。双方はまた、地域の諸国との政治対話や、これら諸国の改革・民主化支援の有用性を再確認するとともに、日・EUが積極的に関与しているその他の分野においても中央アジアで一層協力していく可能性を模索していくことを決定した。双方は、中央アジアの安定と繁栄が近隣諸国を含む地域全体の安定にとって死活的に重要であるとの共通の見解を共有し、この観点から中央アジアにおけるすべての関係者による相互協力の重要性を指摘した。

24.双方は、海賊問題の根底にある原因を解決する必要性があることを認識し、またこの目的のためソマリアにおける開発活動を支援し、ソマリア及び周辺地域における関連の海賊対策能力向上を支援することを強調しつつ、必要に応じアデン湾を航行する船舶の安全な航行の確保に寄与するため、EUは、NAVFORアタランタ作戦の展開を通じ、日本は海上自衛隊の護衛艦の派遣を通じ、適切な措置をとる。

25.双方は、アフリカの平和維持能力を向上するため、アフリカ連合によるアフリカ平和安全保障アーキテクチャー(APSA)の強化に対するコミットメントを再確認した。双方は、ダルフール、チャド・中央アフリカ共和国及びコンゴ民主共和国におけるような人道危機に対処することの重要性を強調した。

26.日・EUはイランの核問題に関する深刻な懸念を共有し、イランに対し、国連安保理決議第1696号、第1737号、第1747号、第1803号及び第1835号を完全に遵守するよう要請する。双方は、国際原子力機関及び国連安全保障理事会における問題解決のために継続中の努力に対するコミットメントを新たにし、この問題の平和的・外交的解決に向けて取り組む決意を確認した。双方は、イランに対し、E3/EU+3(フランス、ドイツ、英国、EU共通外交・安全保障政策上級代表、中国、ロシア及び米国)とより建設的な態度で協力するよう呼びかけた。

27.日・EU首脳は、中東和平プロセスが、引き続き日・EUにとっての優先事項の一つであるとの認識を共有した。公正、持続的かつ包括的な平和が緊急に必要とされている。日・EU首脳は、平和・安全のうちに存続する二つの国家を基礎としてイスラエル・パレスチナ間の紛争解決を促進するため、カルテットを始めとする国際社会のパートナーと協力し、平和プロセスを前進させるために可能なすべてのことを行う。双方は、この観点からアラブ平和イニシアティブの重要性を改めて想起した。双方は、パレスチナ人に対し国際社会が人道的な支援を与えることの重要性と、西岸及びガザから構成され、自立可能な、独立し、民主的で主権を有し、安全かつ承認された国境のうちにイスラエルと並んで平和かつ安全に生存するパレスチナ国家の機関を構築することの重要性に留意した。この関連で双方は、国際ドナー・コミュニティーに開かれたEUのPEGASEメカニズムの価値を強調した。双方はまた、自立可能なパレスチナ経済の創出への寄与としての日本の「平和と繁栄の回廊」構想の重要性に留意した。

28.日・EU首脳は、ミャンマー政府が、遅滞なく国内の厳しい政治的・構造的・経済的問題に取り組み、正統かつ民主的な民政政府への平和的移行を助長することへの期待を表明した。日・EU首脳は、2010年に予定される選挙が、ミャンマーのすべての関係者の間の包括的な対話を基礎としたものであれば国際社会に歓迎され得るであろうことを指摘した。この関連で、日・EU首脳はミャンマーに対し、直ちにアウン・サン・スー・チー女史を含む政治犯及び政治的収監者を釈放し、政党に対するすべての制約を解除するようするよう呼びかけた。日・EU首脳は、実質的な政治的前進、及びミャンマーによる人権尊重に向けた歩みに対しては、前向きに反応する用意があることを表明した。日・EU首脳は、国連事務総長による周旋ミッション及び国連ミャンマー人権状況特別報告者に対する完全な支持を再確認し、ミャンマー政府に対し、両者と完全に協力するよう呼びかけた。日・EU首脳は、ミャンマーの政府及び国民が、民主的かつ自由な中にあって、安定と繁栄を達成するよう支援する決意を想起した。

29.日・EU首脳は、引き続きスリランカ北部の紛争地域に多くの市民が捕らわれていること、特に市民の被害及び死亡についての多数の報道が継続していることに対し深甚なる懸念を表明した。日・EU首脳は、タミル・イーラム解放の虎(LTTE)が、市民の脱出を妨げようとしていることを非難し、LTTEがすべての市民を解放するよう求めるとともに、スリランカ政府とLTTEに対し、国際人道法を完全に遵守し、戦闘を終了するよう呼びかけた。日・EU首脳は、国連職員が援助オペレーションと市民の避難を実施するために国連職員に対し紛争地域への立ち入りを求めるよう、また最近到着した避難民が登録と保護を受けているすべての場所へのアクセスを国連と赤十字国際委員会に認めるようにとの国連事務総長の呼びかけを完全に支持した。日・EU首脳は、スリランカのすべての当事者に対し、すべてのコミュニティーの正当な懸念に対処する包括的な政治的プロセスに関与するよう呼びかけた。

30.日本は、EUによるアジア太平洋地域の政治的枠組みに対する建設的な貢献を歓迎した。EUは、東アジアによる、普遍的に認められた価値と世界的なルールを基礎としての、開かれ、かつ透明性のある地域的協力を強化するための努力を歓迎し、日本がこの観点で果たしている建設的かつ積極的な役割に対する評価を表明した。東アジア・サミット(EAS)が、ASEANを推進力とし、他の参加者と緊密に連携しているフォーラムであることを認識しつつ、日本は、が{前1文字ママ}EASに対するより強い関与に継続的な関心を有していることを歓迎し、EU/ECの加入が認められるよう、東南アジア友好協力条約を修正するためにASEANのパートナーと緊密に協力する。

31.日・EU首脳は、国連及びその他の国際的な場において人間の安全保障の概念普及を行い、人間の安全保障についての対話を進めることによって、この分野で協力していく意図を再確認した。日・EU首脳はまた、2005年世界サミット成果文書に述べられているように、市民を大量殺戮、戦争犯罪、民族浄化、人道に対する犯罪及びその影響から保護する責任についての検討を、国連憲章及び国際法の原則に準拠しつつ、国連総会が続ける必要があることを強調した。

32.EUの近隣の安定に向けたEUの政策並びに計画との関連で、日・EUは、EUの東方パートナーシップの枠組みの中で更に協力していく可能性がある分野について議論していくことへの期待を示した。

日・EU間の経済及び分野別協力

33.日・EU首脳は、日・EU間の協力における最近の進捗を歓迎し、EU、日本及び世界のそれ以外の地域における更なる繁栄及び高い生活水準を確保するため、このような流れで作業を継続するとの決意を新たにした。

34.日・EU首脳は、日・EU経済・通商関係が、日・EU及び世界の繁栄にとって極めて重要であることを再確認した。双方は、特に現在の世界経済の状況にかんがみ、開放的な経済を維持するための国際的努力を率先する責任を果たすことの必要性を強調した。双方は、日・EU経済関係の最大限の潜在的可能性をより良く活用するために両経済の統合の強化に協力する意図を表明した。この目的に向けて、貿易制限的な障壁に対処し、市場アクセスの機会を増大し、日EU間の直接投資を促進するための可能な限り最善の環境を創出するために、日・EU首脳は、日・EUハイレベル協議、日EU規制改革対話、ハイレベル貿易協議、産業政策・産業協力ダイアログ及び他の日EU間の対話といった既存のメカニズムをより有効に活用し、具体的な成果が、短期間にかつ相互に有益なやり方で、出ることが期待される、いくつかの特定の非関税案件に焦点を当てることの重要性を強調した。両首脳は、遅くとも2010年の首脳協議までに進捗をレビューする。

35.日・EU首脳は、2007年の定期首脳協議で発出された繁栄に向けた研究およびイノベーションの促進に関する別添文書の実施に向けた進捗を歓迎した。日・EU首脳は、特に、科学技術における協力に関する日本国政府と欧州共同体との間の協定の仮署名が2009年2月19日に行われたことを歓迎し、可能な限り早期の署名と発効に向けて緊密に協力していく意向を再確認した。

36.日・EU首脳は、日・EU間の刑事に関する協力を強化するとの固い意図を表明し、刑事共助に関する協定の締結に向けた交渉の開始を歓迎した。日・EU首脳は、建設的な交渉が相互に満足のいく協定の早期締結につながり、日・EU関係に大きな付加価値をもたらすであろうとの希望を表明した。

37.日・EU首脳は、税関協力の分野における前進、特に、2008年に日・EC税関相互支援協定が発効した後に、認定経済事業者(AEO)プログラムの相互承認などを通じたサプライ・チェーンの安全確保や知的財産権に関する国境措置に関する前進があったことを歓迎した。日本は、ECの世界税関機構(WCO)への時宜を得た加盟を支持することを再確認した。

38.日・EU首脳は、2008年の定期首脳協議以来の日・EUの航空関係における進捗を歓迎した。日・EU首脳は、EU指定の原則が、日本とEU加盟国間のすべての二国間の航空協定の実施にあたり反映されることについて、またこの作業を可能な限り早期に完成する必要性についての共有された理解を歓迎した。日・EU首脳は、民間航空のすべての分野、特に航空の安全・保安・航空交通管理における協力を拡大し、深化する意図を表明した。

39.日・EU首脳は、2007年の知的財産権の保護及び執行に関する日・EU行動計画の実施において更なる前進があったことを積極的に留意し、日EU間及び多国間両方のレベルにおいて知的財産権に関する緊密な協力を追求する決意を新たにした。日・EU首脳は、模倣品・海賊版拡散防止条約の交渉に対し引き続き深くコミットし、野心的な条約の早期交渉妥結に向けてあらゆる努力をする意図を表明した。

40.日・EU首脳は、共同の学術協力及び学生モビリティー・プロジェクトの支援により、高等教育における協力を継続し強化することの重要性を改めて表明した。日・EU首脳はまた、高等教育政策アドホック・セミナーを可能な限り早期、もし可能であれば2009年末までに開催するとの意図を再確認した。

41.日・EU首脳は、査証免除の問題についての最近の対話を歓迎し、すべてのEU加盟国の市民に対する可能な限り早期の完全な査証免除の達成を念頭に、更なる進捗を慫慂した。この関連でEUは、完全な相互査証免除を含む、その市民に対する平等な扱いを確保することの重要性を強調した。

42.双方は、金融サービス分野において進行中の協力に対するコミットメントを確認した。双方は、金融システムに対する信頼を回復するために監視及び規制を強化する必要性を再確認した。EUは、2008年10月に開始され継続中の、日本による、国際会計基準の採用に向けた政策に関する検討を歓迎した。日本は、EUと日本でそれぞれ採用されている会計基準の間の同等性を承認したECの決定を歓迎し、EU以外の小規模格付会社のための特別な証明制度を、格付会社に関する今後のEUの規制に盛り込むことへの支持を表明した。双方は、それぞれの会計監査システムの相互依拠に向けた努力を続ける意図を再確認した。

43.日・EU首脳は、高いレベルの消費者保護を確保することの重要性を認識し、消費者の安全・安心に関する日・EU協力に係る2008年日・EU定期首脳協議共同プレス声明別添文書を引き続き実施する意思を再確認した。

44.日・EU首脳は、日・EUビジネス・ラウンド・テーブル(BRT)の取り組みの価値を認識し、双方のビジネス界の間の議論への関心を継続することとした。双方は、日EU経済協力の強化に関する議論を継続するとのBRTの意図に留意した。